早産児に対する長鎖多価不飽和脂肪酸の補充

レビューの論点:1 早産児に長鎖多価不飽和脂肪酸(LCPUFA)を補充した乳児用調製粉乳(以下、粉ミルク)を与えることが視覚機能と総合的な神経発達の改善につながるのか。背景:2 長鎖多価不飽和脂肪酸(LCPUFA)は脳と網膜の成熟に不可欠な脂肪酸の一種である。長鎖多価不飽和脂肪酸が高レベルで含まれている母乳とは異なり、乳児用粉ミルクのほとんどがごく少量を含むに過ぎないことが知られている。母乳で育った乳児の方が、粉ミルクで育った乳児よりも各種視機能の成熟度が高く、IQ(知能指数)も高いことがわかっている。母乳中の長鎖多価不飽和脂肪酸が比較的高値であることが、視機能の成熟度やIQが高くなることに貢献していると示唆されてきた。粉ミルクの一部には長鎖多価不飽和脂肪酸が、通常は魚油として添加されているものもある。試験の特性:1 本レビューでは、長鎖多価不飽和脂肪酸により栄養を強化した粉ミルクを授乳した早産児(妊娠37週未満で出生)の成長全般を、長鎖多価不飽和脂肪酸による強化なしの粉ミルクを授乳した早産児と比較した試験を解析した。主な結果:2 長鎖多価不飽和脂肪酸を補充した粉ミルクを授乳した早産児の成長が、長鎖多価不飽和脂肪酸による補充なしの粉ミルクを授乳した早産児の成長よりも優れているとは言えないことがわかった。エビデンスの質:3 総合的なエビデンスの質は低いと考えられた。

著者の結論: 

レビューの対象とした臨床試験では、登録した乳児が比較的成熟しており、健康な早産児であった。評価計画および方法論、補充した長鎖多価不飽和脂肪酸の投与方法と抽出源、対照とした調製粉乳の脂肪酸の組成が試験によって異なっていた。試験結果を統合したところ、長鎖多価不飽和脂肪酸を補充した調製粉乳を摂取した早産児には、長期的に明らかな利点および害のいずれも認められなかった。

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背景: 

長鎖多価不飽和脂肪酸(LCPUFA)が早産児に必須の栄養素であるかどうかには議論の余地がある。これは、早産児が脳と網膜の発達に必要な長鎖多価不飽和脂肪酸を十分に産生することができないためである。

目的: 

乳児用調製粉乳に長鎖多価不飽和脂肪酸を補充することが早産児にとって安全で有益であるかどうかを評価すること。主に関心のある領域は、早産児の視機能、発育と成長に対する補充の効果とした。

検索方法: 

Cochrane LibraryのCochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL、2016年2号)(2016年2月28日に検索)、MEDLINE Ovid(1966年から2016年2月28日まで)、Embase Ovid(1980年から2016年2月28日まで)、CINAHL EBSCO(Cumulative Index to Nursing and Allied Health Literature; 1980年から2016年2月28日まで)、MEDLINE In Process & Other Non-indexed Citations (1966年から2016年2月28日まで)をそれぞれ検索し、各論文の参考文献リストおよび学会抄録集を確認することによって臨床試験を特定した。さらにClinicalTrials.gov を検索した(2016年4月13日)。言語の制限は設けなかった。

選択基準: 

経腸栄養を受けている早産児を対象に、視機能の発達、神経機能の発達および身体的成長に対する長鎖多価不飽和脂肪酸を補充した調製粉乳の作用を(標準的な調製粉乳と比較して)評価したあらゆるランダム化比較試験生化学検査結果のみを報告した臨床試験を除外した。

データ収集と分析: 

著者全員が適格性と臨床試験の質を評価し、2名が別々にデータを抽出した。試験著者に連絡して追加情報がないかを確認した。

主な結果: 

