胎児骨盤不均衡に対する恥骨結合切開

恥骨結合切開とは、骨盤正面の恥骨結合線維を部分的に切って母親の骨盤腔を広げる処置です。 通常、胎児が大きく骨盤を通過できない場合は帝王切開を実施します。& 帝王切開ができない、母親が病気で帝王切開ができない、母親が帝王切開を拒否する場合や、 帝王切開を行うには十分な時間がない(胎児の足が最初に生まれ頭がはまって動かないなど)場合、恥骨結合切開を実施します。 局所麻酔薬を注射して恥骨結合の部位を麻痺させ、皮膚にメスで小切開を加え恥骨結合の線維の大部分を切ります。 胎児が出生するとき、結合が離れて胎児が通過できるようになります。 恥骨結合切開は致死的合併症について非常に安全で骨盤不安定症が起こることはまれなことが、大規模な観察研究により示されました。 こうした問題と、本処置が「次善の」処置と考えられていることから、今日ではほとんど行われなくなりました。 合併症を起こすかもしれない恥骨結合切開を実施したら非難されることを医療従事者は恐れています。 恥骨結合切開を実施すれば帝王切開の医療施設がない世界の一部での分娩停止による母親と子どもの多数の死亡が防止できると、恥骨結合切開の支持者は主張しています。 このレビューでは、恥骨結合切開を評価しているランダム化試験をみつけられませんでした。

著者の結論: 

恥骨結合切開の使用を巡る議論、および特定の状況では恥骨結合切開が救命的処置となる可能性があるため、 最善の入手可能なエビデンス(現在のエビデンスは観察研究によるもの)に基づいた、 恥骨結合切開の使用(または無使用)に関するガイドラインを専門家による国際団体が提示すべきである。 帝王切開ができない臨床的状況での無恥骨結合切開またはその代替法と比較した、 また(帝王切開による合併症リスクが非常に高い女性など)リスクと利益比が不明な臨床的状況での帝王切開と比較した、 恥骨結合切開の有効性および安全性に関する頑健なエビデンスを提示する研究が必要である。

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背景: 

恥骨結合切開とは、恥骨結合の線維を部分的に分離し結合を解いて、出産の際の骨盤径を拡大させる処置である。 局所麻酔により実施し手術室および高度の手術手技を必要としない。& 臨床的状況によっては母親、胎児、またはその両方の救命的処置となる。 これらの状況とは、帝王切開ができない場合、安全でない場合、母親が帝王切開を拒否している場合の分娩遷延、骨盤位で後続する頭部による産道閉塞が挙げられる。 特に骨盤不安定症などの合併症があり、かつ「次善の」選択肢であるため本処置は批判を受け、多数の国々で使用が減少し使用されなくなった。 数件の大規模な観察研究が高率の成功、低率の合併症、非常に低率の死亡率を報告している。

目的: 

様々な臨床的状況での分娩停止に対する恥骨結合切開の有効性および安全性と、代替選択肢との比較を最善の入手可能なエビデンスから検討すること。

検索戦略: 

Cochrane Pregnancy and Childbirth Group's Trials Register(2012年7月7日)を検索した。

選択基準: 

分娩停止または骨盤位分娩中の後続する頭部による閉塞に対する恥骨結合切開を代替の管理法または恥骨結合切開の代替手技と比較しているランダム化試験。

データ収集と分析: 

方法として、選択に対する客観的質基準に照らした研究の評価、データ抽出、リスク比または平均差、および95%信頼区間を用いたデータ解析を設定した。 主要アウトカムは、母体の死亡または重度の罹患、および周産期の死亡または重度の罹患であった。

主な結果: 

恥骨結合切開のランダム化試験を認めなかった。

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