筋層非浸潤性膀胱がんに対するゲムシタビンの膀胱内注入

レビューの論点

腫瘍が膀胱の表層に限局する膀胱がん、すなわち筋層非浸潤性膀胱がん(NMIBC)に対する腫瘍切除後の膀胱内注入療法に使用する薬剤としてゲムシタビンは他の薬剤よりも有効か。

背景

NMIBCは小さな器具と光源を使って膀胱から取り除くことが可能である(経尿道的切除術という)。しかしこの腫瘍は、膀胱のより深い層まで広がっているなど悪性度の高い(進行した)状態で再発することが多い。この再発・進展を防ぐために種々の薬剤を膀胱内に注入することができる。本レビューでは、化学療法薬であるゲムシタビンが他の薬剤よりも優れているか否かを調査した。

研究の特性

本エビデンスは2020年9月11日現在のものである。ゲムシタビンを投与するか、他の薬剤を投与するかを無作為に決定した試験のみを採用した。計1,222人を対象とした、7件の試験が確認された。うち2件がゲムシタビンと生理食塩液を比較しており、1件がゲムシタビンとマイトマイシン(化学療法薬)を比較していた。また、3件がゲムシタビンと BCG(Bacillus Calmette‐Guérin:がんの増殖を抑えるために使用される薬剤)を比較しており、1件がゲムシタビンとBCG 1/3量投与を比較していた。

主な結果

生理食塩液と比較した場合、ゲムシタビンは経時的な術後の再発リスクを下げるかもしれないが、がんの進展(がんが悪化すること)については同程度であり、重度の望ましくない副作用がみられる。マイトマイシンと比較した場合、ゲムシタビンは再発と進展を抑制するかもしれないが、 重度の望ましくない副作用についての効果は明確ではない。BCG 1コース治療後に再発した高リスクNMIBCの患者を対象とした場合、ゲムシタビンを投与した方がBCGの再投与よりも再発・進展とも少ないようである。BCGの再投与と比較した場合、重度の望ましくない副作用についての効果は明確ではない。本レビューには、ゲムシタビンとBCGおよびゲムシタビンとBCG 1/3量投与を比較したときの情報も報告している。

エビデンスの信頼性

本レビューで比較した治療法のほとんどが、エビデンスの信頼性が低いかあるいは非常に低いものであった。つまり、得られた結果の真実性については不確かであることが多かった。今後の研究により結果が変わる可能性が高い。

訳注: 

《実施組織》一般社団法人 日本癌医療翻訳アソシエイツ(JAMT:ジャムティ)『海外がん医療情報リファレンス』(https://www.cancerit.jp/)武内 優子 翻訳、榎本 裕(三井記念病院泌尿器科)監訳 [2021.08.03] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクラン・ジャパンまでご連絡ください。 なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review、Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。《CD009294.pub3》

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