スウィーツ、キャンディ、チューインガムおよび練り歯磨きのような製品に用いられているキシリトールは小児と成人の歯の齲蝕(うしょく)を防ぐのに役立つか。

レビューの論点

このレビューは、スウィーツ、キャンディ、チューインガムおよび練り歯磨きのような製品に用いられる天然の甘味料であるキシリトールが小児と成人の歯の齲蝕(うしょく)を防ぐのに役立つかどうかを評価するために作成された。

背景

歯の齲蝕は、世界中の小児の90%までおよび大部分の成人が罹るよく見られる疾患である。歯の齲蝕は、QOLに影響を与え、何千名もの小児が病院で全身麻酔下での歯の治療を必要とする理由であることもある。しかしながら、それはフッ化物を含有する練り歯磨きで定期的に歯をみがいたり、砂糖の入った食品および飲料を少なくしたりするような口腔内の望ましい健康管理によって容易に予防し治療できる。齲蝕を引き起こす口腔内のやっかいものの細菌は、妨害するものがなければ増殖し歯の表面に付着し粘着性のあるフィルムを形成する。そうすると、砂糖を食べたり飲んだりした場合、フィルム内の悪玉細菌が酸を産生して歯の齲蝕を引き起こすことが可能である。

キシリトールは天然の甘味料で普通の砂糖(ショ糖)と同じほど甘い。砂糖に替る代替品を供給するのと同様に、キシリトールは唾液の産生を促し、口腔内の細菌の増殖を抑えて酸の産生を減らすような、歯の齲蝕の予防に役立つと考えられる他の特性を有する。

ヒトにおいては、キシリトールは鼓脹、膨満および下痢のような副作用を引き起こす可能性があることが実証されている。

試験の特性

Cochrane Oral Health Groupの著者らは既存の試験のこのレビューを実施し、エビデンスは2014年8月14日現在のものである。7969名の参加者がランダム化され(解析に含まれた5903名)、キシリトール製品またはプラセボ(キシリトールを含有しない代替品)を投与された、あるいは未治療である1991年から2014年までに発表された10件の試験を組み入れ、歯の齲蝕の総量を比較した。1件の試験は成人を組み入れ、他の試験は生後1カ月から13歳までの小児を組み入れた。検証されたキシリトール製品は、口腔内に保持し、舐める(ロゼンジ、舐める錠剤およびスウィーツ)かあるいは偽薬/おしゃぶりによってゆっくり放出される種類、ならびに練り歯磨き、シロップ、およびティッシュ。

主な結果

キシリトールを含有するフッ化物練り歯磨きを使用することによって、フッ化物単独の練り歯磨きに比較した場合、3年の期間にわたって小児の永久歯の齲蝕が13%減少することを示唆する一部のエビデンスが得られた。この期間にわたって、小児によって報告された副作用はなかった。確認された残りのエビデンスによって、他のあらゆるキシリトール含有製品が乳幼児、高齢者、小児、あるいは成人の歯の齲蝕を予防できるかどうか結論づけることができなかった。

エビデンスの質

入手可能な試験が少数のため、不明確な結果のため、そして実施された方法による問題点のため、この提示されたエビデンスは低いか非常に低い質である。

著者の結論: 

キシリトールを含有するフッ化物の練り歯磨きは、小児の永久歯の虫歯予防用のフッ化物単独の練り歯磨きに比較してより有効で、そのような練り歯磨き由来の関連有害作用は認められないことを示唆する一部の質の低いエビデンスが確認された。効果推定値は、バイアスのリスクが高いため、そしてそれが同じ母集団において同じ著者らによって実施された2件の試験に起因するという事実により、慎重に解釈すべきである。確認された残りのエビデンスは非常に低い質であり、他のあらゆるキシリトール含有製品が乳幼児、年長児、または成人において虫歯を予防することができるかどうか確認するには不十分である。

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背景: 

虫歯は大多数の人が罹るよく見られる慢性疾患である。キシリトールを摂取すると虫歯の予防に役立つと仮定されてきた。キシリトール製品の効果に関するエビデンスは明白なものではなく、それ故その有効性と安全性を確認するために入手可能なエビデンスを要約することが重要である。

