大腸癌手術後のアウトカムに対する症例数と外科医の専門性

著者の結論: 

本結果から、病院と術者の症例数、および専門性に基づいて、大腸癌手術において症例数とアウトカムに関連があることが明らかに確認された。症例数とアウトカムとの関連は、病院についてよりも個々の術者についてより強いようであった。特に5年全生存率と手術死亡率では、米国と非米国のデータ間で差がみられ、異なる国々において病院レベルの医療従事者のばらつきがあることが示唆されたことから、各国または医療システムが監査システムを確立し、地域のデータに基づいてサービスの提供を変えるよう指導し、必要であればサービスを一元化させることが必要である。選択したすべての研究は観察デザインであったことから、エビデンス全体の質は低かった。また、症例数と大腸癌専門医の定義は一致していなかった。しかし、症例数とアウトカムとの関連に取り組んでいるランダム化比較試験(RCT)の概念は倫理的問題に関連していることから、これが最善の入手可能なエビデンスである。

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背景: 

多数の研究は、医療従事者の経験と専門性が大腸癌手術のアウトカムなどの患者アウトカムに及ぼす効果の検討に焦点を当てている。しかし、大腸癌管理におけるそのような医療従事者の特性の役割について、矛盾するエビデンスがみられる。

目的: 

病院の規模、外科医の症例数と専門性が大腸癌、結腸癌および直腸癌手術に及ぼす効果について入手可能な文献を検討すること。

検索戦略: 

フリーテキスト検索(およびMESH-terms)を使用し、Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)およびLILACSを検索した。また、Medline (1990年1月~2011年9月)、mbase (1990年1月~2011年9月)、臨床試験登録、学術会議の抄録、選択した研究の参考文献リストも検索し、本分野の専門家にも連絡を取った。

選択基準: 

症例数の多い/専門病院・専門医と症例数の少ない/専門性の低い病院・術者とで、大腸癌、結腸癌、直腸癌手術のアウトカム(5年全生存率、疾患特異的5年生存率、手術死亡率、5年局所再発率、吻合部漏出率、永久的ストーマ率、および腹会陰式直腸切断術率)を比較している非ランダム化研究および観察研究

データ収集と分析: 

2名のレビューアが別々にデータを抽出し、選択した研究におけるバイアスリスクを評価した。無調整およびcase-mix調整メタアナリシスにおいてランダム効果を用いて結果をプールした。

主な結果: 

5年全生存率は、症例数の多い病院(HR = 0.90、95%CI 0.85~0.96)で、症例数の多い外科医(HR = 0.88、95%CI 0.83~0.93)および大腸専門医(HR = 0.81、95%CI 0.71~0.94)によって治療を受けた大腸癌患者で有意に改善した。手術死亡率は、症例数の多い術者(OR = 0.77、95%CI 0.66~0.91)および専門医(OR = 0.74、95%CI 0.60~0.91)で有意に良好であったが、case-mix調整研究のみを選択した場合、症例数の多い病院との有意な関連はなかった(OR = 0.93、95%CI 0.84~1.04)。case-mix調整のレベルおよび研究が米国または他の国のものであるかどうかによって、症例数の効果が異なっていた。直腸癌では、症例数の多い病院と5年生存率の改善に有意な関連がみられた(HR = 0.85、95%CI 0.77~0.93)が、手術死亡率(OR = 0.97、95%CI 0.70~1.33)とは関連がなかった。case-mix調整研究を検討した場合、術者の症例数は、5年生存率(HR = 0.99、95%CI 0.86~1.14)および手術死亡率(OR = 0.86、95%CI 0.62~1.19)のどちらとも有意な関連はなかった。症例数の多い病院では、永久的ストーマ率(OR = 0.64、95%CI 0.45~0.90)およびAPER率(OR = 0.55、95%CI 0.42~0.72)が有意に低いという関連がみられた。症例数の多い術者(0.75、95%CI 0.64~0.88)と専門医(0.70、95%CI 0.53~0.94)の方が、永久的ストーマ形成率が低かった。

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