乳癌サバイバーのための在宅中心の複合的サバイバーシッププログラム

背景

乳癌を経験した女性において、効果的な複合的サバイバーシッププログラム(がん治療後のケア)に対する需要は増えている。本レビューは、過去10年間に乳癌に対する初回治療(手術、化学療法、または放射線治療、あるいはそのいずれかの組み合わせ)を終了した女性のQOL(生活の質)に対する、在宅での複合的サバイバーシッププログラムの効果について評価するために実施された。

試験の特性

該当する試験が26件あり、対照に対して在宅中心の複合的サバイバーシッププログラムを受けている患者は2,272例であった。在宅中心の複合的サバイバーシッププログラムの内容および提供手段は、レビューに含まれた試験によりさまざまであった。サバイバーシッププログラムでは、3つの特定できる構成要素、つまり、教育的要素(情報提供、自己管理に関する助言等)、身体的要素(運動訓練、筋力トレーニング等)、および心理的要素(カウンセリング、認知療法等)のうち、2つ以上の組合せることが可能であった。大半の試験では、通常のケア(定期的な経過観察による医療)を比較対照とした。数件の試験では、より低いレベルでまたは異なる種類の介入(ストレス管理、運動等)あるいは実質的な介入はないが接触時間等を同等とする経過観察を比較対照としていた。

その結果、乳癌サバイバーにおける在宅中心の複合的サバイバーシッププログラムは、QOL(生活の質)の改善に短期間の有益な効果を与える可能性があることが示された。数件では、在宅での複合的サバイバーシッププログラムによる症状および心理的アウトカムに対する効果について検討していた。在宅での複合的サバイバーシッププログラムを受けた乳癌サバイバーにおいて、疲労感、不眠症、および不安が軽減されたことが示されたが、その効果は短期間のものであった。うつ病、潮紅、および寝汗の症状に関しては、グループ間における差はみられなかった。在宅中心の複合的サバイバーシッププログラムを提供するためには、在宅中心の複合的サバイバーシッププログラムは、個人に対して提供するよりもグループに対して提供した方が効果が高い可能性があることがわかった。しかし、サバイバーシッププログラムの教育的、心理的、および身体的構成要素によるQOLにおける差を示すエビデンスは確認されなかった。

エビデンスの質

QOLに関する全試験のエビデンスの質は、中等度から非常に低い程度まで幅があったことから、いくつかの結果(QOLの改善等)にある程度確信をもつ一方で、他の結果(疲労感、不眠症、および不安の軽減等)についての確信は得られなかった。

著者の結論: 

この系統的レビューおよびメタ解析の結果から、乳癌サバイバーにおけるHBMSプログラムは、FACT-BおよびEORTC QLQ-C30によってそれぞれ測定される乳癌特異的なQOLおよび全体的なQOLの改善に、短期間の有益な効果を与える可能性があることが示された。また、HBMSプログラムは、介入直後の不安、疲労感、および不眠症の軽減に関連することが示された。いくつかのアウトカムに対する試験全体のエビデンスの質は中等度であったことから、その結果にある程度の確信をもつ一方で、他のアウトカムに対するエビデンスの質は低く、その結果についての確信は得られなかった。

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背景: 

乳癌患者の予後および生存率は、全世界において顕著な改善をみている。乳癌患者のがん治療後のケア(サバイバーシップケア)では、女性のQOL(生活の質)を最大限に高めることによってリハビリテーションや通常の生活へ支障なく移行できるように、効果的な在宅での多次元プログラムにさらに大きな重点が置かれるようになった。そうした状況から、乳癌の術後または術後補助療法の終了から10年未満あるいはその両方に該当する女性において、在宅中心の複合的サバイバーシッププログラムのQOLに対する効果を評価するために、入手可能な最良のエビデンスを要約することは重要である。

目的: 

乳癌サバイバーにおけるHBMS(在宅中心の複合的サバイバーシップ)プログラムによるQOLの維持または改善に対する効果を評価すること。

検索方法: 

2016年4月、Cochrane Breast Cancer Specialised Register、CENTRAL、PubMed、Embase、CINAHL Plus、PsycINFO、Web of Science、世界保健機関の国際臨床試験登録プラットフォーム(WHO ICTRP)、およびClinicalTrials.govを検索した。また、特定したすべての試験の参考文献リストを審査し、試験著者に連絡を取った。

選択基準: 

