人工呼吸器管理を受けた極低出生体重早産児での慢性肺疾患予防を目的とした、吸入による副腎皮質ステロイド投与と全身への副腎皮質ステロイド投与との比較

レビューの論点

本レビューの主要な目的は、出生体重1,500g以下、在胎32週以下で生まれて侵襲的人工呼吸を行っている乳児の死亡または気管支肺異形成症(修正在胎週数36週で酸素補給が必要な状態と定義)の予防において、生後1週間以内に開始した吸入による副腎皮質ステロイド(以下、ステロイド)投与と全身へのステロイド投与の効果を比較することである。

背景

呼吸のサポートを必要とする早産児は、しばしば気管支肺異形成症を発症する。肺の炎症が原因の一部と考えられている。ステロイドを経口または静脈から投与すると、この炎症を抑えることができるが、ステロイドの使用には重大な副作用が伴う。ステロイドの使用は、脳性麻痺(運動障害)や発達遅延と関連する。ステロイドを吸入することで、薬剤が直接肺に届くようになり、副作用が軽減される可能性がある。

研究の特徴

このレビューでは、早産児が人工呼吸を受けている間、ステロイドを吸入で投与された場合と、ステロイドを全身投与(静脈または経口)で投与された場合を比較した試験を対象とした。294人の乳児を対象とした2件の試験を対象とした。1件の研究では278人の乳児を対象とし、もう1件の研究では16人の乳児を対象とした。2017年の更新では、新しい研究は含まれなかった。

どちらの研究も助成金を受けていた。また、より大規模な研究は、関連企業からエアロチャンバー(吸入補助器)、ブデソニドとプラセボの定量吸入器の提供も受けていた。利益相反は認められなかった。

主な結果

全身へのステロイド投与と比較して、吸入によるステロイド投与が死亡や気管支肺異形成症といった主要アウトカムを予防するというエビデンスはなかった。吸入でステロイドを投与された乳児は、全身へのステロイドを投与された乳児と比較して、人工呼吸によるサポートや酸素の追加を必要とした日数が増加した。これらの結果はどちらの研究においても報告されていた。動脈管開存(胎児期の動脈シャントである動脈管が出生後に閉鎖しない状態)率は、吸入でステロイドを投与した群で増加した。吸入でステロイドを投与した群では、全身へのステロイド投与群に比べて高血糖の発生率が低かった。これらの副次アウトカムは、1件の試験(大規模試験)のみで報告された。7歳の時点で52名の小児を対象としたサブ解析群では、吸入でのステロイド投与群と全身へのステロイド投与群の間で長期追跡調査の結果に差はなかった。さらに少数の48名の乳児を対象にした、「7歳までに喘息と診断されたことがある」という評価項目は、吸入でのステロイド投与群が全身へのステロイド投与群に比べて有意に低いものであった。

エビデンスの質

GRADEでのエビデンスの質は、中等度~低度であった。

訳注: 

《実施組織》 小林絵里子、杉山伸子 翻訳[2021.10.27] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。《CD002058.pub3》

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