間欠性跛行への抗血小板薬

著者の結論: 

抗血小板薬は、ICを呈する患者の総死亡率および致死的な心血管系イベントの抑制に有益な効果がある。しかし、この患者群への抗血小板薬の投与はGI症状など有害作用の増加を伴うため、医療従事者と患者は、治療の利益だけでなく有害性にも注意する必要がある。大出血に対する抗血小板薬の効果については、さらに多くのデータが必要である。アスピリンをプラセボまたは別の抗血小板薬のいずれかと比較したときの有効性については、エビデンスが乏しい。チエノピリジン系抗血小板薬のエビデンスは特に切実であり、アスピリンとチエノピリジン系薬剤の効果を比較する多施設共同試験の実施が急務である。

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背景: 

末梢動脈疾患(PAD)はありふれた疾患であり、全身性粥状硬化症のマーカーのひとつである。間欠性跛行(IC)の症状を呈する患者は、心血管系イベント[心筋梗塞(MI)および脳卒中]のほか、心血管系死亡および総死亡のリスクが高い。

目的: 

間欠性跛行を呈する患者の死亡率(総死亡率および心血管系死亡率)ならびに心血管系イベントの抑制における抗血小板薬の有効性を検討する。

検索戦略: 

Cochrane Peripheral Vascular Diseasesのグループが、抗血小板薬とICに関する発表について、同グループのSpecialised Register(最終検索2011年4月)およびCENTRAL(2011年第2号)を検索した。また、関連性のある論文の参考文献リストも検索した。

選択基準: 

安定した間欠性跛行を呈する患者を対象に、経口投与の抗血小板薬をプラセボまたはその他の抗血小板薬と比較している二重盲検ランダム化比較試験(RCT)を選択対象とした。無症候性PAD(Fontaine分類I度)、Fontaine分類III度およびIV度のPADの患者、ならびに血管内または外科的介入を受けたかその予定の患者は除外した。

データ収集と分析: 

方法論的質、参加者、介入のほか、総死亡率、心血管系死亡率、心血管系イベント、有害事象、歩行可能距離(pain free walking distance)、血行再建術の必要性、肢切断、足関節上腕血圧比などのアウトカムについてデータを収集した。各アウトカムについて、統合リスク比(RR)または平均差(MD)と95%信頼区間(CI)を求めた。

主な結果: 

合計12件の研究(患者合計12,168例)を、本レビューの対象とした。抗血小板薬はプラセボと比較して、ICを呈する患者の総死亡率(RR 0.76、95%CI 0.60~0.98)および心血管系死亡率(RR 0.54、95%CI 0.32~0.93)を低下させた。総心血管系イベントの低下は統計学的に有意ではなかった(RR 0.80、95%CI 0.63~1.01)。試験2件(クロピドグレルとピコタミドをそれぞれアスピリンと比較)のデータから、アスピリン以外の抗血小板薬はアスピリンと比較して、総死亡率(RR 0.73、95%CI 0.58~0.93)および心血管系イベント(RR 0.81、95%CI 0.67~0.98)のリスクを有意に低下させることが明らかとなった。抗血小板療法はプラセボと比較して、胃腸症状(消化不良)(RR 2.11、95%CI 1.23~3.61)や治療中止に至る有害事象(RR 2.05、95%CI 1.53~2.75)など、有害事象のリスク上昇に関連していた。アスピリンと別の抗血小板薬を比較した試験の大出血(RR 1.73、95%CI 0.51~5.83)および有害事象のデータは限定的であった。血行再建に至る肢の悪化のリスクは、プラセボと比較して抗血小板薬の投与により有意に低下した(RR 0.65、95%CI 0.43~0.97)。

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