ステージ0から3の乳癌患者で、過去10年以内に癌の初回治療(手術または術後補助療法、あるいはその両方)を終了した女性を対象に、QOLの維持または改善に対するHBMSプログラムの効果を評価するランダム化比較試験(RCT)および準RCT。実際に行われた介入が教育的要素(情報提供、自己管理に関する助言等)、身体的要素(運動訓練、筋力トレーニング等)および心理的要素(カウンセリング、認知療法等)のうち2つ以上を含み、複合的なプログラムになっている試験を検討した。介入は自宅で実施することが認められているものとした。

データ収集と分析: 

著者2名が独立して選択基準に対する試験の適格性を評価し、品質評価を実施した後、選択した試験の関連データを抽出した。QOLを本レビューの主要アウトカムとした。

主な結果: 

RCT 22件および準RCT 4 件、患者2,272例を組み入れた。介入の構成要素を、「教育および心理的要素」「教育および身体的要素」「身体および心理的要素」「教育、身体および心理的要素」の4グループに分類した。大半の試験では、通常のケア(定期的なフォローアップによる医療)が比較対照として使用されていた。数件の試験では、より低いレベルでまたは異なる種類の介入(ストレス管理、運動等)あるいは実質的な介入はないが接触時間等を同等とする経過観察(attention placebo control)が比較対照の介入として使用されていた

QOLの評価には、FACT-B(Functional Assessment of Cancer Therapy-Breast)、EORTC QLQ-C30(European Organisation for Research and Treatment of Cancer Quality of Life Questionnaire C30)、Quality of Life (QoL) Breast Cancer、およびSF-36質問票を使用した。FACT-B およびEORTC QLQ-C30による測定の結果、HBMSプログラムによって、乳癌に特異的なQOLおよび介入直後の全体的なQOLが改善される可能性が示された[FACT-B:平均差(MD)4.55、95%信頼区間(CI)2.33~6.78、試験7件、患者764例。EORTC :MD 4.38、95%CI 0.11~8.64、試験6件、患者299例、エビデンスの質:中等度]。QoL-Breast Cancerまたは SF-36による測定の結果、QOLにおける差を示すエビデンスは得られなかった(QoL-Breast Cancer:MD 0.42、95% CI -0.02~0.85、試験2件、患者111例、エビデンスの質:非常に低い。身体的側面のスコアSF-36:MD 0.55、95%CI -3.52~4.63、試験2件、患者308例、エビデンスの質:低)。

介入後1~3カ月の時点で同様のパターンが確認された(FACT-B:MD 6.10、95% CI 2.48~9.72、試験2件、患者426 例。EORTC QLQ-C30:MD 6.32、95% CI 0.61~12.04、試験2件、患者172例。QoL-Breast Cancer:MD 0.45、95% CI -0.19~1.09、試験1件、患者61例)。4~6カ月および12カ月の時点では、グループ間においてQOLにおける差を示すエビデンスは得られなかった(4~6カ月:EORTC:MD 0.08、95% CI -7.28~7.44、試験2件、患者117例。SF-36:MD -1.05、95% CI -5.60~3.51、試験2件、患者308例。12カ月:EORTC:MD 2.04、95% CI -9.91~13.99、試験1件、患者57例)。

機能的状態はQOLの下位尺度の知見に組み込まれていた。HBMSプログラムによって、介入直後では対照と比較して不安が軽減される可能性が示されたが[Hospital Anxiety and Depression Scale(HADS)のMD -1.01、95% CI -1.94~-0.08、試験5件、患者253例、エビデンスの質:非常に低い]、その効果は介入後4~6カ月の時点まで持続しなかった。うつ病については、HBMSプログラムの直後(HADS:MD -1.36、95%CI -2.94~0.22、試験4件、患者213例、エビデンスの質:低)または追跡調査時に改善を示すエビデンスは得られなかった。HBMSプログラムによって、疲労(MD -1.11、95% CI -1.78~-0.45、試験3件、患者127 例、エビデンスの質:低)および不眠症(MD -1.81、95% CI -3.34~ -0.27、試験3件、患者18例、エビデンスの質:低)が軽減される可能性が示された。

レビューの対象とした試験のいずれにおいても、ケアサービスの必要性および利用、ならびにケアの費用について報告されていなかったため、HBMSプログラムの保健医療の利用および費用に対する影響は不明であった。8件の試験間においてアドヒアランスの評価方法にバラつきがあったことから、結果を統合してメタ解析を実施することができなかった。報告されたアドヒアランス率は58~100%となっており、結果を記述的にまとめた。

訳注: 

《実施組織》一般社団法人 日本癌医療翻訳アソシエイツ(JAMT:ジャムティ)『海外癌医療情報リファレンス』(https://www.cancerit.jp/) 栃木和美 翻訳、原文堅(四国がんセンター、乳腺科)監訳 [2017.11.11] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクラン日本支部までご連絡ください。 なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review、Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。《CD011152》

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