呼吸困難の早産児に対して栄養素であるイノシトールを補助的に与えることによって、死亡や身体障害を抑えられる可能性がある。

レビューの論点

イノシトールによる栄養補助によって、呼吸窮迫症候群(RDS)の有無に関係なく、早産児の好ましくない転帰が減少するかどうか。

背景

イノシトールは細胞に不可欠な栄養素であり、母乳(特に早産の母親の母乳)に高い濃度で含まれている。呼吸窮迫症候群(RDS)の乳児においてイノシトール値が低下すると、それは疾患が重症化する徴候となる可能性がある。

試験の特性

結果が公表されているランダム化比較試験4件がレビューの選択基準を満たした。

結果

呼吸窮迫症候群の早産児に対するイノシトールによる栄養補助について、初期のエビデンスでは有望であることがわかった。栄養補助によって死亡率と脳内出血の発生率が減少し、目の障害にも重要な減少が認められた。イノシトールによる重大な有害作用は認められなかった。以上の暫定的な結果を確認するためにさらに研究が必要である。現在、米国でそのような研究が実施されているところである。

著者の結論: 

イノシトールによる栄養補助によって、新生児にみられる短期の重要な有害転帰が統計的に有意に減少し、この有害転帰の減少は臨床的に重要である。多施設共同の大規模ランダム化比較試験1件が現在進行中であり、同試験の結果によって本系統的レビューの結果の当否が決まる見込みが高い。

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背景: 

イノシトールは、培養中のヒトの細胞が成長して生存するために必要不可欠な栄養素である。イノシトールは、サーファクタント(肺表面活性物質)を構成する複数の成分の成熟を促し、胎児期や早期新生児期に重大な役割を果たすと考えられる。

目的: 

呼吸窮迫症候群(RDS)の有無に関係なく、新生児の有害転帰を低減するために早産児に栄養補助として与えるイノシトールの効果と安全性を評価すること。

検索方法: 

TheCochraneLibraryのCochraneCentralRegisterofControlledTrials(CENTRAL)、MEDLINE、EMBASE、CINAHL、Clinicaltrials.govおよびControlled-trials.comを2014年9月に検索した。また、検索により特定したランダム化比較試験(RCT)の参考文献、個人のファイル、Web of Scienceを検索した。

選択基準: 

早産児に対するイノシトールの栄養補助を、プラセボ対照群または非介入群と比較した全RCTをレビューの対象とした。対象とする評価項目は、新生児死亡、乳幼児死亡、気管支肺異形成症(BPD)、未熟児網膜症(ROP)、脳室内出血(IVH)、壊死性腸炎(NEC)および敗血症とした。

データ収集と分析: 

3名のレビュー著者がそれぞれ新生児の転帰に関するデータを抽出し、不一致があれば合意により解決した。結果は相対リスク(RR)、リスク差(RD)および有益な効果を得るまでの治療必要数(NNTB)(治療必要数上限)または有害な効果が出る治療必要数(NNTH)(治療必要数下限)として報告した。

主な結果: 

試験結果が公表されているRCTを4件、進行中のRCTを1件特定した。試験の質はさまざまであったが、イノシトールを複数回投与した全試験で中間解析が行われており、本レビューで対象とする評価項目に関するデータが得られた。このような試験では、新生児死亡数が有意に減少していることがわかった(3試験、新生児355例; typical RR 0.53、95%信頼区間(CI)0.31〜0.91; typical RD -0.09、95% CI -0.17〜 -0.03; NNTB 11、95% CI 6〜33)。乳児死亡数も減少していた(3試験、乳児355例; typical RR 0.55、95% CI 0.40〜0.77; typical RD -0.18、95% CI -0.27〜 -0.08; NNTB 6、95% CI 4〜13)。病期分類3期以上の未熟児網膜症が有意に減少しており(2試験、乳児262例; typical RR 0.09、95% CI 0.01〜0.67; typical RD -0.08、95% CI -0.13〜 -0.03; NNTB 13、95% CI 8〜33)、グレードIIを超える脳室内出血も有意に減少していた(3試験、乳児355例; typical RR 0.53、95% CI 0.31〜 0.90; typical RD -0.09、95% CI -0.16〜 -0.02; NNTB 11、95% CI 6〜 50)。敗血症と壊死性腸炎に有意な群間差は認められなかった。イノシトール(60または120 mg/kg)を単回投与した1件の試験(乳児74例)では、RRによれば有害転帰に有意差はなかったが、最終月経後36週時点では気管支肺異形成症のRDが大きくなった(RD 0.23、95% CI 0.03〜0.43; NNTH 4、95% CI 2〜33)。ただし、イノシトールは単回投与にとどまり、有意差があったのはRRではなくRDのみであったことから、この結果の解釈には注意を要する。進行中ではあるが、早産児を対象にイノシトールを複数回投与する大規模試験1件が確認されている。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2017.11.11]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 
CD000366 Pub3

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