癌患者の化学療法、放射線治療、手術による副作用の緩和を目的としたセレン補充

癌患者に対するセレン補充が、化学療法と放射線治療の副作用や、手術の後遺症を減らすことを示すエビデンスはない。セレンはヒトの健康に必要なミネラルである。セレンは体内の細胞傷害を防ぎ、癌患者では悪心、下痢、四肢のリンパ貯留など治療の副作用を緩和するのに役立つ可能性がある。セレン補充は癌患者でよく行われている。本システマティックレビューでは癌患者にセレンを補充した研究を調べたところ、セレン補充が癌治療の副作用を改善することを示す明確なエビデンスはなかった。これらの研究有害作用は報告されなかったが、予期せぬ過剰摂取に関するエビデンスでは、セレン中毒が複数の人にみられた。癌患者におけるセレン補充の妥当な用量や、セレン補充が癌治療の副作用に影響するのかについて調べるには、より多くの研究が必要である。

著者の結論: 

癌患者に対するセレン補充が腫瘍特異的な化学療法や放射線治療の副作用を和らげたり、手術の後遺症や生活の質を改善したり、続発性リンパ浮腫を減少させたりすることを示すエビデンスは、今のところ不十分である。これまでの研究では、癌患者に対するセレン補充の推奨や非推奨の根拠となる知見はない。微量ミネラルの補充に関する危険性については留意する必要がある。前回のレビュー以降、新たに追加された1件の研究には、初回レビューの結論を変える情報はない。

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背景: 

本稿は2006年第3号で発表した初版コクラン・レビューの更新である。セレン補充は癌患者でよく行われている。セレンはヒトの必須微量元素で、抗酸化防御や酸化還元調節に関与する。癌患者に対する放射線治療や化学療法による複数の有害作用と、ヒトの体内で慢性リンパ浮腫を持続させる細胞プロセスは、細胞の酸化プロセスに関連している。セレンは従来の癌治療による副作用を緩和すると言われており、最近では化学療法や放射線治療による副作用や、続発性リンパ浮腫に対する治療薬として研究されている。

目的: 

本レビューでは、癌患者における従来の放射線治療、化学療法、および手術の有害作用に対するセレン補充の効果や、癌治療中と治療後の生活の質や一般状態に対するセレン補充の効果について評価した。

検索方法: 

Cochrane Pain, Palliative & Supportive Care Trials Register、Cochrane Database of Systematic Reviews、Database of Abstracts of Reviews of Effects(DARE)、CENTRAL、MEDLINE、EMBASE、SIGLE、Cancerlit、CCMed、ドイツの癌に関するオンライン試験登録、ISRCTN、mRCT、NCI Clinical Trials登録データベースについて、最新の検索を2007年7月に実施した。

選択基準: 

化学療法、放射線治療、手術など腫瘍特異的な療法を受ける癌患者を対象とした、セレンの単独補充に関するランダム化比較試験(RCT)。

データ収集と分析: 

化学療法、放射線治療、手術など腫瘍特異的な療法を受ける癌患者を対象とした、セレンの単独補充に関するランダム化比較試験(RCT)。

主な結果: 

2名のレビュー著者がそれぞれ試験の適格性をチェックし、データを抽出し、試験の質を評価した。今回の更新では新たに1件の研究を選択し、過去に選択した研究1件に39例の参加者を追加した。

今回の更新では、162例を対象とした計3件の研究を選択した。本レビューでは、乳癌の女性60例と頭頸部癌の男女20例を対象として、術後の続発性リンパ浮腫について調べた2件のRCTを選択した。また、82例の中間結果がある継続中の試験1件では、副次的評価項目として放射線治療による下痢について調べている。すべての研究で、研究の質や報告にかなりの問題があった。

続発性リンパ浮腫に関する1件の研究では、プラセボ群と比較してセレン補充群では、丹毒感染の再発数が減少したことを報告した。2件目の研究では、セレン群において腫瘍切除後2週間で顔の腫れが減少したことを報告した。しかし、結果の解釈には注意を要し、他の母集団に一般化することはできない。

放射線治療による下痢について調べている継続中の試験では、セレン補充群において骨盤放射線に伴う下痢の罹患率の低下を報告したが、データが示されていなかった。これらの知見を詳細に検討するには、最終結果の発表を待たなければならない。

癌患者を対象に、他の療法に伴う毒性や、生活の質、一般状態に対するセレン補充の効果を調べたRCTはなかった。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.2.26]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 
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