認知症に対し高照度光刺激療法を推奨するエビデンスは不十分である

本更新レビューは、認知症に伴う認知、ADL、睡眠、問題行動、精神症状に対する光刺激療法の効果を調べたものである。11件の試験のデータを解析した。

安静-活動および睡眠-覚醒のサイクルは、視床下部の視交叉上核(SCN)によって生じる先天的概日リズムによりコントロールされている。SCNの変化は、認知症患者における睡眠パターンの変化に対する生物学的基盤と考えられており、光によってSCNを刺激することで回復する場合がある。

選択した研究の光源は、参加者から約1メートル離れて眼の高さに設置されたライトボックス、参加者の頭につけた光よけ、天井に取り付けた光、または夜明けや夕暮れの薄明りの再現であった。

認知症に伴う認知機能、睡眠、焦燥性興奮、精神症状に対し高照度光刺激療法は効果がなかった。1件の研究でADLに有益な1つのアウトカムが得られたが、この結果は注意して扱われるべきであり、高照度光刺激療法を推奨する理由付けのためにはその再現が必要である。

著者の結論: 

認知症に対し高照度光刺激療法を行うことを支持するエビデンスは不十分である。今後の研究では、示唆される機能障害への効果を再現すること、および光刺激療法がこれらの重要なアウトカムを改善する生物学的メカニズムを解明することに焦点を当てるべきである。

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背景: 

安静-活動および睡眠-覚醒の周期は、視床下部の視交叉上核(SCN)によって生じる内因性サーカディアン(概日)リズムでコントロールされている。SCNの変性変化が認知症の人の概日リズム障害に対する生物学的基礎にあると考えられ、光によるSCNの刺激によって回復が見込まれる。

目的: 

本レビューでは、認知症に伴う認知、日常生活動作(ADL)、睡眠、問題行動、精神症状を改善するための光刺激療法の有効性に関するエビデンスを評価する。

検索方法: 

2014年1月20日に、検索語「bright light*」、「light box*」、「light visor*」、「dawn-dusk*」、「phototherapy」、「photo therapy」、「light therapy」、「light treatment」、「light*」を用いて、ALOIS、Specialized Register of the Cochrane Dementia and Cognitive Improvement Group(CDCIG)、コクラン・ライブラリ、MEDLINE、EMBASE、PsycINFO、CINAHLおよびLILACSを検索した。CDCIG Specialized Registerには、すべての主要な保健医療データベース(コクラン・ライブラリ、MEDLINE、EMBASE、PsycINFO、CINAHL、LILACS)、ならびに多数の試験データベースおよび灰色文献情報源からの記録が含まれる。

選択基準: 

認知症に伴う認知、ADL、睡眠、問題行動、精神障害に対する光刺激療法(あらゆる明度、期間を含む)の改善効果をコントロール群と比較した関連性のあるランダム化比較試験(RCT)を、すべて選択した(施設収容率や治療費も含む)。あらゆるタイプおよび重度の認知症患者を選択した。

データ収集と分析: 

2名のレビュー著者が独立して関連する検索論文を評価し、4名のレビュー著者が独立して、選択した試験バイアスのリスクを評価し、データを抽出した。治療終了時とフォローアップ期間に、コントロール群と治療群のアウトカムにおける統計学的な有意を調べた。いずれの試験効果の指標(平均差など)を用い集約した。

主な結果: 

11件の試験(13論文)が選択基準に合致した。しかし、報告されたデータがメタアナリシスに使用できない、または論文著者から必要なデータを得られないという理由で、3件の試験を解析から除外した。

本更新レビューでは、認知症に伴う認知機能、睡眠、問題行動(焦燥性興奮など)、精神症状に対して光刺激療法は効果がないことがわかった。ADL制限の進行の抑制が1件(5時点中3時点)で報告され、光刺激療法の効果が6 週間後と2年後に認められたが、1年後にはみられなかった。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2015.12.30]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。

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