炎症性腸疾患患者の結腸癌および/または異形成を検出するための戦略

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著者の結論: 

結腸内視鏡検査による監視によって広範囲な結腸炎の患者の生存期間が延長することを示す明確なエビデンスはない。監視を受けた患者ではより早い病期で癌が発見される傾向にあり、それに応じてこれらの患者の予後は良好であることを示すエビデンスがあるが、リードタイムバイアスがこの見かけ上の利益に相当寄与した可能性がある。監視が炎症性腸疾患に伴う大腸癌による死亡リスクを低下させる上で有効であると考えられる間接的なエビデンス、ならびに費用対効果も受容できる範囲と思われる間接的なエビデンスがある。

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背景: 

長年にわたる潰瘍性大腸炎および結腸クローン病の患者では、一般集団と比較して大腸癌リスクが上昇している。本レビューでは、炎症性腸疾患患者において内視鏡で監視することによって結腸癌またはその前駆病変である異形成の早期発見が可能となり、寿命が延びることを示すエビデンスがあるかを評価する。

目的: 

潰瘍性大腸炎および結腸クローン病患者の大腸癌による死亡率を低下させる上での癌監視プログラムの有効性を評価する。

検索方法: 

関連性のある研究を同定するため、以下の検索戦略を用いた。1.1966年から2005年8月までのMEDLINEおよびCochrane Central Register of Controlled Trialsを検索した。医学用語のサブジェクト・ヘディングとして「Ulcerative Colitis(潰瘍性大腸炎)」、「Crohn Disease(クローン病)」または「Inflammatory Bowel Disease(炎症性腸疾患)」および「Surveillance(監視)」または「Cancer(癌)」を、データベースのキーワード検索に使用した。2.論文の参照文献リストのハンドサーチ。

選択基準: 

3名のレビューアが独自に非盲検で関連論文をレビューし、選択基準を満たすかどうかを判定した。各論文は、適格である、適格でない、または適格性を判定するための十分な情報がないに分類した。 レビューア間の不一致はすべて合意によって解消した。要約の形で発表された試験は、著者から完全で詳細なプロトコールと結果が入手できた場合にのみ、検討を行った。

データ収集と分析: 

適格な論文は二重にレビューし、主要な研究試験の結果を特別にデザインしたデータ抽出書式に要約した。各研究のコントロール群および監視群における大腸癌または他の原因で死亡した患者の割合は、生命表、生存曲線から、または可能な場合は提示されたデータから生命表を計算することによって導き出した。個別の研究ごとに同等の追跡期間について、原著論文からのデータを2×2の表に変換した(生存と死亡との比較×監視とコントロールとの比較)。 研究間に有意な異質性が存在するかどうかについて、X2検定を用いて調べた。これは比較的感度の低い検定であることから、P値が0.1未満の場合に統計学的に有意であるとした。統計学的な異質性がない場合は、プールしたデータに対して固定効果モデルを用いて評価した。2×2の表をCochrane‐Mantel‐Haenszel法で統合して要約統計量とし、相対リスク(RR)とその95%信頼区間で示した。

主な結果: 

潰瘍性大腸炎患者4664例から成る研究集団中の患者142例で構成されたコホート内の症例対照研究においてKarlen 1998aは、大腸癌のために死亡した患者40例中2例は少なくとも1回結腸内視鏡検査による監視を受けていたのに対し、対照群では102例中18例であった(RR 0.28、95% CI 0.07~1.17)ことを見出した。大腸癌のために死亡した患者40例中1例が2回以上結腸内視鏡検査による監視を受けていたのに対し、対照群では102例中12例であり(RR 0.22、95% CI 0.03~1.74)、反対に1回しか結腸内視鏡検査を受けていなかった患者では軽度の効果が認められた(RR 0.43、95% CI 0.05~3.76)。Choi1993は、監視を行った患者では有意に早期の癌が発見されたことを見出した。すなわち、監視群の19例中15例はデュークス分類のAまたはBの癌であったのに対し、非監視群では22例中9例であった(P=0.039)。5年生存率は監視群で発生した癌では77.2%であったのに対し、非監視群では36.3%であった(P=0.026)。監視群の患者19例中4例が大腸癌のために死亡していたのに対し、非監視群では22例中11例であった(RR 0.42、95% CI 0.16~1.11)。Lashner 1990は、監視群患者の91例中4例が大腸癌のために死亡したのに対し、非監視群では95例中2例であったことを見出した(RR 2.09、95% CI 0.39~11.12)。結腸切除術は監視群の方が少なく、33例対51例であり(P<0.05)、監視群の方が4年遅く(罹患から10年後)施行された。統合データの解析では、監視群患者110例中8例が大腸癌のために死亡したのに対し、非監視群では117例中13例であった(RR 0.81、95% CI 0.17~3.83)。

訳注: 

監  訳: 柴田 実,2007.10.5

実施組織: 厚生労働省委託事業によりMindsが実施した。

ご注意 : この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、Minds事務局までご連絡ください。Mindsでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、編集作業に伴うタイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。

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