超音波治療は静脈性(静脈瘤性)下腿潰瘍の治癒や症状の緩和に役立つのか?

静脈性下肢潰瘍とは何か?どのような人にリスクがあるのか?

静脈性下肢潰瘍はよくみられる創傷で、脚の静脈の損傷や閉塞によって生じる。これにより鬱血を引き起こし、脚の静脈で血圧が増加する。最終的には、こうした変化が皮膚や下層組織に損傷を与え、持続性創傷や潰瘍を形成する場合がある。こうした潰瘍は痛みや体液漏出を伴うことがある。また、感染を起こす場合もある。静脈性下肢潰瘍を発症するリスクがある人は、高齢者や可動性障害のある人である。静脈性下肢潰瘍は患者を苦しめ、費用が医療制度を圧迫する場合がある。

下肢潰瘍の治療になぜ超音波を使うのか?

静脈性下肢潰瘍の治療には、脚の血流を改善する圧迫包帯や、創傷包帯、抗菌薬等の投薬がある。超音波治療は追加的介入として行われることが時々あり、特に難治性で長期にわたる潰瘍に用いられる。音波が皮膚を通過し、組織下を振動させる。超音波が組織の治癒に作用する機序はよくわかっていないが、潰瘍周囲の血流に効果、もしくは悪影響を与える可能性がある。超音波治療により下肢潰瘍の治癒が向上するのかについて調べた。

分かったことは?

超音波が静脈性下肢潰瘍の症状の治癒や改善に役立つのかについて調べたランダム化比較試験(RCT)を、2016年9月に検索した。計969例を対象とした11件の試験を見出した。参加者の平均年齢層は59~70歳であった。女性の割合は55%~79%であった。8件の研究では静脈性下肢潰瘍の治療における超音波の有無を比較し、他の3件では超音波と偽超音波を比較した。11件中7件の研究バイアスのリスクが高く、3件は報告が少ないためバイアス可能性を評価できなかった。1件の研究バイアスのリスクが低かった。試験はあらゆる点で異なっており、例えば追跡調査期間は3週~12カ月で、超音波強度は高周波または低周波が用いられていた。超音波(高周波または低周波)により静脈性下肢潰瘍の治癒が増加するのかについて、このエビデンスでは不明である。1件の研究結果(337例)では、高周波超音波により痛みや皮膚の発赤などの有害事象が増加する可能性を示唆している(エビデンスの質は中等度)。低周波超音波を評価した2件の研究では、参加者の副作用について報告していなかった。また、高周波または低周波超音波が参加者の生活の質に影響するのかについては不明である。

エビデンスの質

我々が見出した大半の研究は参加者がさほど多くなく、追跡期間が短く、研究デザインに問題があり、誤った結果をもたらす可能性が高い。これらのバイアスのリスクにより、利用可能なエビデンスの質は低いと判断した。

この平易な要約は2016年9月現在のものである。

著者の結論: 

超音波治療(高周波または低周波)が静脈性下肢潰瘍の治癒を高めるのかについては不明である。バイアスのリスク不正確性により、大半のエビデンスの質を低い、または極めて低いと評価した。

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背景: 

静脈性下肢潰瘍は慢性で再発性の複雑な創傷で、65歳を上回る人に多くみられる。静脈性潰瘍は患者や医療制度に大きな負担となっている。包帯やストッキングなどの圧迫療法は有効な一次治療であるが、超音波は静脈性潰瘍の治癒に役立つ可能性がある。

目的: 

超音波治療では、超音波なしの治療よりも、静脈性下肢潰瘍が早く治癒するのかについて評価すること。

検索方法: 

以下について検索した。Cochrane Wounds Specialised Register(2016年9月19日検索)、Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL:コクラン・ライブラリ、2016年、第8号)、Ovid MEDLINE(In-Process & Other Non-Indexed Citations、MEDLINE Daily、Epub Ahead of Printを含む。1946年~2016年9月19日)、Ovid Embase(1974年~2016年9月19日)、EBSCO CINAHL Plus(1937年~2016年9月19日)。また、3つの臨床試験登録を検索し、選択した研究の参考文献リストや関連性のあるシステマティックレビューを調べた。言語、発表日、研究状況による制限は設けなかった。

選択基準: 

超音波ありと超音波なしを比較したランダム化比較試験(RCT)。超音波以外の対照治療として、通常治療、偽超音波、下肢潰瘍に対する他の治療法を適格とした。

データ収集と分析: 

2名の著者がそれぞれ検索結果を評価し、適格な研究を選択した。選択した研究の詳細はデータ抽出シートを用いて要約し、ダブルチェックした。欠測データについて試験の著者に問い合わせた。

主な結果: 

今回の更新で11件の試験を選択し、そのうち10件についてバイアスのリスクが高い、または不明と判断した。これらの試験には臨床的な異質性がみられ、追跡調査期間や超音波レジメンが異なっていた。9件の試験では高周波超音波について評価し、このうち7件では治癒した潰瘍に関するデータを、2件では潰瘍サイズの変化に関するデータのみを記載していた。2件の試験では低周波超音波について評価し、治癒した潰瘍に関するデータを報告していた。

超音波なしと比較して、高周波超音波が治癒した潰瘍の割合に影響するかについては、以下の評価したいずれの時点においても不明である。7~8週時点:RR 1.21、95% CI 0.86~1.71、6件の試験、678例、エビデンスの質は低くバイアスのリスク不正確性について一度格下げした。12週時点:RR 1.26、95% CI 0.92~1.73、3件の試験、489例、エビデンスの質は中等度で不正確性について一度格下げした。12カ月時点:RR 0.93、95% CI 0.73~1.18、1件の試験、337例、エビデンスの質は低くバイアスのリスク(不明)と不正確性について一度格下げした。

1件の試験(92例)では高周波超音波により4週時点で潰瘍部位の割合が大幅に縮小したことを報告したが、別の試験(73例)では7週時点で潰瘍サイズの変化に明白なはないと報告した。我々はこのエビデンスを、バイアスのリスク(概してアウトカム評価におけるブラインド化(盲検化)の欠如と症例減少)および不正確性により、「極めて低い」へ格下げした。

1件の試験データ(337例)では、高周波超音波により重篤でない有害事象のリスク(RR 1.29、95% CI 1.02~1.64、エビデンスの質は中等度で不正確性について一度格下げした)、および重篤な有害事象のリスク(RR 1.21、95% CI 0.78~1.89、エビデンスの質は中等度で不正確性について一度格下げした)が増加する可能性を示唆している。

低周波超音波が静脈性潰瘍の治癒に影響するのかについては、8週および12週の時点で不明である(RR 3.91, 95% CI 0.47~32.85、2件の試験、61例、エビデンスの質は極めて低くバイアスのリスク不正確性について格下げした)。

高周波超音波はおそらく生活の質にほとんど、もしくはまったく影響しない(エビデンスの質は中等度で不正確性について一度格下げした)。低周波超音波治療について有害作用、生活の質、および費用のアウトカムに関する報告はなかった。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.1.21]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 
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