急性虚血性脳卒中患者を治療するための高圧酸素療法

論点

急性虚血性脳卒中患者を治療するために高圧酸素療法(HBOT)を行った場合とHBOTを行わなかった場合(治療なしまたは本物の治療を模倣した効果のない治療法)の安全性と有効性を比較することを目的とした。

背景

高圧酸素療法(HBOT)は、脳卒中によって障害を受けた部分に酸素を多く送ること、元に戻らない障害の程度を軽減することを目的とした治療法である。HBOTでは、10~20日間毎日1時間半の間、特別な部屋で新鮮な酸素を患者に吸気させる(深海に潜るダイバーが潜水病になったときに行うようなこと)。

研究の特性

2014年4月時点で、参加者705名を対象とした試験を11件特定した。すべての試験には、2週間以内に急性脳卒中を患った成人の参加者(女性41%)が含まれていたが、大半の試験では、3日以内に脳卒中を起こした参加者を登録していた。すべての試験で、参加者に対して標準的治療法にHBOTを追加することを評価した。大半の試験で、死亡者数や機能的能力の評価項目が報告されていたが、実際に用いた評価項目はかなりばらつきがあり、試験間の比較が困難となった。追跡期間は、90日間から1年間までと、ばらつきがあった。

主な結果

患者数が少なすぎるため、死亡する確率がHBOTによって低くなったかどうかを判断することができなかったが、3件の試験では、日常生活を行う能力に改善が認められた。全般的に、脳卒中の患者さんにHBOTを使用する根拠となるエビデンスは、現在のところほとんど認められない。

エビデンスの質

全般的に、参加者の数が少なかったこと、参加者の生活の質や機能的能力を評価する方法が様々であったことを考慮すると、エビデンスの質は中程度であった。これらの試験の多くで使用した方法については記述が少ないため、エビデンスの信頼性を十分に評価するのが困難であった。脳卒中後に死亡する確率についてのデータのみを統合できた。HBOTによって脳卒中後に死亡する確率が低下することを示唆するエビデンスは認められなかったが、この結果における私たちの信頼は比較的低い。HBOTが有害である可能性や有益である可能性を否定できない。

著者の結論: 

虚血性脳卒中の急性期にHBOTを行った場合、HBOTにより臨床アウトカムが改善されることを示す十分なエビデンスは認められなかった。11件のRCTのエビデンスは、実践のための明確なガイドラインを示すには不十分であるが、臨床的有益性の可能性は除外できない。本条件におけるHBOTの役割を明確に定義するには、更なる研究が必要である。

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背景: 

大半の脳卒中は、脳への血流障害(虚血)によって引き起こされ、利用可能な酸素が減少するために細胞死に至る。高圧酸素療法(HBOT)は、利用可能な酸素を大幅に増加させることにより、死に至る脳の容積を減少し、脳腫脹を低減させることによりアウトカムを改善すると考えられている。脳卒中の患者を治療するために日常的にHBOTを使用している医療機関もある。本システマティック・レビューは2005年発表のレビューの更新である。

目的: 

急性虚血性脳卒中患者の治療における補助的なHBOTの有効性および安全性を評価すること。

検索方法: 

Cochrane Stroke Group Trials Register(2014年4月最終検索)、Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)(2014年4月)、MEDLINE(1966年~2014年4月)、EMBASE(1980年~2014年4月)、Cumulative Index to Nursing and Allied Health Literature( CINAHL)(1982年~2014年4月)、Database of Randomised Controlled Trials in Hyperbaric Medicine(DORCTIHM)(2014年4月検索)および論文の参照リストを検索した。関連する公表文献を手動で検索し、他の公表済みおよび未公表の試験を特定するために研究者に連絡を取った。

選択基準: 

補助的なHBOTを行った場合の影響とHBOTを行わない場合(治療なしまたは偽治療)の影響を比較したランダム化比較試験(RCT)。

データ収集と分析: 

3名のレビュー著者がそれぞれ、データを抽出し、内部妥当性について各試験を評価し、議論して相違点を解決した。

主な結果: 

参加者705名を対象としたRCT試験11件を選択した。試験の方法論的な質は様々であった。死亡率についてのみ、データを統合できた。対照群と比較して、HBOTを受けた患者において6カ月後の死亡率に有意は認められなかった(リスク比[RR]0.97、95%信頼区間[CI]0.34~2.75、P値0.96)。障害および機能に関する14の評価項目のうち4項目において、HBOT後の改善がみられた。例えば、Trouillas Disability Scaleスコアの平均値はHBOTにより低くなり(平均差[MD]HBOTにより2.2ポイント減少、95%CI 0.15~4.3、P値0.04)、Orgogozo Scaleスコアの平均値は高くなった(MD 27.9ポイント、95%CI 4.0~51.8、P値0.02)。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2015.12.30]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。

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