小児の近視に対する鍼療法

近視(近眼とも呼ばれる)は、小児および青年に最もよく発生する目の問題である。早期発見と初期近視の治療は、視覚改善および補正のより良好なアウトカムと関連する。近視は通常、眼鏡やコンタクトレンズを着けることで対応できる。伝統中医学の臨床医にとって、近視の治療に鍼を用いることは一般的な治療である。鍼治療は、鍼刺入、指圧、ツボ表面の通電、レーザー鍼による経穴の刺激である。本レビューは、小児および青年における近視進行を遅らせるための鍼治療の有効性と安全性を評価することを目的とした。我々は、台湾で行われた学童計131名を対象にした2件の研究を対象としたが、これらの試験は異なるアウトカムを評価していたため、結果を統合しなかった。1件の研究は、眼軸長の変化に有意差は認められなかった。両研究は、数人の小児が指圧に対し軽度の痛みを経験し、脱落した。本レビューが対象とした研究は、近視進行を遅らせるための鍼治療で効果を示すエビデンスを提供することができなかった。鍼治療とプラセボと比較し、他のタイプの鍼治療が調査され、少なくとも6カ月の治療の遵守が検討され、眼軸長の伸長の調査を少なくとも1年間とする、より多くの試験が行われるべきである。

著者の結論: 

2件の試験を本レビューの対象としたが、小児の近視進行を遅らせるための指圧を含む、鍼治療の利益に関する結論を導き出すことはできなかった。臨床において鍼治療を用いるための、いかなる推奨を行う前に、RCTの形式でさらなるエビデンスが必要である。それらの試験は、プラセボと鍼治療を比較し、大規模なサンプル・サイズを持つべきである。少なくとも6カ月以上の治療を遵守することを含め、他の鍼治療(例えば耳鍼など)をさらに探求するべきである。眼軸長の伸長は少なくとも1年は調査すべきである。小児が経験した鍼治療の痛みを軽減または解消する可能性も検討するべきである。

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背景: 

近視(近眼)はよく認められる3つの屈折(調節)異常の1つである。鍼治療は、鍼の刺入および指圧を含むさまざまな方法で経穴を刺激する。鍼治療は、中医学の臨床医が小児の近視治療によく用いる。

目的: 

小児および青年の近視進行を遅らせる鍼治療の有効性と安全性を評価する。

検索戦略: 

我々はCENTRAL (Cochrane Eyes and Vision Group Trials Registerを含む) (コクラン・ライブラリ 2011年7号)、MEDLINE (1950年1月〜2011年7月)、EMBASE (1980年1月〜2011年7月)、Allied and Complementary Medicine Database (AMED) (1985年1月〜2011年7月)、Latin American and Caribbean Health Sciences Literature Database (LILACS) (1982年1月〜2011年7月)、metaRegister of Controlled Trials (mRCT) (www.controlled-trials.com)、ClinicalTrials.gov (www.clinicaltrial.gov)、National Center for Complementary and Alternative Medicine (NCCAM) (第1号〜2010年8月)、Chinese Biological Medicine Database (CBM) (1978年〜2011年4月)、China National Knowledge Infrastructure (CNKI) (1994年〜2011年4月)、VIP (1989年〜2011年4月)を検索した。試験の電子的検索に日付や言語の制限は設けなかった。CENTRAL、MEDLINE、EMBASE、AMED、LILACS、mRCT ClinicalTrials.govは、2011年7月9日に最終検索した。NCCAM は2010年8月まで、CBM、CNKI、VIPは2011年4月6日まで検索した。

選択基準: 

我々は小児および青年の近視に対する、いかなるタイプの鍼治療も含むランダム化比較試験(RCT)を対象とした。

データ収集と分析: 

2名の著者がそれぞれ選択基準および除外基準に基づいて検索結果を評価した。2名の著者がそれぞれデータを抽出し、評価した。我々は、欠測データに関して、研究員に連絡を取った。

主な結果: 

我々は、台湾で行われた参加者計131名の2件のRCTを対象とした。試験は異なるアウトカムを評価していたとして、我々はメタアナリシスを行わなかった。どちらの試験も、平均変化量1ジオプターと定義した近視進行において事前定義した主要アウトカム基準を満たしていなかった。1件の試験のみ、グループ間の有意差なし で眼軸長の変化を報告し、両試験において、数名の小児が鍼での刺激中に軽度の痛みを経験したことを報告した。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.3.13]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 
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