統合失調症に対するアーユルヴェーダ医学

アーユルヴェーダ医学は3000年以上前にインドで開発された現存する最古の医療システムである。アーユルヴェーダ医学では、それぞれの人が独自の心身構造および境遇を有すると考える。物質とエネルギーを同一視する点では、中医学と類似している。アーユルヴェーダ医学における治療はホリスティック(心身一体的)で、自然薬、マッサージ、食事および生活習慣の節制を利用する。最近では抗精神病薬や入院治療による西洋医学も利用されているが、アーユルヴェーダはその発祥(紀元前1000年)以来、長期に及ぶ重篤な精神疾患である統合失調症の治療に用いられてきた。

本レビューでは、統合失調症患者を対象にアーユルヴェーダ医学と抗精神病薬の使用を比較したランダム化比較試験を検討する。すべての試験がインドで実施され、期間は12週間以下であった。アーユルヴェーダ・ハーブのbrahmyadiyogaおよびtagaraをプラセボと比較した結果(2試験)、治療の忍容性および全体的な改善に2群間で有意は認められなかった。しかし、アーユルヴェーダ医学的に評価(精神、決断力、見当識、記憶力および習慣の評価ならびに疾患の症状消失の確認の組み合わせ)した場合、brahmyadiyoga群では改善が認められた。Brahmyadiyogaおよびtagaraを抗精神病薬クロルプロマジンと比較した場合も、治療の忍容性には認められなかったが、2件中1件の試験ではクロルプロマジン群で精神状態の改善が認められた。このほか、アーユルヴェーダ治療の組み合わせ(ハーブおよび他の治療)をクロルプロマジンと比較した試験が実施され、いずれの治療も忍容性は良好であったが、その他のデータは利用できなかった。Brahmyadiyogaおよびtagaraでは有害作用として嘔吐や悪心が認められる傾向があり、クロルプロマジンでは眠気が認められた。アーユルヴェーダ治療は抗精神病薬の補助療法として用いることができるかもしれない。アーユルヴェーダ・ハーブ単独をクロルプロマジン単独および両者の併用と比較した、さらに大規模な試験を新たに実施することで、この問題の解答が得られるだろう。

(本レビューの平易な要約の執筆者:Janey Antoniou、RETHINK, UK www.rethink.org)


著者の結論: 

アーユルヴェーダ薬は統合失調症の治療に有効である可能性があるが、少数の小規模な先駆試験でしか評価されていない。

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背景: 

アーユルヴェーダ医学は紀元前1000年から精神衛生の問題に利用されている。

目的: 

統合失調症に対するアーユルヴェーダ医学またはアーユルヴェーダ治療の有効性のレビューを行うこと。

検索方法: 

Cochrane Schizophrenia Group Trials Register(2007年3月)およびAMED(2007年3月)を検索し、同定した研究の参考文献をすべて調査し、組み入れた各研究の筆頭著者に問合せを行った。

選択基準: 

統合失調症および統合失調症様障害 に対し、アーユルヴェーダ医学またはアーユルヴェーダ治療プラセボ、定型抗精神病薬および非定型抗精神病薬と比較したすべてのランダム化臨床試験を対象とした。

データ収集と分析: 

それぞれのレビュー著者がデータを抽出し、intention-to-treat解析を行い、ランダム効果、相対リスク(RR)、95%信頼区間(CI)、また該当する場合は治療必要数害必要数(NNT/H)を計算した。連続データについては重み付け平均差(WMD)を計算した。

主な結果: 

3件の小規模(総数n=250)短期研究を組み入れたが、全身状態、医療サービス の利用、治療の満足度など、多数の一般的かつ臨床的に重要なアウトカムについてデータを抽出できなかった。アーユルヴェーダ・ハーブをプラセボと比較した結果、参加者の約20%が試験を早期中止した(n=120, RCT:2件, RR 0.77 CI 0.37〜1.62)。精神状態の評価は、アーユルヴェーダ医学的評価を用いたbrahmyadiyoga群(n=68, RCT:1件, RR改善なし0.56 CI 0.36〜0.88, NNT 4 CI 3〜12)を除き、大多数が不明確であった。行動に変化は認められないようであった(n=43, RCT:1件, WMD Fergus Falls行動評価尺度 1.14 CI -1.63〜3.91)。Brahmyadiyoga群では悪心および嘔吐が多く発現した(n=43, RR 13.13 CI 0.80〜216.30)。アーユルヴェーダ・ハーブを抗精神病薬(クロルプロマジン)と比較した場合も、同数の参加者が試験を早期中止した(n=120, RCT:2件, brahmyadiyogaのRR 0.91 CI 0.42〜1.97)が、ハーブ群ではクロルプロマジン群と比較して精神状態の改善が認められないリスクが高かった(n=45, RR 1.82 CI 1.11〜2.98)。この試験でも、brahmyadiyoga群で悪心および嘔吐が認められた(n=45, RCT:1件, RR 20.45 CI 1.09〜383.97, NNH 2 CI 2〜38)。最後に、統合失調症患者を対象に多種のハーブを混合したアーユルヴェーダ治療をクロルプロマジンと比較した結果も同様であった(脱落約10%, n=36, RR 0.67 CI 0.13〜3.53)が、偏りのあるデータによると、クロルプロマジン群の方が効果が高いようであった。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.2.28]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。
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