経腟分娩後の出血量を減らすためのオキシトシンの筋肉内投与と静脈内投与の比較

論点

静脈への注射(静脈内投与)と比較して、筋肉への注射(筋肉内投与)によるオキシトシン投与の分娩第3期の過剰出血の予防効果、リスクおよび副作用について調べた。分娩第3期とは、赤ちゃんの誕生に続いて、胎盤が子宮の壁からはがれ、娩出するまでの期間である。

赤ちゃんがうまれる間やうまれた直後にオキシトシンを使用することで、経腟分娩後の過剰な出血量を減らすのに有効であることが、先行研究で示されている。筋肉内投与や静脈内投与によってオキシトシンを使用することによって、オキシトシンの有効性や母親と赤ちゃんの健康に何らかの違いをもたらすかどうかを示す信頼性の高い研究はない。

重要である理由

胎盤が子宮からどれだけ速くはがれるか、そして、胎盤がはがれた部分の子宮の血管を閉じるためにどれだけ十分に収縮するかによって、分娩第3期の出血量は異なる。

出産に関連する母親の死亡のほとんどは出産後最初の24時間に起こり、主にこの分娩第3期のプロセスの合併症によって引き起こされ、過剰な出血(「分娩後出血」とも呼ばれる)をもたらす。妊娠中の女性が貧血(血液中の赤血球が少ない)になる可能性が高い低所得国では特に、過剰な出血は母体死亡の主要な原因の一つである。

静脈内に投与されたオキシトシンは、少量の薬剤(原液のまま)を急速に使用した場合は特に、血圧の急激な低下や心拍数の増加などの重篤な副作用を引き起こすことがある。筋肉にオキシトシンを投与するのに必要な方法は、オキシトシンを静脈内に注射するのに必要な時間よりもはるかに短い時間で済む。また、医療従事者にとってより便利で、比較的多くの技術を必要としないため、高度な技術を持たない医療従事者でも行うことができる。

どのようなエビデンスが得られたか?

2017年9月7日までのエビデンスを検索し、赤ちゃんのうまれる間またはうまれた直後にオキシトシンの静脈内投与と筋肉内投与を比較した3つの試験(1306人の女性を含む)を同定した。試験はトルコ(2試験)とタイ(1試験)の病院で行われ、正期産期(早産または過期産ではない)で、赤ちゃんを1人のみ妊娠している女性が参加対象だった。それぞれの試験で、研究参加者をどのように各グループに分けたのかが明らかでなく、3つの試験すべてにおいて、研究参加者とスタッフは、誰がどの治療を受けたかを分かっていたと推測する。これは結果に影響を与えた可能性があり、エビデンスに確実性を持てない。

包含した研究は、いくつかの重要な結果を報告していなかった。出生後の重度の出血(1リットル以上)を報告した唯一の研究は、オキシトシンの筋肉内投与と静脈内投与に、ほとんど、または全くがないと考えられると報告していた。ある1つの研究では、筋肉内か静脈内のどちらの方法でもオキシトシンを使用した場合、子宮摘出の手術を必要とした女性はおらず、もう1件の研究では、合計2人が輸血を必要とし、1人は筋肉内でのオキシトシン投与後で、もう1人は静脈内のオキシトシン投与後であった。本レビューにおいて、エビデンスの質は低度または非常に低度のため、結果に対する確実性はほとんどない。これらの試験は、母親の死、低血圧、筋肉内または静脈内オキシトシンに対する母親の不満足、黄疸(皮膚が黄色く変化する)を伴う赤ちゃんの数など、他の重要な結果を報告していなかった。500mL以上の出血、出血を減らすための追加の薬剤の使用、胎盤が自然に娩出されず医師によって除去されなければならない場合に、オキシトシンの筋肉内投与と静脈内投与の間に明確な違いはほとんど、または全くなかった。

意味するもの

本レビューに含めた3つの試験からの知見は、オキシトシンを投与するのにどの方法が母親または赤ちゃんにとってより良いのかを明確に示しておらず、この疑問に答えるためには、より多くの研究が必要である。

本レビューに含めた試験の数は少なく、重要なアウトカムはあまり頻繁に起こらなかったため、分娩の第3期の女性にとって、オキシトシンの筋肉内投与または静脈内投与のどちらがより効果的で安全であるかどうかを決定するエビデンスは不十分だった。

訳注: 

《実施組織》増澤祐子 内藤未帆 翻訳、[2019.07.11] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。  《CD009332》

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