脳卒中後の機能回復に対する吸気筋訓練

吸気筋訓練には、横隔膜筋および外肋間筋などの特定の筋肉の訓練が含まれる。これらの筋肉が収縮すると胸腔の容積が増加し、肺に空気が送り込まれる。ルーチンの吸気筋訓練は、参加者の持久力または吸気中の最大吸気圧によって設定される吸入抵抗を参加者に与える訓練装置を用いて実施される。吸気筋訓練は吸気筋の筋力および持久力を改善することを目的としており、脳卒中後の機能回復に有効である可能性が示されている。 吸気筋訓練の有効性を検討している、2件の小規模な異質性のあるランダム化試験を認めた。脳卒中患者に対する吸気筋訓練の効果について結論を出せるエビデンスは、これらの研究から得られなかった。吸気筋訓練の安全性に関連したエビデンスもなかった。さらなる適切なデザインの研究が必要である。

著者の結論: 

脳卒中後の機能を改善する有効な治療として吸気筋訓練を支持するエビデンスは不十分であり、吸気筋訓練の安全性に関連したエビデンスはなかった。さらなる適切なデザインのRCTが必要である。

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背景: 

脳卒中患者では、吸気筋力低下が認められている。吸気筋訓練は、脳卒中患者の機能回復に有効である可能性が示されている介入の一つである。

目的: 

脳卒中後の日常生活活動、呼吸筋機能、生活の質および心呼吸体力を改善することを目的とした吸気筋訓練の効果および安全性を検討すること。

検索戦略: 

Cochrane Stroke Group's Trials Register(2011年8月)、Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)(コクラン・ライブラリ2011年10月第4号)、MEDLINE(1948~2011年10月)、EMBASE(1974~2011年10月)、CINAHL(1982~2011年10月)、AMED(1985~2011年10月)、PEDro(2011年10月)および4件の中国のデータベースを検索した。さらに既発表、未発表および進行中の試験を同定するため進行中の試験登録および学会議事録を検索し、参考文献リストをチェックし、関連性のある研究の著者と訓練装置の製造会社に連絡を取った。言語の制限は設けなかった。

選択基準: 

脳卒中患者を対象に吸気筋訓練を無介入、偽吸気筋訓練または他の心呼吸器訓練と比較しているランダム化比較試験(RCT)を適格とした。

データ収集と分析: 

2名のレビューアが別々に試験の質を評価しデータを抽出した。主要アウトカムは日常生活活動および呼吸筋筋力であった。副次アウトカムは生活の質、心呼吸体力および有害事象であった。

主な結果: 

本レビューに計66名の患者を対象とした2件の試験を選択した。試験間にかなりの異質性があり両試験においてデータの欠如があるため、データの統合解析は不可能であった。1件の研究では偽吸気筋訓練よりも吸気筋訓練を支持する、呼吸筋筋力の有意な増加を認めたが、生活の質については群間に有意差はなかった。もう1件の研究では、吸気筋訓練を受けた患者の方が無介入の患者に比べて日常生活活動、生活の質および心呼吸体力が改善する可能性が高かった。しかし、主要な結果は呼吸再訓練の直接比較を実施していなかった。さらに、いずれの試験も吸気筋訓練の安全性および忍容性を評価していなかった。

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