鍼治療や関連する治療は喫煙者が禁煙するのに効果があるか?

禁煙しようとしている患者に、鍼治療、指圧治療、レーザー治療、電気刺激が有効であるというエビデンスを評価した。

背景

治療は伝統的な中国の治療法で、一般的に身体の特定部位の皮膚に細い針を突き刺して治療する。 針は手や電流(電気鍼療法)で刺激される。針を使わずに刺激する関連療法に、指圧療法、レーザー療法、電気刺激などがある。 針や指圧は治療中だけのものだが、留置針や指圧部位にテープで留められたビーズや種で継続的刺激が与えられる。 これらの治療の目的は、禁煙しようとしている人が経験する禁断症状を緩和することである。 本レビューでは治療と偽治療、または指導だけや、ニコチン置換療法(NRT) 、カウンセリングなどの他のコントロール条件とを比較した試験について検討した。 偽治療には、活性効果がないとされている身体の部位に針を刺したり指圧をしたりする方法や、皮膚に刺すことができない偽針を使ったり、不活性レーザーや電気刺激の装置を使うものなどがある。 これらのコントロールを使って、患者には治療を受けているのか否かを分からないようにしている。

禁煙している患者にとって有益性が持続するかどうかを評価するために、禁煙開始日から6カ月以上禁煙している患者の割合を調べた。 また禁煙開始日から6週間までの短期アウトカムも調査した。6カ月後の有益性のエビデンスは、患者が治療により永続的に禁煙できることを示すのに必要であると考える。

研究の特性

2013年10月までに公表された38件のランダム化比較試験を選択した。試験では、さまざまな異なる介入およびコントロール群を検討した。特定部位、治療の回数、継続的刺激の有無はさまざまであった。3件の試験(参加者393例)で、鍼治療群と待機者リストのコントロール群を比較した。19件 (参加者1,588例)では、鍼治療と偽鍼治療を比較したが、6カ月以上の長期フォローアップを実施したのは内11件だけであった。3件(参加者253例)で指圧治療と偽指圧治療を比較したが、長期フォローアップは実施していなかった。2件の試験でレーザー刺激を用い、6件(参加者634例)で電気刺激が用いられていた。総体的なエビデンスの質は中等度である。

主な知見

3件の試験で鍼治療群と待機者リストのコントロール群を比較し、長期禁煙が報告されたが、明確な有益性のエビデンスはみられなかった。偽鍼治療と比較した鍼治療については、わずかな短期有効性の弱いエビデンスがあったが、長期有効性はなかった。鍼治療はニコチン置換療法 (NRT)ほど効果はなく、カウンセリングより優れているわけでもなかった。指圧治療は短期間では偽指圧治療より優れているという限定的なエビデンスがあったが、長期効果に関するエビデンスは認められなかった。継続的刺激などの治療サブグループ解析では、耳介部位に継続的刺激を与えた試験で最も大きな短期効果が得られた。レーザー刺激を使用した2件の試験のエビデンスは一貫性がなかった。電気刺激を使用した7件の試験では、偽電気刺激と比べて有益性のエビデンスは示唆されていない。

治療関連する手技で禁煙に成功した患者数が増加したという一貫性のあるエビデンスは、本レビューにはみられなかった。しかし施術によっては、少なくとも短期間において、何もしないよりは良い場合があり、プラセボよりずっと効果がある可能性を除外できるほどの十分なエビデンスはない。それらの治療法は、最新のエビデンスに基づく介入ほど効果的でない可能性がある。適切に実施すれば安全である。

著者の結論: 

統合評価では短期効果可能性を示しているが、鍼治療、指圧治療、レーザー治療が6カ月以上の禁煙に継続的に有益であるとする一貫性のあるバイアスのないエビデンスはない。しかしながら、エビデンスの欠如および方法論的に問題があるということは、確固たる結論を導くことができないことを意味する。電気刺激は禁煙に効果がない。鍼治療、指圧治療、レーザ治療は一般的な介入で、適切に施術されれば安全であるので、良くデザインされたこれらの試験は正当化される。 しかしこれらの介入より、エビデンスに基づいた介入の方がより効果的である可能性が高い。

