筋萎縮性側索硬化症/運動ニューロン疾患に対するクレアチン

筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、運動ニューロン疾患(MND)としても知られる進行性の神経変性疾患で、麻痺が広がり寿命が短くなる。最近では、クレアチンと呼ばれる自然発生する有機酸がALS/MNDの有望な治療法として注目されている。しかし、これまでのところ、臨床試験の結果は矛盾している。そのため、2012年7月現在で入手できるあらゆる臨床試験のエビデンスを体系的に調べ、ALS/MNDの人に対してクレアチンが利益や害をもたらすのかについて検討した。本レビューでは、クレアチンまたはプラセボを投与した合計386例を対象として、適切にデザインされた3件の臨床試験を選択した。全般的にクレアチンの忍容性は良好で、重篤な副作用はなかった。さまざまな統計的方法を用いたところ、5~10 g/日のクレアチンは、ALSの生存期間を延長したり、ALSの進行を遅延させたりすることもなく、意味がないことがわかった。クレアチンは呼吸能をやや悪化させる可能性があるが、これは誤解を招く恐れのある、単なる統計的なばらつきではないかと考えられる。

著者の結論: 

ALSの診断が確定した患者や臨床的にALSの可能性が高い患者において、5~10 g/日のクレアチンは、生存期間、ALSFRS-Rや%予想FVCの経過に統計学的に有意な効果を示さなかった。

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背景: 

クレアチンは、アデノシン三リン酸(ATP)の産生に関与し自然発生する有機窒素化合物であり、運動ニューロン疾患(MND)としても知られる筋萎縮性側索硬化症(ALS)のマウスモデルの生存期間を延長させることが示されてきている。しかし、ヒト臨床試験の結果は矛盾している。クレアチンの有効性に関する結果の矛盾をふまえ、2012年にシステマティック・レビューの更新を行った。

目的: 

ALSの人の延命と本疾患の進行遅延におけるクレアチンの有効性を体系的に調べること。

検索方法: 

ALSの治療においてクレアチンを調べたあらゆる試験について以下を検索した。 Cochrane Neuromuscular Disease Group Specialized Register(2012年7月16日)、CENTRAL(コクラン・ライブラリ 2012年7号)、MEDLINE(1966年1月~2012年7月)、およびEMBASE(1980年1月~2012年7月)。また、その後追加されたあらゆる研究について当該分野の専門家に連絡を取った。

選択基準: 

ALSと診断された患者を対象とした、クレアチンまたはプラセボを用いた治療ランダム化試験主要アウトカムを気管切開なしの生存期間とし、副次評価項目をALS機能評価スケール改訂版(ALSFRS-R)の変化によって測定したALSの進行、および経時的な%予想努力性肺活量(FVC)とした。

データ収集と分析: 

2名の著者が独立して研究を選択し、バイアスのリスクを評価し、データを抽出した。各研究で得られた参加者のデータを収集し分析した。

主な結果: 

386例をクレアチン5~10 g/日またはプラセボに無作為化した3件の試験を選択した。2012年の更新時には、その後追加された試験はなかった。クレアチンについて選択した全3件の研究で良好な忍容性が報告され、腎不全やクレアチンに起因する重篤な有害事象に関するエビデンスはなかった。統合したログランク検定を行ったところ、全3件の研究において、プラセボ群とクレアチン群の生存期間に統計学的なはなかった(Chi2 = 0.09、P = 0.76)。また、統合した線形混合効果モデルを用いたところ、全3件の研究において、ALSFRS-Rのスロープに両群間で統計学的なはなかった(クレアチン群のスロープ:+0.03 ALSFRS-R/月;P = 0.76)。興味深いことに、統合した線形混合効果モデルを用いたところ、FVCをアウトカムとした2件の研究において、クレアチン群でFVCのスロープがやや悪化する傾向がみられたが(クレアチン群のスロープ: -0.63 FVC/月)、このは統計学的に有意ではなかった(P = 0.054)。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2015.12.31]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。

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