原因不明の突発性難聴および耳鳴(耳鳴り)に対する高圧酸素療法

特発性突発性感音難聴(ISSHL)はよくみられるもので、しばしば永久的な難聴になる。したがって、患者の健康と幸福に多大な影響を与える。耳鳴り(持続的な異常音など)も同様によくみられ、しばしば難聴となる。これらの疾患の原因は不明であり、血管障害に続発する酸素不足に関連する可能性があるが、まだ同定されていない。高圧酸素療法(HBOT)は、特別に設計された部屋で純酸素を呼吸するもので、耳や脳への酸素供給を増加させる治療法で、難聴や耳鳴りの重症度を低下させる目的で時々使用される。

全般的に低質な7件の小規模試験から、ISSHLの人の聴力は改善する可能性があることと、おそらく耳鳴りも改善する可能性があることを示す複数のエビデンスを見出した。これらの知見は、HBOTが発症後2週間以内に実施される場合にのみあてはまると考えられる。また、HBOTは数カ月間耳が聞こえなかった人に役立つのかについてはエビデンスがない。さらなる研究が必要である。

著者の結論: 

急性ISSHLの人において、HBOTの使用により聴力が有意に改善するが、臨床的な意義は不明である。耳鳴に対するHBOTの効果をプール解析で評価することはできなかった。患者数が少なく、方法論的な欠陥があり、報告が不十分なため、この結果は慎重に解釈すべきである。HBOTによる利益がもっとも期待できる患者がいるとすれば、どのような患者なのかを明確にするには、適切な検出力の試験が必要である。

慢性のISSHLや耳鳴に対するHBOTの有益な効果を示すエビデンスがないため、これらの慢性疾患に対するHBOTの使用を推奨しない。

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背景: 

本稿は2005年1号のThe Cochrane Libraryで初版が発表されたコクラン・レビューの更新であり、過去にも2007年および2009に更新されたものである。

特発性突発性感音難聴(ISSHL)はよくみられる疾患で、生活の質に大きな影響を与える。高圧酸素療法(HBOT)は、内耳への酸素供給を促進することで聴力を改善する可能性がある。

目的: 

ISSHLおよび/または耳鳴の治療に対するHBOTの利益と有害性を評価すること。

検索方法: 

Cochrane Ear, Nose and Throat Disorders Group Trials Register、the Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)、PubMed、EMBASE、Database of Randomised Trials in Hyperbaric Medicine(DORCTHIM)、CINAHL、Web of Science、BIOSIS Previews、Cambridge Scientific Abstracts、ICTRP、およびその他の出典の発表済みおよび未発表の試験を検索した。最終検索日は2012年5月2日で、過去に2009年、2007年、および2004年にも検索した。

選択基準: 

ISSHLと耳鳴に対するHBOTの効果と代替療法を比較したランダム研究

データ収集と分析: 

3名のレビューアが「バイアスのリスク」ツールを用いて試験の質を評価し、選択した試験からデータを抽出した。

主な結果: 

本レビューでは7件の試験(参加者392例)を選択した。これらの研究は小規模で、総じて質は低かった。2件の試験の統合データは、平均聴力レベルの聴力閾値について、HBOTによる50%上昇の可能性では有意な改善を示さなかったが(HBOTのリスク比(RR)1.53、95%信頼区間(CI)0.85~2.78、P = 0.16)、平均聴力レベルの25%上昇の可能性は有意に増加することを示した(RR 1.39、95%CI 1.05 ~1.84、P = 0.02)。HBOTによる22%以上の改善の可能性があり、1例の良好なアウトカムの達成に対する治療必要数(NNT)は5であった(95%CI 3~20)。また、HBOT後の平均聴力レベルの聴力閾値に絶対的な改善がみられた(HBOTにより平均差(MD)が15.6 dB増加、95%CI 1.5~29.8、P = 0.03)。耳鳴における改善の有意性は評価できなかった。

慢性(6カ月)のISSHLおよび/または耳鳴における、聴力や耳鳴の有意な改善の報告はなかった。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2015.12.30]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。

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