外科的切開部の閉鎖のための組織接着剤

創傷閉鎖で用いる縫合術または医療用ステープルの代替品として、組織接着剤または医療用接着剤がますます使用されてきている。組織接着剤は縫合術と比較し、外科的創傷の閉鎖にすばやくまた簡便に使用できる可能性があることが示唆されてきた。組織接着剤は縫合に用いる針などとは異なり鋭傷のリスクがなく、また感染症に対するバリアとなると考えられている。これは、創傷治癒を促進し、縫合針の除去の必要性を回避できるからである。

2014年3月に研究者が医学論文の検索を実施し、創傷閉鎖に対する組織接着剤の使用を調査した33件の医学的研究が確認された。組織接着剤について、他の縫合術、ステープル、医療用テープなど閉鎖術、またはその他の種類の組織接着剤を比較した。関心のある主な転帰は、創傷の閉鎖維持、創離開の有無、感染症への罹患の有無とした。レビューの結果、縫合術を用いた場合で、創傷の創離開は殆ど認められなかったことが明確に示された。研究からはまた、組織接着剤には種類によって他の種類と比較し幾分早く使用できるものがあったことが報告された.組織接着剤と代替可能な閉鎖術では、美容的外観の結果または費用の点で明確な差は認められなかった。外科医および患者の好む皮膚閉鎖術に関する結果はさまざまであった。

著者の結論: 

縫合術は、裂開の最小限化に、組織接着剤より有意に優れていた。組織接着剤では、縫合術と比較し適用をすばやく行える場合もある。外科医は、手術現場において手術部位を閉鎖するのに、組織接着剤を他の方法の代替可能品とみなすことができるが、縫合術は裂開を最小限にすることに留意する必要がある。組織接着剤と閉鎖代替可能な方法を比較するための綿密に設計されたランダム化比較試験が必要である。これらの試験では、健康状態により創傷治癒および圧の高い手術部位に影響をあたえる可能性がある患者を組み入れるべきである。

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背景: 

縫合、医療用ステープルおよび粘着テープが創傷閉鎖の方法として長年使用されてきたが、最近、組織接着剤が臨床現場に導入されている。縫合による創傷閉鎖により閉鎖を綿密に行うことができるが、縫合術では組織反応性が生じることがあるがあり、除去が必要となる可能性がある。組織接着剤では、針による傷害のリスクがなく、抜糸不要という利点がある。当初、組織接着剤は主に緊急治療室で用いられるが、このレビューでは、外科的な皮膚切開口の閉鎖を目的に、外科医による使用が増えている手術室/手術台での組織接着剤の使用について調査する。

目的: 

外科的創傷の閉鎖に関して、各種組織接着剤の効果を従来の皮膚閉鎖術と比較評価すること。

検索戦略: 

2回目の更新を行った2014年3月にCochrane Wounds Group Specialised Register、Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)(コクラン・ライブラリ)、Ovid Medline、Ovid Medline(処理中& その他インデックス化されていない引用)、Ovid EMBASEおよびEBSCO CINAHLを検索した。このレビューでは、言語、出版日または研究の条件などによる検索および研究の選択での制約は設けていない。

選択基準: 

ランダム化比較試験のみを対象とした。

データ収集と分析: 

対象となる研究のスクリーニング、データ抽出およびバイアスのリスク評価を別個に2重で実施した。結果の表示は、連続値アウトカムについては、平均差を用いてランダム効果モデルで、また二値アウトカムについてはリスク比(RR)および95%信頼区間(CI)でそれぞれ表した。臨床現場および方法的な要因などの異質性を調査した。

主な結果: 

レビューの2回目の更新で新たに19件の対象となる試験が確認され、合計で33件の研究(試験参加者2793名)が選択基準を満たした。組織接着剤と比較し縫合術は創離開のリスク低減に有意に優れていたという低品質のエビデンスが認められた(裂開、RR:3.35、95% CI:1.53~7.33、10件の試験、試験参加者736名のデータをメタアナリシスに提供)。追加で有害な転帰を治療する必要がある症例数は43名と算出した。その他のすべての転帰(感染症、患者および術者の満足度、費用)について、縫合または組織接着剤のいずれかによって差が生じたことを示すエビデンスは認められなかった。組織接着剤と医療用粘着テープについて、裂開の低減、感染症、患者による美容的外観外観の評価、患者満足度または術者満足度の点で、差が生じたことを示すエビデンスがないことが明らかとなった.しかし、美容的外観に関する外科医の評価の点で、医療用粘着テープの使用を支持するエビデンスが得られた(平均差(VAS 0~100)9.56(95% CI:4.74~14.37、2件の試験、試験参加者139名)。1件の試験では組織接着剤とさまざまな創傷閉鎖法を比較し、患者・臨床医のいずれも医療用粘着テープよりも代替可能な閉鎖法で満足度が有意に高いことが明らかとなった。種類の異なる組織接着剤を用いた場合の転帰の差は殆どないと考えられた。1件の研究では、医療用粘着テープについて粘着性の高いものと粘着性の低いものを比較したところ、粘着性の高い医療用粘着テープのほうが粘着性の低い組織接着剤よりも使用する際に要する時間が短いことが明らかとなったが、時間の差は小さかった。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.2.3]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 
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