慢性腎疾患(CKD)の治療に対する大黄(漢方薬の一つ)

慢性腎疾患(CKD)は頻度が上昇している長期の生命を脅かす疾患である。CKDの人は慎重な経過観察を受け、病期と他の健康問題によって決定される治療を受けている。CKDの治療として、摂取蛋白量の制限とともに血圧をコントロールし腎機能を助ける薬剤がしばしば挙げられ、その薬剤は多くの場合アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEi)とアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARBs)である。漢方医はしばしば大黄(ルバーブの一種)をCKD患者の治療に用いる。 中国で実施された大黄を無治療またはACEiのカプトプリルと比較している9件の研究によるエビデンスを解析した。CKDの進行を示す重要な2つの血中マーカーである血清クレアチニンおよび血中尿素窒素の変化の報告を認めた。 大黄の投与によりCKDが改善するあるいはその進行が遅延することを示す高品質のエビデンスは見つからなかった。CKD患者において大黄による重篤な健康問題を認めなかった。大黄によりCKDの人に利益があるか評価する頑健かつ高品質のエビデンスを示すため、適切なデザインのRCTが必要である。

著者の結論: 

CKD患者でのSCrおよびBUNを改善する大黄の有効性に関し現在得られているエビデンスは乏しくかつ質が低かった。大黄はCKD患者での重篤な有害事象に関連しないようであったが、この使用を推奨することを支持するエビデンスは現在みられなかった。

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背景: 

慢性腎疾患(CKD)は世界で主要な公衆衛生上の問題の一つである。CKDの進行を遅延させる標準的治療として、食事蛋白制限、ならびに血圧コントロールに有用で付加的な腎保護作用を供するアンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEi)とアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)の投与が挙げられる。そのような介入にもかかわらず、CKD罹患率と死亡率は上昇し続けている。CKD治療に中国で広く使用されている薬草の一つである大黄は、疾患進行を遅延させる多様な薬理学的特性を示すと報告されている。

目的: 

CKDの進行予防に対する大黄の利益と害を評価すること。

検索戦略: 

Cochrane Renal Group's Specialised Register and CENTRAL(2011年第4号)、MEDLINE、EMBASE、Chinese Biomedicine Database(CBM)、China National Knowledge Infrastructure(CNKI)、VIP(Chongqing VIP Chinese Science and Technology Periodical Database)、Wanfang Dataを検索した。論文の参考文献リストもハンドサーチした。発表言語の制限は設けなかった。

選択基準: 

用法/用量、種類、精製度、投与法、投与期間、使用前保管期間を問わず、大黄のCKD進行予防に対する利益と害を評価しているランダム化比較試験(RCT)および準ランダム化比較試験を選択した。

データ収集と分析: 

2名の著者が別々に適格性について表題と抄録をスクリーニングし、研究の質を評価しデータを抽出した。二値アウトカム(腎置換療法の必要性、全死亡率、生活の質)の結果をリスク比(RR)と95%信頼区間(CI)で表した。連続アウトカム[糸球体濾過量(GFR)、血清クレアチニン(SCr)、クレアチニンクリアランス(CrCl)、血中尿素窒素(BUN)]は、平均差(MD)と95%CIで表した。

主な結果: 

参加者682名が登録された9件の研究を選択した。盲検化およびグループ割付けの方法を報告している研究はなかった。7件の研究は、不完全なアウトカムの報告について低リスクと判断され、3件の研究は選択的報告について低リスクと判断され(プロトコルが入手可能または本レビューに関連性のあるすべてのアウトカムが報告されていた)、2件の研究は他の可能性のあるバイアスがないと判断された。 7件の研究は大黄を無治療と比較し、2件はアンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEi)のカプトプリルと比較していた。無治療と比較して、大黄はSCr(MD -87.49 μmol/L、95%CI -139.25~-35.72)およびBUN(MD -10.61 mmol/L、95%CI -19.45~-2.21)に対し有効な作用を示した。カプトプリルと比較して、いずれのアウトカム(BUN、CrCl、患者の作業能力)についても大黄に関連した統計学的有意差を認めなかった。総死亡率および治療費に関するデータは得られなかった。大黄に関連して軽微な有害事象のみが報告された。

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