ループ利尿薬による軽微な血圧下降作用

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ループ利尿薬は水分貯留を低減させるために使用されることの方が一般的だが、上昇した血圧を下げるためにも適応される。このクラスの薬剤がどの程度血圧を下げ、クラス内の個々の薬剤で差があるか、このクラスの薬剤に関連した有害性として何が推定されるか検討した。入手可能な学術文献を検索し、この疑問に取り組んでいるすべての試験を見出した。参加者460名で、5つの異なるループ利尿薬(フロセミド、シクレタニン、ピレタニド、インダクリノン、エトゾリン)の血圧下降能を検証している9件の試験を認めた。血圧下降の効果は軽微で、収縮期血圧は8 mmHg、拡張期血圧は4 mmHgだけ下がった。血圧下降作用の点で、あるループ利尿薬が他のものより有効または無効ということはなかった。これらの試験の報告内容の欠如および短期間の実施のため、ループ利尿薬に関連した有害性について推定することができなかった。

著者の結論: 

発表されている限定的な数のRCTに基づくと、ループ利尿薬による収縮期/拡張期血圧下降効果は軽微(-8/-4 mmHg)で、選択した研究におけるバイアスが高リスクであるため過大評価の可能性がある。ループ利尿薬クラス内の異なる薬剤間に臨床的に意味のある血圧下降の差はなかった。ループ利尿薬の用量依存性の効果を評価できなかった。本レビューでは、試験期間が短く、試験の多くが有害な作用の報告をしていないため、ループ利尿薬に関連した有害作用の発現率を十分推定することはできなかった。

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背景: 

サイアザイド系利尿薬クラスの降圧薬は、死亡率および心血管系罹病率を低下させることが示されている。ループ利尿薬は降圧薬として適応され使用されているが、心血管系死亡率と罹病率の低下という点での血圧下降の有効性について、ランダム化比較試験(RCT)によるシステマティック・レビューは実施されていない。

目的: 

原発性高血圧患者の治療において、プラセボコントロールに比べたループ利尿薬による収縮期および/または拡張期血圧の用量依存性の低下、ならびに中止に至った有害事象および有害な生化学的影響(血清カリウム、尿酸、クレアチニン、糖、および脂質プロファイル)を検討すること。

検索戦略: 

Medline(1946~2012年2月)、EMBASE(1974~2012年2月)、CENTRAL(2012年第2号)、および参考文献の引用を検索した。

選択基準: 

ベースライン血圧が140/90 mmHg超と定義した原発性高血圧患者を対象に、ループ利尿薬をプラセボと比較している3週間以上の期間の二重盲検ランダム化プラセボ対照比較試験。

データ収集と分析: 

2名のレビューアが別々にバイアスリスクを評価しデータを抽出した。重み付け平均差および固定効果モデルを用いて連続的アウトカムデータを統合した。有害作用による脱落は相対リスク比を用いて解析した。

主な結果: 

9件の試験がベースライン血圧162/103 mmHgの患者460名を対象に、平均8.8週間、ループ利尿薬クラスの5つの薬剤(フロセミド40~60mg、シクレタニン100~150 mg、ピレタニド3~6 mg、インダクリノン鏡像異性体-2.5~-10.0/+80 mg、エトゾリン200 mg)の用量依存性の血圧下降への有効性を評価していた。ループ利尿薬による収縮期/拡張期血圧下降有効性の最大推定値は、-7.9 (-10.5、-5.4) mmHg/ -4.4 (-5.6、-2.8) mmHgであった。有害作用による投与中止および血清生化学検査値の変動に有意差はなかった。 2012年の更新検索では、最小限の選択基準を満たす、その後追加された新規の試験はなかった。