目的: 

小児と成人の虫歯の予防用の種々のキシリトール含有製品の効果を評価すること。

検索戦略: 

以下の電子データベースを検索した: Cochrane Oral Health Group Trials Register (2014年8月14日まで)、 Cochrane Central Register of Controlled Trials (CENTRAL) (Cochrane Library、2014年第7号)、 MEDLINE via OVID (1946年から2014年8月14日まで)、 EMBASE via OVID (1980年から2014年8月14日まで)、CINAHL via EBSCO (1980年から2014年8月14日まで)、Web of Science Conference Proceedings (1990年から2014年8月14日まで), Proquest Dissertations and Theses (1861年から2014年8月14日まで).米国国立衛生研究所治験登録(http://clinicaltrials.gov)および進行中の治験用WHO臨床試験登録プラットホームを検索した。電子データベースを検索する場合、発表の言語あるいは日付に制限は設けなかった。

選択基準: 

小児と成人の虫歯に対するキシリトール製品の効果を評価するランダム化比較試験を組み入れた。

データ収集と分析: 

2名レビュー著者らは、電子検索の結果をそれぞれ選別し、データを抽出し、そして組み入れた試験のバイアスのリスクを評価した。可能な場合は欠測データまたは説明のために試験の著者らに連絡を試みた。連続値アウトカムとして、平均差と95%信頼区間(CI)を得るために平均値および標準偏差値を用いた。虫歯の減少率を要約するために、連続データを用い、予防分画(PF)および95%CIを算出した。二値アウトカムとして、リスク比(RR)および95%CIを報告した。メタアナリシスに組み入れたのは4件未満の試験であったため、固定効果モデルを用いた。メタアナリシスに4件以上の試験が存在するイベントにおいてはランダム効果モデルを用いる予定であった。

主な結果: 

総計5903名の参加者を解析した10件の試験を組み入れた。1件の試験はバイアスのリスクが低いと評価し、2件はバイアスのリスクが明確でないと評価した。残り7件はバイアスのリスクが高かった。

このレビューの主な結果は、2.5年から3年の使用期間にわたって、10%キシリトールを含有するフルオライド練り歯磨きが、フルオライド単独練り歯磨きと比較して虫歯を13%減少させることであった(PF -0.13, 95% CI -0.18 -(-0.08)、4216 名の小児を解析、質の低いエビデンス)。

バイアスのリスクと効果の推定値に関連した顕著な不確実性を有する規模の小さな単独試験から得られた小児に関する残りのエビデンスは、キシリトール製品による有益性を確認するには不十分であった。1件の試験で、1年間摂取された1日2.67gの低用量のキシリトールシロップと比較して、1日8gのキシリトールシロップが虫歯を58%減少させたと報告された(95% CI 33% - 83%, 94 名の乳幼児を解析、質の低いエビデンス)。

以下の結果は、キシリトールに関連した虫歯の増減と一致した95%CIを示した:小児において未治療と比較したキシリトールロゼンジ(非常に質の低いエビデンス);乳幼児において未治療と比較したキシリトール吸引錠(非常に質の低いエビデンス);乳幼児における対照錠(ソルビトール)と比較したキシリトール錠(非常に質の低いエビデンス);乳幼児における対照ティッシュと比較したキシリトールティッシュ(質の低いエビデンス)。

成人において対照ロゼンジと比較した場合のキシロトールロゼンジの効果を検討したのはわずか1件の試験のみであった。効果の推定値は、キシリトールと関連した虫歯の増減に一致した95%CIを示した。

4件では、いずれの介入による有害作用も認められなかったと報告された。2件の試験では、試験群間で有害作用の発生率が類似していたと報告された。残りの試験は、有害作用について言及しているが使用可能なデータを報告しなかったか、あるいは全然言及していないかのいずれかであった。有害作用は、口腔内疼痛、痙攣、鼓脹、便秘、膨満、および軟便または下痢などである。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.3.14]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。
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