分娩誘発における器械的方法

妊娠第3半期間(妊娠24週以降)において、器械的方法を用いた分娩誘発の有効性と安全性をランダム化比較試験から検討した。子宮頸部(子宮の下端)を伸展するためのバルーンと、プロスタグランジンE2(PGE2)または低用量ミソプロストール(訳注:本邦未採用)またはオキシトシンとを比較した。

論点

分娩誘発は一般的に、妊娠を継続する利益より、リスクが上回る場合、または妊婦の希望により行われる。

分娩誘発の為の器械的方法は子宮頸管を進展させることにより、頸管熟化と陣痛発来(訳注:陣痛が始まること)を促す。これらは陣痛を起こすために用いられる方法として最も古いものの一つである。PGE2、ミソプロストール、オキシトシンといった薬物療法が、部分的に器械的方法にとって代わったのは、この数十年間のことである。

重要である理由

より多くの女性が分娩誘発を行うようになっており、その適応はしばしば緊急を要するものではない。これは分娩誘発の方法において、有効性を犠牲にしても、安全面をより重要視することを意味する。器械的方法は広く利用可能であり、安価で、子宮の過度の収縮(過強陣痛)のような副作用が少ない可能性があり、薬物療法に比べて利点があるかもしれない。陣痛が長すぎたり頻繁すぎたりすると、胎児が十分な酸素を受け取れなくなる可能性があるため、過強陣痛が起こらないことは児にとって安全といえる可能性がある。

得られたエビデンス

このレビューでは22,373例を含む、合計113のランダム化比較試験を対象とした。分娩誘発の適応は様々であった。データは21の比較と20のサブグループ比較に寄与した。全体的にエビデンスの質は非常に低度から中等度だった。症例数の不足のために、多くの比較において母体や児の深刻な病態について有意な違いは認められなかった。

6,619人を含む28試験でバルーンとPGE2腟錠とを比較しており、24時間以内の経腟分娩あるいは帝王切開について、ほとんどまたは全く違いを認めず、有効性は同等と示された。一方、バルーンは胎児心拍数の異常を伴う子宮過剰刺激、出生児の重篤な病気や死亡、新生児集中治療室(NICU)への入院を減少させる可能性があり、新生児にとってはより安全であるようだ。母体の重篤な病気や死亡、あるいは5分後のアプガースコア(訳注:新生児の状態を評価する指標)が7未満であること(訳注:新生児仮死)については有意を認めなかった。

1,818人を含む13試験でバルーンとミソプロストール腟錠とを比較しており、バルーンは胎児心拍数の異常を伴う子宮過剰刺激のリスクを減少させるが、帝王切開のリスクを高める可能性があった。24時間以内の経腟分娩、出生児の重篤な病気や死亡、母体の重篤な病気や死亡、5分後のアプガースコアが7未満であること、NICUへの入院については有意なを認めなかった。

3,178人を含む7試験では、バルーンとミソプロストール内服を比較していた。バルーンは24時間以内の経腟分娩を達成されないリスクを増加させ、おそらく帝王切開のリスクをわずかに増加させることから、ミソプロストール内服より効果が低いかもしれないことが示された。胎児心拍数の異常を伴う子宮過剰刺激、出生児の重篤な病気や死亡、母体の重篤な病気や死亡、5分後のアプガースコアが7未満であることおよびNICUへの入院については有意なを認めないため、安全性に関するデータは不明である。

結論

バルーンによる器械的誘発はおそらく、PGE2腟錠による分娩誘発と同様に効果的である。しかし、バルーンは児にとってはより安全性が高いように見える。この比較については更なる研究は不必要と思われる。

バルーンはミソプロストール内服と比べてわずかに効果が低いかもしれないが、児の安全性についてがあるかどうかは不明である。バルーンは低用量ミソプロストール腟錠と比べると有効性が低いかもしれないが、おそらく児に対してはより安全である。

今後の研究においては、児の安全性と母体の満足度について焦点を当てることが望ましい。

訳注: 

《実施組織》内藤未帆 増澤祐子 翻訳[2020.01.09]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどにお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review、Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。
《CD001233.pub3》

Tools
Information
Share/Save