口腔内灼熱症候群の治療介入

レビューの論点

口腔内灼熱症候群(BMS)がある人の症状緩和にはどのような治療が役立つのか?

背景

BMSはよくみられる疾患で痛みを伴う。症状には口腔の灼熱感、乾燥感、不快感や、味覚の変化があり、医学的・歯学的に明白な原因がない。通常、BMSは持続的で苦痛が長期にわたるため、生活の質(QoL)が低下することがある。現在の科学研究では、神経損傷がBMSの根本原因となることが示唆されている。不安などの精神状態に対する薬剤や唾液の産生を増やす薬剤、保護層、口の表面に塗布する治療薬など、多くの治療法がある。

試験の特性

本レビューはCochrane Oral Healthが実施し、2015年12月31日時点で最新のエビデンスである。

我々は1995年~2015年に発表された23件の研究(評価対象1121名、83%が女性)を見出し、本レビューで選択した。21件の研究が短期的な症状緩和(最長3カ月)について評価し、4件の研究が長期的な症状緩和(3~6カ月)について評価した。17件の研究が副作用の発生に関する情報を報告し、7件がQoL指標を評価し、2件が味覚と乾燥感の変化について評価した。

本レビューで選択した以下の23の治療法は、すべてプラセボ(偽の治療)と比較した。抗うつ薬と抗精神病薬(2件の研究)、抗けいれん薬(1件)、精神安定剤(4件)、唾液分泌促進剤(1件)、サプリメント(12件)、指向性エネルギー波(1件)、物理的障壁(1件)、心理療法(1件)、口の表面に塗布する治療薬(5件)。

主な結果

短期的な症状緩和

我々は、以下について短期的な症状緩和のエビデンスを見出した。指向性エネルギー波(1件の研究、58名)、クロナゼパムという精神安定剤の局所投与(2件、111名、吐き出すまで口腔内に留めておき、抗けいれん薬としても作用する)、薄いプラスチックの舌カバー(1件、50名)、ガバペンチンという抗けいれん薬(1件、100名)。

短期的な症状緩和において、抗うつ薬、唾液分泌促進剤、飲み込むタイプの精神安定剤(クロナゼパム)の全身投与による変化はなかった。サプリメントや口の表面に塗布する治療薬が短期的な症状緩和をもたらすのかについて、明らかにすることはできなかった。

心理療法について評価した1件の研究では、短期的な緩和に関する報告はなかった。

長期的な症状緩和

我々は、以下について長期的な症状緩和のエビデンスを見出した。心理療法(1件の研究、30名)、トウガラシの洗口液(1件、18名)、クロナゼパムという精神安定剤の局所投与(1件、66名)。

長期的な症状緩和において、サプリメントや口の表面に塗布する治療薬による変化はなかった。

抗うつ薬、指向性エネルギー波、唾液分泌促進剤、抗けいれん薬、物理的障壁を評価した研究では、長期的な症状緩和について調べていなかった。

QoLの変化

指向性エネルギー波による短期的なQoLの改善を示すエビデンスはあるが(1件の研究、58名)、抗うつ薬、精神安定剤、サプリメント、物理的障壁による変化はみられなかった。長期的なQoLの変化について評価した研究はなかった。

味覚や乾燥感の変化

少数の研究で味覚や乾燥感の変化を評価したが、これらのアウトカムに対する治療効果を判断するにはエビデンスが不十分であった(長期的に評価した研究はない)。

副作用

副作用が起こりやすいのは以下の治療であった。抗うつ薬(めまいと眠気:1件の研究、37名)、αリポ酸(ALA)というサプリメント(他成分の併用を問わず。頭痛:2件の研究、118名。胃の不調:3件の研究、138名)。

エビデンスの質全般的に、評価した以下の治療について、我々が調べた短期的および長期的アウトカム(症状緩和、QoL・味覚・乾燥感の変化、副作用)に関するエビデンスの質は極めて低かった。抗うつ薬と抗精神病薬、抗けいれん薬、精神安定剤、唾液分泌促進剤、サプリメント、指向性エネルギー波、物理的障壁(質が低いと評価した副作用のエビデンスを除く)、心理療法、口の表面に塗布する治療薬。バイアスのリスクが低い研究はほとんどなかったため、BMSに対するあらゆる治療法の有効性について、証明することも反証することも現時点ではできなかった。

著者の結論: 

