子宮筋腫の女性を治療するための漢方薬

子宮筋腫は、子宮に発生する良性(癌ではない)腫瘍である。女性の骨盤内で最もよくみられる腫瘍であり、35歳以上の女性の4~5人に1人の割合で発生する。筋腫があってもそれに気づかない女性も多いが、腫瘍の大きさ、数や位置によって症状や問題が起こる場合がある。よくみられる症状としては、長期または頻回の月経期間、多量の出血、月経痛、下腹部の圧痛、不妊、流産などがある。これらの症状がみられる場合、治療が必要となる。筋腫は、筋腫摘出術(子宮はそのままで筋腫のみを摘出する)または子宮摘出術(子宮全体を摘出する)などの手術で治療する。もう1つの方法は、子宮への血管を閉塞させる子宮動脈塞栓術である。ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)拮抗薬などの薬剤が、筋腫を小さくするため、および出血をコントロールするために用いられる場合がある。

漢方薬は、薬剤、手術または双方の代わりとしてよく用いられる。このシステマティックレビューでは、子宮筋腫のある女性2,222例を対象とした21件のランダム化臨床試験を選択した。症状緩和について適切に評価した試験がなかったため、症状緩和に対する漢方薬の有効性を示すエビデンスはなかった。従来の薬剤と比較して、トリプテリジウム・ウィルフォルディ(Tripterygium wilfordii)という1種の漢方薬で、子宮筋腫の体積を減少させる上で有益な効果が認められた。その他の5種の漢方薬は、子宮筋腫の体積を減少させる上で従来の薬剤と同程度であると考えられる。Guizhi Fuling剤という漢方薬では、ミフェプリストンと併用した場合、ミフェプリストン単独と比較して子宮筋腫の体積を減少させる上で有意な効果が認められた。しかし、これらの臨床試験は、参加者数が少なく、試験の質も低かった。選択した21試験のうち13試験で、漢方薬の有害作用が報告されており、胃不快感、悪心、顔のほてりや食欲不振などの軽度な問題が認められたが、重篤な有害作用は認められなかった。本レビューでは、子宮筋腫に対する漢方薬の効果は確認できなかったため、大規模かつ質の高い試験で検証する必要がある。

著者の結論: 

サンプル・サイズが大きく質の高い試験が不足しているため、今回のエビデンスは、子宮筋腫の治療のために漢方薬を使用する上で支持したり否定したりするものではない。臨床的に関連のあるアウトカムを評価する質の高い試験を、今後行う必要がある。

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背景: 

子宮筋腫は、出産適齢期の女性に最もよくみられる非悪性腫瘍である。多量の月経出血および不妊の原因となる。漢方薬は、手術の代わりによく用いられる。

目的: 

子宮筋腫を治療する上での漢方薬の有効性および安全性を評価すること。

検索戦略: 

著者らがTrials Search Coordinatorの指導に従って、下記の電子的データベースを検索した:Trials Registers of the Cochrane Menstrual Disorders and Subfertility Group and the Cochrane Complementary Medicine Field、Cochrane Central Register of Controlled Trials (CENTRAL)(コクラン・ライブラリ2012年第4号)、MEDLINE、EMBASE、Chinese Biomedical Database、Traditional Chinese Medical Literature Analysis and Retrieval System(TCMLARS)、AMEDおよびLILACS。検索内容は2012年9月11日現在のものとした。

選択基準: 

子宮筋腫の女性を対象として漢方薬と介入なし、プラセボ、内科的治療または手術とを比較したランダム化比較試験(RCT)。従来の治療法との併用の有無を問わず、漢方薬に関する試験を選択した。

データ収集と分析: 

2名のレビューアがそれぞれデータを収集した。方法論的基準に従って、バイアスのリスクについて試験を評価した。二項データはリスク比(RR)として、連続アウトカムは平均差(MD)として、95%信頼区間(CI)と共に示した。

主な結果: 

21件のRCT(2,222例の女性を対象)を選択したが、大半の試験では、バイアスのリスクが不明または高かった。選択した試験で使用された漢方薬には、いくつかの種類があった。平均治療期間は3~6カ月であった。主要アウトカム(子宮筋腫に関連する症状)は、選択した試験のいずれにおいても報告されていなかった。試験の大半では、筋腫の体積および子宮の大きさを報告していた。

ミフェプリストン(中絶用ピル)と比較して、トリプテリジウム・ウィルフォルディ(Tripterygium wilfordii)抽出物により、筋腫の体積(MD -23.03 cm3、95%CI -28.39~-17.67;2試験)および子宮の大きさ(MD -51.25 cm3、95%CI -77.70~-24.80;2試験)が大幅に減少した。筋腫の体積および子宮の大きさの平均値について、Nona Roguy漢方薬とゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)拮抗薬との間に有意差は認められなかった。ミフェプリストン単独と比較して、Guizhi Fuling剤とミフェプリストンとの併用により、筋腫の体積(MD -1.72 cm3、95%CI -2.42~-1.02;7試験)および子宮の大きさ(MD -31.63 cm3、95%CI -54.58~-8.68;3試験)が大幅に減少した。21試験中13試験でのみ、有害事象について報告されていたが、漢方薬による重篤な有害作用は認められなかった。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2015.12.31]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。

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