高血圧性疾患および関連する問題の予防を目的とした妊娠中のカルシウム補充

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ランダム化比較試験のエビデンスから、カルシウムのサプリメントの摂取が子癇前症や早産の予防につながり、妊婦が死亡するリスクや、妊娠高血圧に由来する重篤な問題が起きるリスクが低下する可能性が示されている。これは、食事によるカルシウムの摂取量が少ない女性に特に重要である。

子癇前症の症状は、高血圧および蛋白尿である。子癇前症は、世界的に妊婦や新生児の主な死因となっている。早産(37週未満の分娩)は高血圧によってしばしば引き起こされ、特に低所得国では新生児の死因の第1位を占める。24件の試験のレビューから、妊娠中の高用量(1日1 g以上)のカルシウム補充が(13件の試験、15,730人の女性を登録)、特に食事によるカルシウム摂取量が少ない地域の女性や子癇前症のリスクが高い女性において子癇前症リスクを低下させる安全で比較的安価な方法であるという質の高いエビデンスが見出された。さらに、カルシウムを補充する女性の方が、子癇前症に関連する死亡や、重篤な問題が生じる可能性が低いことが明らかになった。早産の可能性も低かった。有害事象は認められなかったが、補充の至適用量についてさらに研究が必要である。10件の試験(女性2234人)からは、比較的低用量で効果があることを示唆する、十分とは言えないエビデンスが得られたが、このうち6件の試験では、ビタミンD、リノール酸、抗酸化剤などが併用されていた。

食事からカルシウムを摂ることや高用量による補充が難しい場合でも、補充しないよりは、低用量のサプリメント(1日に500~600 mg)を摂ることを検討する方がよいと思われる。

著者の結論: 

カルシウム補充(≥1 g/日)は、特に食事によるカルシウムの摂取量が少ない女性の子癇前症リスクの有意な低下につながる。この治療効果は、小規模試験効果や出版バイアスのために過大評価されている可能性がある。このほか、カルシウム補充によって、早産が減り、「母体の死亡または重篤な罹病」の複合アウトカムの発生頻度が低下する。この有益性は、イベント発生の絶対数が少ないHELLP症候群のリスク上昇を上回ると考える。世界保健機関は、食事からのカルシウムの摂取量が少ない妊婦には1.5~2 g/日のカルシウム補充を推奨している。

低用量のカルシウム補充によって子癇前症が減少する可能性を示唆する証拠は限られたものであり、質の高い大規模試験によって確認する必要がある。その結果が出るまでは、食事によるカルシウム摂取量が少なく高用量の補充も困難である妊婦には、補充しないよりは、低用量のサプリメント(500~600 mg/日)を検討する方がよいと思われる。

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背景: 

子癇前症および子癇は、重篤な罹病および死亡の原因として高い頻度で認められる。カルシウム補充が、子癇前症のリスクを減少させ、早産の予防につながる可能性が示唆されている。

目的: 

妊娠中のカルシウム補充が、妊娠高血圧およびこれに起因する母子のアウトカムにもたらす効果を評価すること。

検索方法: 

Cochrane Pregnancy and Childbirth Group’s Trials Register(2013年3月28日)を検索し、可能な場合は、研究著者らにデータの追加を求めた。2014年5月に検索を更新し、レビューの「分類待ち」セクションにその結果を追加した。

選択基準: 

妊娠中の高用量(カルシウム1 g/日以上)または低用量のカルシウム補充と、プラセボまたはカルシウム非補充とを比較したランダム化比較試験(RCT)とした。

データ収集と分析: 

適格性と試験の質を評価し、データを抽出し、ダブル入力した。

主な結果: 

高用量のカルシウム補充(≥1 g/日)

このレビューでは14件の試験を採用したが、1件の試験でデータが提示されていなかった。メタアナリシスには、質の高い試験13件を採用した(女性15,730例)。高血圧症の平均リスクがカルシウム補充によって、プラセボに比べて低下した(12件の試験、女性15,470例:リスク比(RR)0.65、95%信頼区間(CI)0.53~0.81;I²=74%)。このほか、カルシウム補充に関連して、子癇前症リスクの有意な低下が認められた(試験13件、女性15,730例:RR 0.45、95%CI 0.31~0.65;I²=70%)。この効果は、食事によるカルシウム摂取が少ない女性(試験8件、女性10,678例:平均RR 0.36、95%CI 0.20~0.65;I²=76%)および子癇前症のリスクが高い女性(試験5件、女性587例:平均RR 0.22、95%CI 0.12~0.42;I²=0%)で最も大きかった。この試験成績は、小規模な試験効果または出版バイアス可能性があるため、慎重に解釈する必要がある。

母体の死亡または重篤な罹病の複合アウトカムは低下した(試験4件、女性9732例;RR 0.80、95%CI 0.65~0.97;I²=0%)。母体死亡率に有意は認められなかった(女性8312例を対象とした試験1件;死亡は、カルシウム補充群の1例に対してプラセボ群は6例)。カルシウム補充群では、HELLP(溶血、肝酵素上昇、血小板減少)症候群の発症リスクが異常に上昇したが(試験2件、女性12,901例;RR 2.67、95%CI 1.05~6.82;I²=0%)、イベントの絶対数はわずかであった(16例に対して6例)。

早産の平均リスクは、カルシウム補充群(試験11件、女性15,275例:RR 0.76、95%CI 0.60~0.97;I²=60%)および子癇前症の発症リスクが高い女性(試験4件、女性568例:平均RR 0.45、95%CI 0.24~0.83;I²=60%)で低下したが、新生児高度治療室の入院数に有意な減少は認められなかった。死産または退院前の乳児死亡のリスクに対する総合的な有効性は示されなかった(試験11件、乳児15,665例:RR 0.90、95%CI 0.74~1.09;I²=0%)。

1件の試験において、子宮内でカルシウム補充による曝露を受けた小児では、小児期の収縮期血圧が95パーセンタイル以上を来たす症例が減少することが示された(小児514例:RR 0.59、95%CI 0.39~0.91)。このカルシウム曝露を受けた小児のサブセットでは、12歳の時点における齲歯の減少が認められた(小児195例、RR 0.73、95%CI 0.62~0.87)。

低用量のカルシウム補充(<1 g/日)

低用量のカルシウム単独補充(4件)、あるいはビタミンD(3件)、リノール酸(2件)または抗酸化剤(1件)と併用した低用量のカルシウム補充を評価した試験10件(女性2234例)を採用した。ほとんどの試験が子癇前症のリスクが高い女性を登録し、バイアスのリスクが高いため、結果は慎重に解釈する必要がある。低用量のカルシウム補充により、子癇前症のリスクが有意に低下した(RR 0.38、95%CI 0.28~0.52;I²=0%)。さらに、高血圧症、出生時低体重および新生児集中治療室への入院が減少した。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2015.12.25] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。

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