BMSは日常生活に支障を来す可能性があることから、有効な治療法を同定することは患者にとって重要である。バイアスのリスクが低い臨床試験の数が少ないため、BMSの管理においていかなる介入の使用も支持または否定するには、エビデンスが不十分である。有効な治療法を確立するには、方法を改善し、標準化したアウトカムを用いる臨床試験が必要である。今後の研究では、他の神経障害性疼痛に用いられる治療の作用やBMSの治療における心理療法の役割を評価することが求められる。

アブストラクト全文を閲覧
背景: 

口腔内灼熱症候群(BMS)は原因不明の口腔粘膜痛(舌、口唇、または口腔全体の灼熱痛や不快感)に用いられる用語である。一般集団の有病率は0.1%~3.9%である。BMS患者の多くは不安、うつ病、人格障害を示し、生活の質(QoL)が低下する。本稿は2000年および2005年に発表したレビューの更新である。

目的: 

あらゆる介入とプラセボを比較し、BMSがある人の症状緩和、QoL、味覚、乾燥感の変化における有効性と安全性を評価すること。

検索方法: 

Cochrane Oral Health's Information Specialistが以下のデータベースを検索した。Cochrane Oral Health's Trials Register(2015年12月31日まで)、コクラン・ライブラリのCochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL: 2015年第11号、2015年12月31日検索)、MEDLINE Ovid(1946年~2015年12月31日)、Embase Ovid(1980年~2015年12月31日)。継続中の試験について、ClinicalTrials.govおよび世界保健機関International Clinical Trials Registry Platformを検索した。電子データベースを検索する際、言語や発表日による制限はしなかった。

選択基準: 

BMSの人に対するあらゆる治療とプラセボを比較したランダム化比較試験(RCT)。主要アウトカムは症状緩和(疼痛/灼熱感)およびQoLの変化とした。副次的アウトカムは味覚、乾燥感、および有害作用における変化とした。

データ収集と分析: 

コクランの方法論に関する標準的な手法を用いた。アウトカムデータは短期(最長3カ月)または長期(3~6カ月)として解析した。

主な結果: 

23件のRCT(解析対象1121名、83%が女性)を選択した。介入は次のように分類した。抗うつ薬と抗精神病薬、抗けいれん薬、ベンゾジアゼピン系薬、コリン作動薬、サプリメント、電磁放射線、物理的障壁、心理療法、局所療法。

全般的なバイアスのリスクが低いと評価したのは1件のRCTのみで、4件は不明、18件は高リスクと評価した。有効性に関するエビデンスの全般的な質は、すべての介入とアウトカムで極めて低かった。

21件のRCTが短期的な症状緩和について評価した。以下による利益に関するエビデンスの質は極めて低かった。電磁放射線(1件のRCT、58名)、ベンゾジアゼピン系局所薬(2件のRCT、111名)、物理的障壁(1件のRCT、50名)、抗けいれん薬(1件のRCT、100名)。抗うつ薬、コリン作動薬、ベンゾジアゼピン系全身薬、サプリメント、および局所療法の有効性に関するエビデンスは、不十分で矛盾がみられた。心理療法による短期的な症状緩和について評価したRCTはなかった。

4件の研究が長期的な症状緩和について評価した。以下による利益に関するエビデンスの質は極めて低かった。心理療法(1件のRCT、30名)、カプサイシン口内洗浄剤(局所療法、1件のRCT、18名)、ベンゾジアゼピン系局所薬(1件のRCT、66名)。サプリメントやラクトペルオキシダーゼ口内洗浄剤による変化を示すエビデンスはなかった。抗うつ薬、抗けいれん薬、コリン作動薬、電磁放射線、および物理的障壁による長期的な症状緩和について評価したRCTはなかった。

7件の研究が短期的なQoLの変化を評価したがエビデンスの質は極めて低く、長期的な変化の評価はなかった。電磁放射線による利益が認められたが(1件のRCT、58名)、抗うつ薬、ベンゾジアゼピン系薬、サプリメント、および物理的障壁に関する知見は決定的でなかった。

副次的アウトカム(味覚および乾燥感の変化)については短期的な評価のみ行われたが、これらの知見も決定的ではなかった。

有害作用については、抗うつ薬によるめまいと眠気の増加(1件のRCT、37名)、αリポ酸による頭痛(2件のRCT、118名)と胃腸病(3件のRCT、138名)の増加を示す、極めて質の低いエビデンスがある。抗けいれん薬やベンゾジアゼピン系薬の有害事象に関するエビデンスは、不十分で矛盾がみられた。コリン作動薬、電磁放射線、心理療法に関する有害事象は、ほとんど、もしくはまったく報告されていなかった。物理的障壁や局所療法による有害事象は発生しなかった。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.1.27]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。
 CD002779 Pub3

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