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背景: 

鍼と鍼に関連した技術は、それらがニコチン禁断症状を減らすかもしれないと信じられ、禁煙療法として広まっている。

目的: 

このレビューの目的は、鍼や関連した介入である指圧、レーザー療法、電気刺激が、無介入、偽の処置、あるいは他の介入と比較して禁煙に効果があるかを判定することである。

検索方法: 

Cochrane Tobacco Addiction Group Specialized Register (Cochrane Central Register of Controlled Trials (CENTRAL)、MEDLINE、 EMBASE、PsycINFOからの禁煙介入試験を含む)および AMED(2013年10月分)を検索した。またSino-Med、China National Knowledge Infrastructure、 Wanfang Data、 VIPの4つの中国のデータベースを2013年9月に検索した。

選択基準: 

禁煙のための鍼、指圧、レーザー療法、あるいは電気刺激を、無介入、偽治療、あるいは他の介入と比較したランダム化試験

データ収集と分析: 

集められた喫煙者のタイプ、介入とコントロールに使用した手技の性質、アウトカム指標、ランダム化の方法、フォローアップの完全性について、重複してデータが抽出された。

評価時期としては、最も初期の時点(6週以前)と、6カ月から1年後の間の時点が用いられた。各試験において、最も厳しい禁煙の定義、データがある場合は生化学的に確認された禁煙率が用いられた。フォローアップ不能者は、継続的な喫煙者として扱った。必要に応じて、固定効果モデルを用いてリスク比を統合し、メタアナリシスを実施した。

主な結果: 

38の研究が同定された。3件の試験では、信頼区間が広く、異質性のエビデンスが認められ(n = 393、リスク比 [RR] 1.79、95%信頼区間 [CI] 0.98 ~ 3.28、I² =57%)、長期禁煙に対して鍼治療は待機者リストのコントロール群より効果が あるとは認められなかった。 偽鍼治療と比較して、鍼治療の短期効果のRRは1.22(95%CI 1.08 ~1.38)で、長期効果は1.10(95%CI 0.86 ~ 1.40)であった。試験バイアスがないと判断されず、低い効果を示した大規模試験には、ファンネル・プロットの非対称性のエビデンスが認められた。試験間の異質性は、試験に用いられた手技では説明されなかった。鍼治療はニコチン置換療法(NRT)ほど効果はなかった。短期または長期において鍼治療が心理学的介入より優れているというエビデンスはなかった。短期アウトカムで指圧療法が偽指圧療法より優れているという限定的なエビデンス(3 試験、n = 325、RR 2.54、95% CI 1.27 ~ 5.08)があるが、長期効果を示唆する試験はなかった。 持続的耳介刺激などの介入試験の統合評価は、偽刺激と比べて短期的有益性を示唆した。(14試験、n = 1155、RR 1.69、95%CI 1.32 ~2.16)サブグループ解析では、持続的指圧療法の効果が認められた(7試験、n = 496、RR 2.73、95%CI 1.78 ~ 4.18)が、留置針による鍼治療では認められなかった(6試験、n= 659、RR 1.24、95%CI 0.91 ~ 1.69)。 長期フォローアップではCIに効果なしも含まれた(5試験、n = 570、RR 1.47、95%CI 0.79 ~ 2.74)。レーザー刺激を用いた2件の試験のエビデンスは、一貫性がなく統合できなかった。 電気刺激に関する統合エビデンスでは、電気刺激は偽電気刺激より優れているわけではないことが示唆されている(短期禁煙:6 試験、n = 634、RR 1.13、95%CI 0.87 ~ 1.46; 長期禁煙:2試験、n = 405、RR 0.87、95%CI 0.61 ~ 1.23)。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2015.12.20]   《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。

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