早産児の神経発達障害を予防するための甲状腺ホルモン

早産児において呼吸窮迫症候群などの障害を予防する上で甲状腺ホルモンが有効であることを示す試験のエビデンスはない。甲状腺ホルモンは、中枢神経系、心臓や肺などの正常な成長および成熟に必要である。甲状腺ホルモンが不十分で生まれた小児は、重篤な精神遅延を発症する可能性がある。34週未満で生まれた早産児において誕生から最初の数週間に甲状腺ホルモンが低値の場合(一過性低サイロキシン血症)、この発達異常を引き起こすと考えられる。試験のレビューでは、早産児への甲状腺ホルモン投与が、不十分な甲状腺ホルモンを原因とする問題のリスクを低減する上で有効であるとするエビデンスは認められなかった。

著者の結論: 

本レビューでは、新生児の死亡率の低下、神経発達転帰の改善、呼吸窮迫症候群の重症度の低下を目的とした早産児への甲状腺ホルモン投与を支持しない。妊娠24〜25週の早産児でのベネフィットを示した1試験(van Wassenaer 1997)のデータ解析は、事前に指定されておらず、注意深く取り扱うべきである。

本レビューで組み入れた試験で対象とした乳児の数は少数であることから、新生児の転帰において臨床的に重要を検出するには、メタアナリシスの検出力に制限がある。

神経発達転帰における臨床的に重要を検出するための十分な参加者数を確保した今後の試験が必要である。           それらの試験では、妊娠27週未満で生まれた乳児など、甲状腺ホルモン治療からベネフィットを得る可能性が高い乳児を組み入れることを検討すべきである。

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背景: 

観察研究では、生後数週間の早産児における甲状腺ホルモンの一時的な低値(一過性低サイロキシン血症)と神経発達異常との間に関連性が認められている。甲状腺ホルモン療法によってこの疾患を予防できる可能性がある。

目的: 

先天性甲状腺機能低下症を伴わない早産児を対象に甲状腺ホルモン療法によって、有益性および有害性の観点から、新生児期の転帰および長期転帰に臨床的に重要な変化がもたらされるかどうかを評価すること。

検索方法: 

Neonatal Review Groupの標準的な検索方法を使用した。対象言語を英語とし、Oxford Database of Perinatal Trials、Cochrane Controlled Trials Register、MEDLINEの検索結果、クロスリファレンス、抄録、協議、シンポジウム会報、専門誌および雑誌を含む過去のレビューをハンドサーチした結果を組み入れた。

選択基準: 

ランダムまたは準ランダムに患者を割り付けたすべての試験のうち、早産児を対象に甲状腺ホルモン療法(治療または予防)と対照を比較した試験

データ収集と分析: 

主要な臨床転帰は、神経発達上の転帰と死亡率とした。相対リスク(RR)および重み付け平均差(WMD)を用いた試験の質の評価、データ抽出、データの統合は、Cochrane CollaborationおよびNeonatal Review Groupの標準的な方法で実施した。

主な結果: 

特定した9試験では、甲状腺ホルモン治療と対照試験とを比較していた。4件のランダム化試験(Chowdhry 1984, van Wassenaer 1997; Vanhole 1997; Smith 2000)と1件の準ランダム化試験(Amato 1989)が、選択基準を満たした。すべての試験で妊娠32週未満の早産児を組み入れていたが、甲状腺ホルモンを用いた治療の投与時期、投与量および投与期間は異なっていた。4試験ではチロキシン、Amato氏による試験(1989年)ではトリヨードチロニンを使用していた。神経発達について追跡したのは2試験のみであるが、方法論的には優れていた(van Wassenaer 1997, Vanhole 1997)。すべての試験で症例数は少なく、最も多いものはvan Wassenaer氏による試験(1997年)で乳児200例であった。

5試験のメタアナリシスにて、対照群と比較して甲状腺ホルモン治療を受けた乳児では、退院までの死亡率に有意は認められなかった(典型的RR 0.70、95% CI 0.42〜1.17)。2試験(van Wassenaer 1997; Vanhole 1997)のメタアナリシスにて、7〜12カ月目に実施されたBayley精神発達指数(MDI)または精神運動発達指数(PDI)に有意は認められなかった。van Wassenaer氏の試験(1997年)では、24カ月目のBayley MDIおよびPDI、5.7歳時の脳性麻痺発生率(RR 0.72、95% CI 0.28〜1.84)、死亡率および脳性麻痺(RR 0.70、95% CI 0.43〜1.14)、またはRAKIT IQスコア(WMD -2.10、95% CI -7.91〜3.71)に有意は認められなかった。1件の小規模な準ランダム化試験でトリヨードチロニン投与を受けた乳児では、吸気酸素濃度が低かったが、1件のランダム化試験でチロキシン投与を受けた乳児では低くならなかった。人工呼吸器を装着した期間および慢性的肺疾患の発症率は、早期に甲状腺ホルモン療法を受けた乳児で短縮および低下しなかった。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.1.21]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 
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