早産児の成長を促進するための母乳の脂肪分補充

レビューの論点

早期産児に与える母乳に脂肪分を添加(補充)した場合、添加しない場合と比較して、大きな副作用を生じることなく、発育、体脂肪、肥満、心疾患、高血糖および脳の発達を改善するかどうかに関する科学的根拠(エビデンス)のレビューを実施した。

背景

早期産児は急速な発育がみられる時期である妊娠第3期に、栄養分を蓄える前に生まれてくるため、出生時の脂肪蓄積量が不足している。このため、早期産児が十分に成長・発達するためには、正期産児と比較してより多くの脂肪分を摂取する必要がある。脂肪は母乳のカロリーの約半分を占め、乳児の発育や脳の発達に役立っている。母乳は早期産児にとって多くの有益性(ベネフィット)があるが、成長や発達に必要な脂肪の含有量にばらつきがあり、十分な量が含まれていない場合がある。早期産児に脂肪分の少ない母乳を与えると、発育や発達に悪影響を及ぼす可能性がある。このため、母乳に脂肪分を添加することがある。通常は市販の脂質添加剤を少量(例:20 mL)の母乳に混ぜる。

研究の特性

早期産児14児を対象とした、エビデンスの質が極めて低い1件の試験をレビューに組み入れた。この検索結果は2019年8月時点のものである。

主要な結果

早期産児に与える母乳に脂肪分を添加した結果、短期間における体重や身長の増加割合、および頭部の成長に明らかな有用性は認められなかった。余分な脂肪が摂食障害のリスクを高めるというエビデンスはなかった。脂肪添加が成長、体脂肪、肥満、高血糖および脳の発達に及ぼす長期的な影響に関するデータは入手できなかった。また、副作用を評価するにはデータも限られていた。

結論

早期産児に与える母乳に脂肪分を添加した場合の有益性および有害性に関する質の高いエビデンスが不足しており、長期転帰も報告されていない。現在、母乳への脂肪添加は栄養強化の一環として実施されているため、今後の試験では、成長、体脂肪、肥満、高血糖および脳の発達に対する脂質成分の短期的および長期的な効果について評価すべきである。適正な脂肪添加量、組成、副作用および投与方法についても評価すべきである。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2020.12.28] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。《CD000341.pub3》

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