顎矯正手術(外科的矯正治療)における吸収性プレートとチタンプレートの比較

レビューの論点

顎矯正手術後の顔面骨の固定には、チタン(金属)プレートよりも吸収性(生分解性)プレートの方が良いか?

背景

片方または両方の顎の骨の成長が不十分または過剰になると、機能が低下したり、顔の外観を損ない、いずれにおいても持続的で重大な心理社会的影響をもたらす可能性がある。重度の症例では、矯正装置と顎矯正手術を組み合わせた治療が必要になることもある。手術後は、切断された骨が最適な状態で治癒するように固定する必要がある。固定に使用されるチタンプレートは「ゴールドスタンダード」と認識されているが、最近の生体材料の開発により、顎矯正手術に生体吸収性のプレートやスクリューを使用することが増えてきた。顔面骨の固定に生体吸収性プレートを使用することで、金属プレートを除去するための追加の手術の必要性を減らすことができると思わる。しかし、吸収性プレートは金属製プレートに比べて一定の利点があるように思われるが、固定の安定性、吸収される(再吸収される)までの時間、異物反応の可能性、それらに伴う吸収性プレートの技術的困難さなどの懸念が残っている。

研究の特性

計103人の参加者を分析した2件の研究を対象とした。本レビューのエビデンスは、2017年1月20日時点までのものである。研究参加者は16歳以上の成人であった。1件の研究では、チタンと吸収性のあるプレートおよびスクリューを比較し、もう1件の研究では、チタンと吸収性のあるスクリューを比較していた。1件は中国で、もう1件はドイツで実施された研究である。

主な結果

どちらの研究もバイアスのリスクが高く、データも非常に限られていた。顎矯正手術後の骨の固定に、チタンプレートと吸収性プレートのどちらが優れているかを判断する十分なエビデンスはなかった。本レビューでは、チタンまたは吸収性材料を用いたプレートとスクリューの固定において、術後の痛みや不快感、患者の満足度、プレートの露出やそれによる感染に違いがあることを示す十分なエビデンスはなかった。

エビデンスの質

今回対象となった研究はいずれもバイアスのリスクが高いと評価され、非常に限られた弱いエビデンスの質は非常に低度であった。

訳注: 

《実施組織》屋島佳典 翻訳、小林絵里子 監訳[2022.02.16]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD006204.pub3》

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