筋萎縮性側索硬化症/運動ニューロン疾患における痙攣の治療

痙攣は急性で不随意の痛みを伴う筋肉の収縮である。筋萎縮性側索硬化症(ALS)は運動ニューロン疾患(MND)とも知られ、その患者の多くでは、病気の経過中に痙攣を生じる。日常活動および睡眠に影響を及ぼさない程度の軽度の痙攣から、非常に重篤な痛みを伴う痙攣まで認められる。症状のない患者またはALS以外の症状が認められる患者での痙攣の治療に用いられる数種類の薬剤がALSに関する臨床試験で検討されている。こうした薬剤にビタミンE、クレアチン、キニジン、およびガバペンチンなどがある。ALS患者での痙攣の治療に用いられているその他の薬剤には、硫酸キニーネ、マグネシウム、リオレサール、ダントロレン、クロナゼパム、ジフェニルヒダントインおよびガバペンチンがあるが、これら薬剤の有効性は明らかでない。2006年および2010年に、それまで米国で痙攣の治療に最も多く処方されていた硫酸キニーネの使用に関して、米国食品医薬品局が警告を発表している。このレビューでは、ALS患者での痙攣に対する薬剤および物理療法の有効を確認することを目的とした。レビューアは、ALS患者を対象としたランダム化比較試験で合計試験参加者4789名となる20件の試験を確認した。1件の試験でのみ、薬剤テトラヒドロカンナビノール(THC)について、痙攣に関する介入の有効性について直接的に調査した。13件のALSに関するランダム化比較試験では、他の変数のうち痙攣を副次的な位置づけで調査した。薬剤はビタミンE、バクロフェン、リルゾール、L-トレオニン、キサリプロデン、インジナビル、およびメマンチンを用いた。6件のランダム化対照ALS試験では痙攣を有害事象として調査した。薬剤はクレアチン、ガバペンチン、デキストロメトルファン、キニジンおよびリチウムを用いた。20件の試験のいずれも有効性について示すことが出来なったが、これらの試験は小規模試験であった。ALSで痙攣の治療に関して現在のところエビデンスが欠けており、さらなる試験が必要である。

著者の結論: 

ALS/MNDの筋痙攣に対し、各種インターベンションの使用を支持するエビデンスは得られていない。さらに多くの大規模なランダム化比較試験でALS/MNDでの筋痙攣の治療について評価することが必要である。

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背景: 

痙攣とは痛みを伴う、不随意の筋収縮である。痙攣は筋萎縮性側索硬化症/運動ニューロン疾患(ALS/MND)のあらゆる段階で一般的に影響がみられる。現在、ALSでの筋痙攣治療は主に経験的なものであり、ランダム化比較試験からはエビデンスが得られていない。

目的: 

ALS/MND患者を対象に、筋痙攣に対する介入の影響、有害事象について、主要エンドポイントまたは副次的エンドポイントとして体系的に評価する。

検索方法: 

Cochrane Neuromuscular Disease Group Specialized Register(2011年2月14日)、Cochrane Central Register of Controlled Trials(2011年第1号、コクラン・ライブラリ)、MEDLINE(1966年1月~2011年1月)およびEMBASE(1980年1月~2011年1月)並びに論文の参考文献一覧について、「motor neuron disease」、「motor neurone disease」、「motoneuron disease」(運動ニューロン疾患) または「amyotrophic lateral sclerosis」(筋萎縮性側索硬化症)の用語を用いて検索した。このレビューでは、詳細情報について試験の筆者に問い合わせた。

選択基準: 

このレビューでは、ALS患者を対象に痙攣を主要エンドポイントまたは副次的エンドポイント、もしくは有害事象として評価した経口剤のランダム化試験および準ランダム化試験すべてを対象とした。また、皮下または静脈内用剤または理学療法の試験を対象とした。

データ収集と分析: 

すべての筆者は選択基準を適用し、研究の品質について別個に評価し、またすべての筆者はデータ抽出を別個に実施した。

主な結果: 

試験参加者が4789名となる20件の試験が確認された。テトラヒドロカンナビノール(THC)に関する1件の試験のみが、痙攣を主要エンドポイントとして評価した。13件の試験では、痙攣を副次的エンドポイントとして評価した。薬剤はビタミンE、バクロフェン、リルゾール、L-トレオニン、キサリプロデン、インジナビル、およびメマンチンを用いた。6件の試験では有害事象として痙攣を評価した。薬剤はクレアチン、ガバペンチン、デキストロメトルファン、キニジンおよびリチウムを用いた。20件の試験すべてで、ALS/MNDの痙攣治療で好ましい効果が得られなかったことが示されたが、多くの試験結果は明確に結論を導くには検出力が不十分であった。2件の小規模試験によるメタアナリシスでは、ALS/MNDでの痙攣の治療にアミノ酸であるL-トレオニンに関しては統計学的に有意ではない結果が示された。理学療法を痙攣の治療インターベンションとして使用していた試験は確認されなかった。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.2.1]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 
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