フェニルケトン尿症患者の食事へのアミノ酸であるチロシンの補充

レビューの論点

フェニルケトン尿症(phenylketonuria 、PKU)患者(診断時に食事療法を開始し、その後も食事療法を継続または緩和した人)において、低フェニルアラニン食と並行して、または低フェニルアラニン食の代わりにチロシンを補充することで、知能、神経心理学的状態、成長と栄養状態、死亡率、生活の質が改善されるという科学的根拠(エビデンス)を評価した。本レビューは以前報告されたコクランレビューのアップデート版である。

背景

フェニルケトン尿症は、遺伝性疾患である。フェニルケトン尿症の人は、食事から摂取されるフェニルアラニンを全く処理できないか、できても一部のみである。血中のフェニルアラニン値の上昇は、脳や神経損傷の原因となる可能性がある。フェニルアラニンが豊富な食品を避けた食事を続けることは難しい。フェニルケトン尿症患者は、アミノ酸であるチロシンの血中濃度が低くなる可能性がある。

検索日

本エビデンスは、2020年12月7日現在のものである。

研究の特性

本レビューでは、6~28歳のフェニルケトン尿症患者56例に対する3件の試験を同定した。試験は、フェニルアラニン制限食とチロシンまたはプラセボ(偽薬)補充を比較するもので、試験参加者はいずれかに無作為に割りつけられた。3件の試験とも治療群と対照群の期間が短く、本レビューで重要と考えられるアウトカムの一部が測定されていなかった。

主要な結果

摂取者の血中チロシン量は増加したが、その他のアウトカム指標には差がなかった。フェニルケトン尿症の人の食事にチロシンを日常的に加えるべきであることを示唆するエビデンスはない。より多くのエビデンスを提供するためには、さらなるランダム化比較試験が必要である。しかし、この領域は活発な研究分野ではないため、今後、このレビューを更新する予定はない。

エビデンスの質

本レビューで検討された3件の試験は、質が高かったものの、参加者は少数であった。

訳注: 

《実施組織》 厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2021.11.12] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD001507.pub4》

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