救急科退院後の急性喘息のための吸入ステロイド

急性喘息は救急科(ED)来院の一般的な原因となる疾患であり、患者の大半が治療後退院します。一部患者は治療で明らかに奏功した後に退院して2週間以内に急性喘息を再発します。気道の筋肉を開くためにβ<sub>2</sub>刺激薬が用いられ、気道の炎症による腫脹を緩和するためステロイドが使用されます。ステロイドは吸入(ICS)するかまたは錠剤として飲み込みます(いわゆる経口ステロイド)。ICSは有害作用を低減し、経口ステロイドより直接的に気道に到達します。本試験レビューでは、急性発作の救急科での治療後、ステロイドの吸入および経口投与の併用が単独経口投与より優れているとするエビデンスが不十分でした。ICS単独投与の救急科退院後の軽度喘息発作に対する効果を裏づけるエビデンスは存在しますが、単独経口投与と同様に有用であるというエビデンスは不十分です。さらなる研究が必要です。

著者の結論: 

ED退院後の急性喘息に対し標準の全身性ステロイド療法にICS療法を併用した場合、付加的な利益を有するというエビデンスは十分に得られていない。ED退院後の軽度喘息患者に対する高用量のICS単独療法は経口ステロイド療法と同様有効であるというエビデンスが認められたが、信頼区間が広すぎて、同等の有効性であるという信頼性は得られていない。ED退院後の急性喘息治療にICS療法を実施すべきか否かを明らかにするため、さらなる研究が必要である。本レビューでは、経口ステロイドの投与コースが処方された場合にED退院後に通常のICS療法を中止する理由が示されなかった。

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背景: 

救急科(ED)で治療した急性喘息患者は退院後、吸入β<sub>2</sub>刺激薬および全身性副腎皮質ステロイド(薬)(以下、ステロイド)投与を受けることが多い。退院後の吸入ステロイド(ICS)の利用もまた、急性喘息後の患者のアウトカム改善に有効と思われる。

目的: 

ED退院後の急性喘息治療のアウトカムに対するICSの有効性を判断する。全身性ステロイドとの併用またはその代替薬として用いる場合のED退院後の急性喘息に対するICS療法の有効性を定量する。

検索戦略: 

EMBASE、MEDLINEおよびCINAHLデータベースをシステマティックに検索し、呼吸器系雑誌および会議議事録のハンドサーチにより補完する方法で、Cochrane Airways Review Group registerから比較臨床試験(CCT)を同定した。さらに、主要な著者および製薬企業と連絡をとり適格な試験を同定した。組み入れた試験の参考文献、既知のレビューおよび文書も検索した。2012年9月まで検索を実施した。

選択基準: 

ランダム化比較試験(RCT)および準RCTをともに組み入れた。患者がEDまたは相当の科で急性喘息治療を受け、ED退院後、経口ステロイドの併用薬または代替薬としてICS療法を受けた場合、当該試験を組み入れ対象とした。2名のレビューアが別々に、関連可能性、最終的な組み入れの可否および方法論的質について論文を評価した。

データ収集と分析: 

2名のレビューアが別々にデータを抽出するか、または著者が確認した。数名の著者および製薬企業が未発表のデータを提供した。Cochrane Review Managerソフトウェアを用いてデータを分析した。適宜、個別およびプールされた二値アウトカムをオッズ比(OR)または相対リスク(RR)と95%信頼区間(CI)で表した。適宜、個別およびプールされた連続アウトカムを平均差(MD)または標準化平均差(SMD)と95%CIで報告した。一次解析では固定効果モデルを用い、I二乗(I<sup>2</sup>)統計値を用いて異質性を報告した。

主な結果: 

12件の試験が組み入れ対象として適格であった。そのうち患者総数909名を含む3件の試験で、ICS+全身性ステロイド療法を経口ステロイド単独療法と比較していた。上記試験では経口ステロイド療法に併用したICS療法の利益は実証されなかった。ICS併用により再発率は低下したが、統計学的有意差に達しなかった(OR 0.68、95%CI 0.46~1.02、3 件の試験、N = 909)。さらに、入院を要する再発、QOL、症状スコアまたは有害作用について2群間に統計学的有意差は認められなかった。 患者総数1,296名を含む9件の試験では、ED退院後の高用量のICS単独療法と経口ステロイド単独療法とを比較した。再発率(OR 1.00、95%CI 0.66~1.52、4件の試験、N = 684)、入院回数または、副次アウトカムであるβ<sub>2</sub>刺激薬使用、症状または有害事象について、ICS単独療法と経口ステロイド単独療法の間に有意差は認められなかった。しかし、いずれかの投与の有意な劣等性を除外するにはサンプル・サイズが不十分であり、上記試験からは重度喘息患者が除外されていた。

訳注: 

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