軽度認知障害の人の治療にフペルジンAの使用を支持する、または支持しないランダム化比較試験からのエビデンスはありません。

軽度認知障害(MCI)とは、他の人に気付かれる程記憶、言語や他の精神機能に問題があり、検査で異常が認められますが、日常生活に支障があるほど重症ではない状態です。研究の結果、MCIの人で特に主として記憶に問題がある場合、その後数年間でアルツハイマー病を発症するリスクが高いと示されています。現在利用可能なADに対する薬物療法は、酵素のアセチルコリンエステラーゼを阻害し、脳でのアセチルコリンを増やして作用すると考えられています。しかし、これらの薬がMCIに有効かどうかは示されておらず、多くの副作用がみられます。フペルジンAは漢方薬の1つで、中国の薬草トウゲシバ(Huperzia serrata)から分離したアルカロイドです。これは、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬の1つで他の特性(たとえばグルタミン酸誘発性障害からの脳保護、神経成長因子レベルの上昇など)も持っているという所見が得られており、そのためMCIで何らかの有益な効果があると考えられます。フペルジンAは中国でMCIの治療に使われていますが、プラセボと比較したフペルジンAのランダム化比較試験(RCT)は見つからなかったため、その有効性および安全性をこのレビューで解析できませんでした。MCIの人でのフペルジンAを検討するランダム化プラセボ対照比較試験が必要です。

著者の結論: 

現在入手可能なエビデンスでは不十分であり、MCI治療でのフペルジンAの可能性を評価できなかった。ランダム化二重盲検プラセボ対照比較試験が必要である。

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背景: 

軽度認知障害(MCI)は、加齢による認知面の変化と完成した認知症症状発現との中間の症状を示す病態として提唱されている。MCIの段階での治療により認知障害の悪化が遅延し、認知症への進行を遅らせる可能性がある。現在までのところ、アルツハイマー病治療の中心は脳内アセチルコリンレベルを増加させることであった。しかし、これらの薬剤はMCIに有効であると証明されてはおらず、多くの副作用がみられる。フペルジンAはMCIに有益な効果を有する可能性がある。

目的: 

MCI患者の治療に対するフペルジンAの臨床的有効性および安全性を評価すること。

検索戦略: 

2011年5月23日にフペルジン、アヤピン、スコパロンの用語を用いてALOIS:Cochrane Dementia and Cognitive Improvement Group's Specialized Registerを検索した。ALOISには、多数の主要な医療データベース、多数の試験登録、および灰色文献の月次検索から同定した臨床試験の記録を含んでいる。また、これと別個に追加検索をMEDLINE、EMBASE、PsycINFO、LILACS、clinicalTrials.gov、ICTRP(WHO portal)、CENTRAL(コクラン・ライブラリ)およびWeb of Science with Conference Proceedingsで行った。<br /><br />以下の中国のデータベースも検索した:Chinese Biomedical Database、VIP Chinese Science and Technique Journals Database、China National Knowledge Infrastructure、Chinese Clinical Trials Register。さらに、1970~1989年の中医学雑誌20種類をハンドサーチした。

選択基準: 

MCI患者を対象にフペルジンAをプラセボと比較しているランダム化、並行群間、プラセボ対照比較試験を適格とした。

データ収集と分析: 

2名のレビューアが別々に研究の適格性を評価した。

主な結果: 

適格となる試験が同定されなかった。この分野で適切なランダム化プラセボ対照比較試験がないため、メタアナリシスが実施できなかった。

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