多嚢胞性卵巣症候群の低受胎性女性に対する中薬(中医学の薬草療法)

レビューの論点

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の低受胎性女性における生児出生および有害事象に対する中薬(CHM)の効果に関するエビデンスのレビューを行った。

背景

PCOSは複合的な生殖内分泌疾患として多く認められ、妊娠可能年齢の女性の5%から10%が罹患する。PCOS患者は生理不順、低受胎性(妊娠失敗)、多毛症(体毛が過度に伸長)、座瘡および肥満を呈する場合がある。PCOSの管理には、経口避妊薬、インスリン抵抗性改善薬、腹腔鏡下卵巣多孔術(LOD)など多数の西洋医学が利用されてきた。中薬はPCOSの低受胎性女性に対する代替治療法として示唆されている。PCOSの低受胎性女性において中薬を他の治療法と比較した場合の有効性および安全性について検討した。

試験の特性

一般的なデータベースから2016年6月9日現在までのエビデンスを検索した。414名の参加者を対象としたRCTを組み入れた。対象とした試験は、中薬と西洋医学を比較した試験、中薬と西洋医学の併用を西洋医学単独と比較した試験、中薬と手術の併用を手術のみと比較した試験であった。いずれの試験も中国で実施された。すべての試験で、治療期間は6生理周期より短く、追跡期間は1年未満だった。生産率を報告した試験はなく、すべての試験で妊娠が、2件では排卵が報告され、有害事象の報告があったのは1件のみであった。

主な結果

PCOSの低受胎性女性への中薬の使用を支持するエビデンスが不十分である。生児出生率のデータは入手不能で、中薬が受胎アウトカムを改善することを示唆する一貫したエビデンスは得られなかった。中薬をクロミフェン(両群とも腹腔鏡下卵巣多孔術(LOD)ありまたはなし)と比較した結果、受胎率に群間差は認められなかった。中薬+卵胞吸引+排卵誘導を卵胞吸引+排卵誘導と比較した場合、受胎率に群間差は認められなかった。中薬とLODの併用をLOD単独と比較した場合、受胎率に群間差は認められなかった。しかし、中薬をクロミフェンに追加した場合、受胎率が向上する可能性を示唆する、限定された質の低いエビデンスが得られた。その他のアウトカムについても群間差のエビデンスは認められなかった。有害事象に関して中薬の安全性を示すエビデンスが不十分であった。

エビデンスの質

エビデンスの質は低いか、またはきわめて低かった。エビデンスの主な限界は、生児出生率および有害事象の報告がない、試験方法の詳細が十分記載されていない、不正確、のほかに、イベント発現率がきわめて低く、信頼区間の幅が広いことであった。

著者の結論: 

PCOSの低受胎性女性への中薬の使用を支持するエビデンスは不十分である。生児出生率のデータが入手できず、中薬が受胎アウトカムに影響を与えることを示唆する一貫したエビデンスはない。しかし、きわめて限定された質の低いエビデンスが、クロミフェンに中薬を併用すると受胎率が向上することを示唆している。中薬の安全性を示す有害事象に関するエビデンスが不十分である。

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背景: 

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は最も多い生殖内分泌異常のひとつで、妊娠可能年齢の女性の5%から10%が罹患する。経口避妊薬、インスリン抵抗性改善薬、腹腔鏡下卵巣多孔術(LOD)などの西洋医学がPCOSの治療に用いられている。最近、中薬(CHM)をPCOSの女性に対する代替療法として検討した試験が多数発表されている。

目的: 

PCOSの低受胎性女性に対する中薬の有効性および安全性を評価すること。

検索方法: 

The Cochrane Gynaecology and Fertility Group Specialized Register、the Cochrane Central Register of Controlled Trials (CENTRAL)、MEDLINE、EMBASE、Allied and Complementary Medicine (AMED)、PsycINFO、Chinese National Knowledge Infrastructure (CNKI)、VIP、Wanfangおよび臨床試験レジストリを、起始日から2016年6月9日まで検索した。さらに、対象試験の参考文献も組み入れ、その分野の専門家に問い合わせて試験を同定した。

選択基準: 

PCOSの低受胎性女性に中薬の使用を検討したランダム化比較試験(RCT)。

データ収集と分析: 

2名のレビュー著者がそれぞれ組み入れに適した試験をスクリーニングし、対象試験のバイアスのリスクを評価し、データを抽出した。筆頭試験著者に追加情報を問い合わせた。メタアナリシスを実施した。2値データの報告にはオッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)を使用した。Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation (GRADE)法を用いてエビデンスの質を評価した。

主な結果: 

414名の参加者を対象としたRCTを組み入れた。対象試験の比較は以下のとおり:中薬とクロミフェンの比較、中薬とクロミフェンの併用をクロミフェンと比較(エチニルエストラジオール・酢酸シプロテロン(CEA)ありまたはなし)、中薬+卵胞吸引+排卵誘発と卵胞吸引+排卵誘発を比較、中薬と腹腔鏡下卵巣多孔術(LOD)の併用をLOD単独と比較。比較の大多数は、全体的なエビデンスの質がきわめて低かった。

いずれの対象研究も生児出生率を報告しておらず、1件のみで有害事象のデータが報告されていた。

中薬をクロミフェンと比較した場合(両群でLODありまたはなし)受胎率に群間差があるというエビデンスは得られなかった(オッズ比(OR)1.98、95%信頼区間(CI)0.78 〜5.06、2試験、参加者数90名、I²統計量= 0%、きわめて質の低いエビデンス)。いずれの試験でも有害事象についてのデータは報告がなかった。中薬とクロミフェンの併用をクロミフェンと比較した場合(CEAありまたはなし)、中薬とクロミフェンの併用群の方が受胎率が高いという質の低いエビデンスが得られた(OR 2.62, 95% CI 1.65〜4.14、RCT3件、参加者数300名、I²統計量= 0%,質の低いエビデンス>)。有害事象についてのデータは報告がなかった。

中薬+卵胞吸引+排卵誘発を卵胞吸引+排卵誘発のみと比較した場合、受胎率(OR 1.60, 95% CI 0.46〜5.52、1試験、参加者数44名、きわめて質の低いエビデンス)、重度の黄体化未破裂卵胞症候群(LUFS)(OR 0.60, 95% CI 0.06〜6.14、1試験、参加者数44名、きわめて質の低いエビデンス)、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)(OR 0.16, 95% CI 0.00〜8.19、1試験、参加者数44名、きわめて質の低いエビデンス)および多胎妊娠(OR 0.60, 95% CI 0.06〜6.14、1試験、参加者数44名、きわめて質の低いエビデンス)に群間差があるというエビデンスは得られなかった

中薬とLODの併用をLOD単独と比較した場合、受胎率(OR 3.50, 95% CI 0.72〜17.09、1試験、参加者数30名、きわめて質の低いエビデンス)に群間差があるというエビデンスは得られなかった。有害事象についてのデータは報告がなかった。

その他のアウトカムについても群間差のエビデンスは認められなかった。その他の比較およびアウトカムに関するエビデンスの質はきわめて低かった。エビデンスの主な限界は、生児出生率および有害事象の報告がない、試験方法の詳細な記述がない、イベント発現率が低くCIの幅が広いため不正確、であった。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.1.20]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 
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