早産児2,260例を対象とした臨床試験17件をレビューの対象とした。レビュー対象の試験全体でバイアスのリスクにばらつきが認められたが、そのうち10件の試験は評価領域の大半でバイアスのリスクが低かった。レビューの対象とした試験全体では、在胎週数(GA)中央値が30週、出生体重(BW)中央値が1300gであった。ドコサヘキサエン酸(DHA)濃度中央値は0.33%(範囲:0.15%〜1%)、アラキドン酸(AA)は0.37%(範囲:0.02%〜0.84%)であった。視力 生後1年間の視力は次のような方法で測定した。Teller Acuity Cards(縞視力カード)またはLea grating acuity test(リー・グレーティング検査)(8試験)、視覚誘発電位(VEP)(6試験)、網膜電図検査(ERG)(2試験)。ほとんどの試験では補充群と対照群との間に有意なはなかった。提示されたデータの形式のため、また評価方法が多様であったためにメタアナリシスを利用することができなかった。この結果をGRADEアプローチにより分析したところ、エビデンスの全体的な質は低かった。

神経機能の発達試験7件のうち3件が、生後さまざまな月齢時に、神経機能の発達に長鎖多価不飽和脂肪酸による利点が認められたと報告している。12カ月時(N=364)にBayley乳幼児発達検査を用いて評価した試験4件のメタアナリシスから、長鎖多価不飽和脂肪酸の補充による有意な効果は認められなかった(心的発達指標(MDI):平均偏(MD)0.96、95% 信頼区間(CI)−1.42 〜 3.34; P = 0.43; I² = 71% — 精神運動発達指標(PDI):MD 0.23、95% CI −2.77 〜 3.22; P = 0.88; I² = 81%)。さらに、3件の試験では、18カ月時(N = 494)にも神経機能の発達に対する長鎖多価不飽和脂肪酸の補充による有意な効果は認められなかった(MDI:MD 2.40、95% CI −0.33 〜 5.12; P = 0.08; I² = 0% — PDI:MD 0.74、95% CI −1.90 〜 3.37; P = 0.58; I² = 54%)。以上の結果をGRADEアプローチにより分析したところ、エビデンスの全体的な質は低かった。

身体的成長試験15件中4件がさまざまな月経後年齢(PMA)での長鎖多価不飽和脂肪酸の利点を報告している。一方、2件の試験から長鎖多価不飽和脂肪酸を補充した乳幼児の発育があまりよくないことが示唆された。1件では18カ月時に身長と体重のzスコアに軽微な減少があった。試験5件(N = 297)のメタアナリシスから、補充群の乳児では出産後2カ月時に体重と身長の増加が示された(体重:MD 0.21、95% CI 0.08 〜 0.33; P = 0.0010; I² = 69% — 身長:MD 0.47、95% CI 0.00 〜 0.94; P = 0.05; I² = 0%)。試験4件(N = 271)のメタアナリシスでは、生後12カ月(修正年齢)の時点で補充による成長アウトカムに対する有意な影響は認められなかった(体重:MD −0.10、95% CI −0.31 〜 0.12; P = 0.34; I² = 65% — 身長:MD 0.25、95% CI −0.33 〜 0.84; P = 0.40; I² = 71% — 頭囲:MD −0.15、95% CI −0.53 〜 0.23; P = 0.45; I² = 0%)。2件(N = 396)をメタアナリシスしたところ、生後18カ月の時点では、長鎖多価不飽和脂肪酸による体重、身長および頭囲への有意な影響は観察されなかった(体重:MD −0.14、95% CI −0.39 〜 0.10; P = 0.26; I² = 66% —身長:MD −0.28、95% CI −0.91 〜 0.35; P = 0.38; I² = 90% — 頭囲:MD −0.18、95% CI −0.53 〜 0.18; P = 0.32; I² = 0%)。この結果をGRADEアプローチにより分析したところ、エビデンスの全体的な質は低かった。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.1.21]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。
 CD000375 Pub5

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