呼吸器感染症に対する抗菌薬の延期処方

レビューの論点

我々は、咽頭痛、中耳炎、咳(気管支炎)、および風邪を含む呼吸器感染症の患者への抗菌薬即時開始や抗菌薬処方なしと比較した抗菌薬の延期処方の効果を調査した。抗菌薬の適応の有無にかかわらず、全ての呼吸器感染症を含めた。また、実際の抗菌薬使用、患者満足度、薬剤耐性、再受診率、補助療法の使用も評価した。本レビューは、2007年、2010年、および2013年に発表されたレビューのアップデート版である。

背景

抗菌薬の過剰処方は、有害反応のリスクを増加させ、医療費の上昇や薬剤耐性の拡大をもたらす。

不要な抗菌薬処方を減らすための1つの戦略として、医師が患者に抗菌薬の処方箋は渡すが、必要性が生じるまで抗菌薬を内服しないよう勧めるという方法がある。この方法をとる場合、医師はその患者について直ちに抗菌薬を開始する必要はないと評価し、抗菌薬を使用しなくても症状が改善すると予想している。

試験の特性

このエビデンスは2017年5月25日現在のものである。呼吸器感染症患者に対する処方戦略を評価した11件(参加者の合計3555名)の試験を調査した。これらのうち抗菌薬の延期処方と抗菌薬の即時開始を比較する試験は10件であった。4件の試験では、抗菌薬の延期処方と抗菌薬の処方なしを比較していた。11件の試験のうち、5件には小児のみ(参加者1173名)、2件には成人のみ(参加者594名)、4件には小児と成人(参加者1761名)が含まれていた。これらの試験は、様々な呼吸器感染症を対象としていた。405名の参加者を対象とした1件の試験が、今回のアップデートで新たに加えられた。

主な結果

発熱、疼痛、気分不良、咳、鼻汁など多くの症状において、抗菌薬の即時開始群、延期処方群、および抗菌薬の処方なし群の各群の間に差はなかった。咽頭炎における疼痛や発熱、鼻汁の改善、中耳炎における疼痛や気分不良の改善だけは抗菌薬の即時開始群が早かったが、その差は小さかった。抗菌薬の処方なしの場合と比較すると、抗菌薬の延期処方の場合の方が、風邪患者の疼痛、発熱、咳の持続期間がわずかに短縮された。抗菌薬による副作用の発現率はほとんど差がなく、合併症の発症率に有意差はなかった。

試験参加者において、延期処方群の患者満足度(86%満足)は即時開始群の満足度(91%満足)と比べて似た結果であり、抗菌薬の処方なし群と比べて患者満足度は高かった(87%満足vs 82%満足)。実際に抗菌薬を使用した割合は、抗菌薬の即時開始群(93%)で最も高く、次いで延期処方群(31%)、抗菌薬の処方なし群(14%)の順であった。

初診から最初の1ヶ月間で延期処方群及び即時開始群について、試験参加者が、再受診する可能性が低いことを示す2つの研究があった。初診から最初の1ヶ月間を除き、試験参加者は延期処方群であっても抗菌薬の即時開始群であっても試験参加後の12ヶ月間は初診時とは別の呼吸器感染症で再受診する可能性は低いという研究があった。また、別の研究では、延期処方群に比べて抗菌薬の即時開始群の方が初診後12ヶ月の間に再受診する可能性が高いことがわかった。

急性中耳炎の小児を含む2件の研究で、延期処方群および抗菌薬の即時開始群での他の薬剤の使用が報告されている。一つの研究では、イブプロフェン、アセトアミノフェン、および点耳薬の使用で両群に差はなかった。別の試験では、抗菌薬の即時開始群では延期処方群よりも、小児が最初に診察を受けてから2日目および3日目のアセトアミノフェンの消費量が少なかった。調査対象となった試験の中にハーブやその他の補完医療を評価したものはなかった。

調査対象となった試験の中に薬剤耐性を評価したものはなかった。

エビデンスの質

全体として、エビデンスの質はGRADEの評価に照らして中程度であった。

医師が、直ちに抗菌薬を開始しなくても患者の安全が損なわれないと考えた場合、患者に、抗菌薬を使用せず様子を見て、もし症状が軽快しないようなら再受診するように勧める方が、抗菌薬の延期処方よりも抗菌薬使用は減少するだろう。しかしながら、延期処方の戦略が使用された場合の方が、患者の満足度はより高くなり得る。抗菌薬の延期処方戦略を使用しても、抗菌薬の即時開始の場合と比較すると、抗菌薬使用は有意に減少する。

編集者注:これはLiving Systematic Reviewである。Living Systematic Reviewは、関連する新たなエビデンスが利用可能になった時点でレビューに組み込むことによってレビューを継続的に更新するという、系統的レビューの新たな更新手法を提案するものである。本レビューの現在の状況については、Cochrane Database of Systematic Reviewsを参照のこと。

訳注: 

《実施組織》 安田知浩 翻訳、 井村春樹 監訳[ 2018.9.12 ] 《注意》この⽇本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6⽉からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも⽇単位で更新されています。最新版の⽇本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが⽣じている場合もあります。ご利⽤に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《 CD004417 》

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