生殖補助医療技術における採卵時の卵胞フラッシュ

レビューの論点

コクランの著者らは、生殖補助医療技術(ART)と呼ばれる、妊娠するための介入を受ける女性において、採卵の一環として行われる卵胞フラッシュの安全性と効果を評価した。

背景

自然に妊娠するのが困難なカップルは、妊娠するための介入を受けることを選択するかもしれない。これらの介入を生殖補助医療技術 (ART) と呼ぶ。ARTには、体外受精 (IVF)、体外受精の応用である顕微受精 (ICSI) と呼ばれる方法がある。体外受精(IVF)を実施する際には、卵巣を刺激するホルモンを用いて、卵巣内に複数の卵が発育するように調整する。この卵巣刺激に続き、超音波ガイド下で針を用いて、卵胞内にあるこれらの卵を吸引採取する。卵胞内を吸うだけでその内容物を回収する吸引法の代わりに、吸引後に卵胞内をフラッシュすることで、卵の回収率があがり、妊娠・出産の可能性が高くなるのではないかという提案がなされてきた。この方法は、卵胞フラッシュと呼ばれる。

研究の特性

このレビューには、10の研究が組み込まれ、その対象者は合計928人の女性で、卵胞吸引単独群、または卵胞吸引後フラッシュ群に無作為に割り付けられている。この2 つの手法に差があるかを見るため、主要な結果として出生率 (女性1000人あたり生まれた赤ちゃんの数)および流産率 ( 女性1000人あたりの流産数) について調査した。この分野で2017 年 7 月に利用可能なすべての関連した研究を同定するため、包括的な検索を行った。

主な結果

3 つの研究は、主な結果である出生率について報告し、卵胞フラッシュは吸引単独と比較して、おそらく出生率にほとんど或いは全く効果を示さないだろうと指摘した(エビデンスの質:中等度)。これは、吸引単独で約 41%の出生率であるのに対し、卵胞のフラッシュでは同等の出生率すなわち 29~52%に値すると示唆した。組み込まれた研究では、流産率を報告したものはなかった。

研究によって、おそらく卵胞フラッシュをしても、回収卵の数、胎児の数、臨床的妊娠率は、吸引単独群と比較してほとんど或いは全く変わらないこともわかった。エビデンスの質は非常に低いが、卵胞フラッシュをすると、吸引単独群よりも処置にかなり長い時間がかかるようだ。有害事象や安全性について、確立した結論を出すのに十分なエビデンスは得られなかった。

特定の患者群が卵胞フラッシュの恩恵を受けるかどうかについて判断するためには、より多くの研究が必要である。

エビデンスの質

主要な結果である出生率については、エビデンスの質は中程度であった。それ以外の結果については、非常に低い~中等度の質であった。該当する研究の主な限界は、盲検化(試験に参加している女性と研究スタッフ双方が、介入した内容を知らないようにするプロセス)の欠如、矛盾(異なる研究間に違いがあること)、および不正確 (不十分なデータ)である。

訳注: 

《実施組織》杉山伸子、井上円加 翻訳[2018.5.22] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。  《CD004634》

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