鎌状赤血球病患者における下腿潰瘍の治療

下腿潰瘍は、鎌状赤血球病患者にとって慢性の合併症である。潰瘍は、上手く治療することが難しい傾向があり、数カ月から数年かけてゆっくりと治癒が進む。潰瘍によって、生活の質に支障をきたし、不自由さが増し、仕事を休まなければならない期間が長くなり、医療システムでの治療の負担が大きくなる。そこで鎌状赤血球病患者における下腿潰瘍の治療が有効かつ安全であるかどうか検証した。

今回のコクラン・レビューでは、250カ所の潰瘍を有する198名の参加者を対象としたランダム化比較試験を6件特定した。4件のランダム化比較試験はジャマイカ、2件は米国で行われた。これらの試験では、潰瘍に直接用いる薬剤や包帯(局所性薬剤)および経口または静脈投与される薬剤(全身性薬剤)を検証した。これらの2種類では作用機序が大きく異なることから、レビューではそれらを別々に取り扱った。局所性薬剤は、Solcoseryl®クリーム、RGDペプチド包帯、局所抗生剤であった。Solcoserylは、皮膚組織による酸素の取り込みを改善することによって、傷の治りを促すことを目的としている。局所抗生剤はまた、感染を予防するために使用される。RDGペプチド・マトリックスは、細胞増殖を促すゲルである。全身性薬剤は、L-カルニチン、酪酸アルギニン、イソクスプリンであった。酪酸アルギニンは静脈内投与すると、傷の治りを促すと考えられており、L-カルニチンは経口投与すると、組織の低酸素状態を改善すると考えられており、イソクスプリンは塩酸イソクスプリンとして経口投与すると、傷への血流を増加させると考えられている。

局所的介入(RDGペプチド・マトリックス)の1つの治療法によって、治療した参加者では対照と比較して潰瘍の大きさが減少した。しかし、この試験報告に伴う不十分さによるバイアスのリスクが高いため、この効果については注意深く解釈する必要がある。

鎌状赤血球病および慢性下腿潰瘍の患者を治療するための介入の使用に関するエビデンスは強固なものではなかった。このレビューで選択したすべてのランダム化臨床試験では、バイアスのリスクが高かった。このシステマティック・レビューから、鎌状赤血球病患者の下腿潰瘍の治癒を改善するための介入の有益性や有害性を評価するには、十分にデザインされた質の高いランダム化試験が必要であることが示された。

著者の結論: 

局所介入(RGDペプチド・マトリックス)によって、治療した参加者では対照群と比較して潰瘍の大きさが減少したというエビデンスがある。 有効性に関するこのエビデンスは、これらの報告に伴うバイアスのリスクが全般的に高いため、限定的である。

薬物的介入(全身性および局所性)および非薬物的介入(外科的および非外科的)という一般的な分類に基づいた結果を分析しようと試みた。しかし、アウトカムの定義における異質性およびランダム化の群と分析の群との間における不一致のため、結果を統合することができなかった。特定した試験の不足と共に、この異質性によって、メタアナリシスを行うことができなかった。

今回のコクラン・レビューでは、1つの局所的介入(RGDペプチド・マトリックス)の有効性についてある程度のエビデンスが認められた。しかし、この介入は、単一の試験報告における不十分さのため、バイアスのリスクが高いと評価された。選択したその他の試験もまた、バイアスのリスクが高いと評価された。試験結果については注意深く解釈することを推奨する。すべての介入の安全性プロファイルについて結論は出せなかった。

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背景: 

皮膚潰瘍の発症は、鎌状赤血球病患者における罹病負担の重要な一因となっている。医療従事者には多くの治療選択肢があるが、鎌状赤血球病患者にとってどの治療法が有効であるか不明である。

目的: 

鎌状赤血球病患者を対象に下腿潰瘍を治療するための介入の臨床的有効性および安全性を評価すること。

検索方法: 

Cochrane Cystic FibrosisおよびGenetic Disorders Group’s Haemoglobinopathies Trials Registerを検索した。

LILACS(1982年~2012年8月)、African Index Medicus(~2012年8月)、ISI Web of Knowledge(1985年~2012年8月)、Clinical Trials Search Portal of the World Health Organization(2012年8月)を検索した。特定したすべての試験の参照リストをチェックした。また、この分野で関連するランダム化試験を完了した可能性のある研究グループや個人に連絡を取った。

Cochrane Cystic Fibrosisおよび Genetic Disorders Group’s Haemoglobinopathies Trials Registerの最終検索日は2014年7月21日、Cochrane Wounds Group Trials Registerは2014年9月18日であった。

選択基準: 

鎌状赤血球病患者を対象とした下腿潰瘍を治療するための介入についてプラセボまたはその他の治療法と比較したランダム化比較試験。

データ収集と分析: 

2名の著者が独立して、選択基準を満たす試験を選択した。3名の著者が独立して、選択した試験のバイアスのリスクを評価し、データを抽出した。

主な結果: 

6試験が選択基準を満たした(250ヵ所の潰瘍を有する198名の参加者)。各試験では異なる介入を検証しており、本レビュー内では、全身性の薬物的介入(L-カルニチン、酪酸アルギニン、イソクスプリン)および局所性の薬物的介入(Solcoseryl®クリーム、RGDペプチド包帯、局所抗生剤)に分類した。3つの介入法では、潰瘍の大きさの変化について報告されている(酪酸アルギニン、RGDペプチド、L-カルニチン)。これらのうち、RGDペプチド・マトリックスでは、対照群と比較して潰瘍の大きさが有意に減少し、平均して6.60 cm減少した(95% CI 5.51~7.69;エビデンスの質は非常に低い)。3件の試験では、完全な回復の発生率について報告されている(イソクスプリン、酪酸アルギニン、RGDペプチド・マトリックス;エビデンスの質は低~非常に低い)。有意な効果について報告している試験はなかった。潰瘍の完全な回復までの期間、鎌状赤血球病の下腿潰瘍への治療後における無潰瘍生存率、生活の質の評価、切断の発生率について報告している試験はなかった。これらの介入の安全性に関する情報は報告されていなかった。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2016.1.6]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。

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