不安障害の成人の治療に対するトケイソウ

不安障害は、一般集団で非常に多いメンタルヘルスの問題である。薬草製剤のトケイソウは、その有効性および安全性が示された場合、不安障害の治療選択肢となる可能性がある。本レビューでは、現時点で入手可能なトケイソウの研究から得られたエビデンスを要約した。198名の参加者を対象とした2件の研究のみが選択基準を満たしていた。1件の研究では、トケイソウの有効性はベンゾジアゼピンと同程度で、脱落率も両群間で類似していた。研究が不足しているため、不安障害の治療に対するトケイソウの有効性および安全性に関する結論を導くことができない。

著者の結論: 

結論を導くには、不安に対するパッションフラワーの有効性を検討したRCTの数が少なすぎる。パッションフラワーの有効性をプラセボや抗うつ薬など他の種類の薬物と比較した、よりサンプルサイズが大きなRCTが必要である。

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背景: 

不安障害は、一般集団やプライマリケアの現場できわめて多くみられるメンタルヘルスの問題である。薬草製剤は人気があり、世界中で使用されており、有効性および安全性が示された場合、不安障害の治療選択肢となる可能性がある。トケイソウ(パッションフラワー抽出物)は、このような薬草製剤の成分の一つである。

目的: 

不安障害の治療に対するトケイソウの有効性および安全性を検討すること。

検索戦略: 

使用した情報源は次のとおり。電子データベース:Cochrane Collaboration Depression、Anxiety and Neurosis Cochrane Controlled Trials Register (CCDANCTR-Studies)、MedlineおよびLilacs、参考文献一覧の相互参照、対象試験の著者およびパッションフラワー製剤の製造者への問合せ。

選択基準: 

一次診断が全般性不安障害、不安神経症、慢性不安状態、その他不安が主訴の精神障害(パニック障害、強迫性障害、社会恐怖、広場恐怖、その他の恐怖症、心的外傷後ストレス障害)の患者にあらゆる用量、レジメンおよび投与方法でトケイソウを投与した、ランダム化比較試験および準ランダム化比較試験。ハミルトン不安評価尺度(HAM-A)などの不安症状評価尺度をはじめとする臨床アウトカムを用いて有効性を評価した。

データ収集と分析: 

検索した試験の中から2名のレビューアがそれぞれ試験を選択し、データを抽出し、試験の質を評価し、データを入力した。不一致が認められた場合は、さらに別のレビューアと協議した。本レビューに組み入れた試験の方法の質はコクランハンドブックに記載の基準を用いて評価した。二値アウトカムについては相対リスクと95%信頼区間(CI)を求め、連続アウトカムについては重み付け平均差と95% CIを求めた。

主な結果: 

198名の参加者を対象とした2件の研究が本レビューの選択基準を満たしていた。1件の研究では、ベンゾジアゼピンとトケイソウの有効性に差がないことが示唆された。2種類の介入間の脱落率は同程度であった。1件の研究結果ではトケイソウが業務遂行能力を改善することが示唆され(事後アウトカム)、1件の研究ではトケイソウがメキサゾラムと比較して眠気の副作用が少ないことが示されたが、いずれも統計学的有意差は認められなかった。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.2.3]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 
CD004518 Pub2

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