ミレーナLNG-IUSは、1年間にわたってタモキシフェンを使用している乳癌患者に対して良性子宮内膜ポリープの発現を予防すると考えられる。利用可能なランダム化比較試験から、LNG-IUSがこれらの患者の子宮内膜増殖症や腺癌の予防を示す明確なエビデンスはない。子宮内膜増殖症および子宮内膜癌に対するLNG-IUSの予防効果を評価し、乳癌の再発リスクへのLNG-IUS の影響を明らかにするために、さらに大規模な研究が必要である。
タモキシフェンによるアジュバント療法は、エストロゲン受容体陽性乳癌女性の再発リスクを軽減させる。タモキシフェンはまた、閉経後出血、子宮内膜増殖症、ポリープ、子宮内膜癌のリスクを上昇させる。レボノルゲストレル放出子宮内システム(LNG-IUS)は、子宮内膜の顕著な抑制を引き起こす。本システマティック・レビューでは、乳癌に対するアジュバント内分泌療法としてタモキシフェンを使用している女性の子宮内膜の病理的発現をLNG-IUSが予防することを示すエビデンスを検討した。
乳癌後にアジュバント療法としてタモキシフェンを使用している閉経前および閉経後の女性を対象に、子宮内膜増殖症、ポリープ、腺癌の発現を予防する上でのレボノルゲストレル子宮内システムの有効性を明らかにする。
Menstrual Disorders and Subfertility Group Specialised Register、Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)(コクラン・ライブラリ2009年)、MEDLINE(1996年~2009年8月)、EMBASE(1980年~2009年8月)、CINAHL(Cumulative Index to Nursing and Allied Health Literature)(1982年~2009年8月)の検索を通じて、アジュバント療法としてタモキシフェンを使用している乳癌の患者を対象に、子宮内膜に対するレボノルゲストレル子宮内システムの効果に関するランダム化比較試験を記述しているすべての報告を入手した。
アジュバント療法としてタモキシフェンを使用している乳癌の女性を対象に、子宮内膜の監視またはプラセボ単独とLNG-IUSとを比較したランダム化比較試験。子宮内膜に疾病を有する女性またはLNG-IUSが禁忌である女性は除外した。
2件のランダム化比較試験のみを同定し、本レビューに含めた。2名のレビューアが独立にバイアスリスクを評価し、データを抽出した。アウトカム指標は、子宮鏡検査または子宮内膜生検で病理学的に診断された子宮内膜(ポリープ、子宮内膜増殖症、腺癌などを含む)、治療により報告されたあらゆる副作用、および異常な腟出血であった。
含まれた2件の研究とも、実薬治療群はミレーナ20µg/日レボノルゲストレル放出子宮内器具(Bayer Health Care、米国)であった。タモキシフェン使用者でLNG-IUSを適用した結果、子宮内膜ポリープの罹患率が有意に低下した。(Petoオッズ比 0.14、95%信頼区間0.03~0.61)。いずれの試験も、LNG-IUSがタモキシフェン使用者の子宮内膜増殖症や腺癌の罹患率の有意な変化につながるかどうか、またはLNG-IUSが乳癌の再発リスクの上昇につながるかどうかを検出するには検出力が十分ではなかった。ミレーナ投与群では最初の6ヵ月間にかぎり腟出血が多いようであった。しかし12ヵ月時点では、出血パターンは両群でかなり似通っていた。
監 訳: 尹 忠秀,2010.2.10
実施組織: 厚生労働省委託事業によりMindsが実施した。
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