マクロライド系抗菌薬は慢性喘息に使用すべきか?

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主なポイント:マクロライド系抗菌薬がほとんどの治療結果においてプラセボよりも優れていることを示す研究はない。症状の程度や肺機能の改善にはメリットがあるかもしれないが、肺機能の改善の場合はどのように肺機能が測定されるかによる。エビデンスの質が非常に低かったため、それ以外のメリットや有害性の可能性を排除することはできなかった。

背景

喘息は、気道の炎症が原因となり、咳、喘鳴、呼吸障害につながる慢性疾患である。この炎症の原因にはさまざまな理由が考えられ、持続する理由もさまざまで、治療法も異なる。肺の感染症が原因の1つである可能性があり、マクロライド系抗菌薬は、これらの患者の症状を改善する方法として長期間使用されることがある抗菌薬の一種である。

質問にどのように答えたか

成人または小児喘息の患者に、マクロライド系抗菌薬またはプラセボを少なくとも4週間投与し、症状が改善、または、 喘息発作(「増悪」 と呼ばれる)を起こしにくくなるかどうかを検討した試験を検索した。2015年4月に文献検索を更新した。関連する研究すべてを見つけ出した後、入院を必要とする喘息発作、経口ステロイド剤による治療が必要な喘息発作、症状の程度、喘息コントロール状況、生活の質(QOL)、肺機能のいくつかの測定値、レスキュー吸入の必要性、重篤な副作用、血中および喀痰中の喘息活性測定値についての情報を引き出した。

わかったこと

前回の検索が2007年に行われてから新たに16件の試験が発表されたことを含め、23件の試験が見つかった。全体では、1500人をわずかに超える人々がマクロライド系抗菌薬またはプラセボのいずれかを投与された。研究の記述方法やデータの報告方法には多くの問題があったため、エビデンスの質が非常に低いと考えられ、ほとんどの結果に対する確信性が損なわれた。喘息の重症度、投与されたマクロライド系抗菌薬の種類および治療期間の長さにおいて、試験は全く異なっていた。

このレビューでは、検討した重要な結果のほとんどについてマクロライド系抗菌薬がプラセボよりも優れていることは示されなかった。しかし、症状の程度や肺機能の改善には何らかの効果があるかもしれないし、一部の人にとっては有益であったり、害を及ぼす可能性も否定できない。マクロライド系抗菌薬による重篤な副作用の報告はなかったが、16の研究では副作用が起きたかどうかは報告されていない。

訳注: 

《実施組織》 季律、星進悦 翻訳[2020.08.31]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD002997.pub4》