MS患者の脳での静脈狭窄(CCSVI)の治療に対する一般的には「解放処置:liberation procedure」としてよく知られている処置

多発性硬化症(MS)は、神経系の炎症性疾患で、若い成人における神経学的な機能障害として最も高頻度にみられる原因です。ミエリンは神経の周囲を包み神経を保護する物質ですが、これが損傷されるため傷が付き傷あとのようなプラークができます。<br />MSは免疫が介在する病気と考えられており、自身の免疫システムが神経システムを攻撃します。現在の大半の治療はこの仮説に基づいたものです。<br /><br />しかし、新しい理論が最近提唱されており、それは、慢性脳脊髄静脈不全(CCSVI)と呼ばれる、中枢神経系を流れている静脈の血流障害がMSの原因の一部を担っているというものです。CCSVIは先天的なもので、このために鉄の沈着が起こり、免疫システムが中枢神経系を攻撃するようになりミエリンを損傷すると考えられています。CCSVIに対し提唱されている治療は、狭くなった(狭窄した)静脈を広げるバルーン血管形成術で、一般的には「解放処置:liberation procedure」と呼ばれています。この理論はインターネットを通して主に患者コミュニティで大きな注目を集め、メディアの煽動によりMS罹患者の期待がさらに高まることとなりました。関連性のある文献を検索しましたが、このレビューへの組入れに必要な方法論的質の基準を満たす研究は認められませんでした。<br /><br />現在、MSの人でのCCSVIに対する血管形成術の有効性および安全性を支持する、または支持しないエビデンスはありません。適切なデザインで頑健な研究が必要です。

著者の結論: 

現在、MSの人でのCCSVIの治療に対する経皮経管血管形成術の有効性および安全性を支持する、または支持しない高品質のエビデンスはない。適切なデザインのRCTにより支持されたエビデンスによって臨床診療に指針を示すべきであり、6件の進行中の臨床試験の完了時にエビデンスでのギャップを一部埋めることが可能かもしれない。

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背景: 

多発性硬化症(MS)は、若年成人での神経学的機能障害の主たる原因である。その病理発生に関し最も広く受け入れられている仮説は、免疫媒介性疾患であるということである。つい最近、慢性の静脈うっ血がMSの病理発生に重要な因子であるという仮説が提唱された。この概念は「慢性脳脊髄静脈不全(CCSVI)」と命名され、内頚静脈または奇静脈、またはその両方の狭窄を特徴とする。これらの狭窄が脳からの正常な血流を制限し、脳に鉄沈着を起こし最終的に自己免疫反応を引き起こすと示唆されている。CCSVIに対し提案されている治療は経皮経管血管形成術で、「解放処置:liberation procedure」としても知られており、脳血流を改善しMSの症状の一部を改善すると主張されている。

目的: 

MSの人でのCCSVIの治療に対する経皮経管血管形成術の効果を評価すること。

検索戦略: 

2012年6月までの以下のデータベースを検索した:Cochrane Multiple Sclerosis and Rare Diseases of the Central Nervous System Group Specialised Register、コクラン・ライブラリ2012年第5号中のCENTRAL、MEDLINE(1946年~)、EMBASE(1974年~)および論文の参考文献リスト。進行中の試験についてオンラインの試験登録簿も数件検索した。

選択基準: 

CCSVIを有すると診断されたMS成人を対象に経皮経管血管形成術の効果を評価しているランダム化比較試験(RCT)

データ収集と分析: 

検索により159件の参考文献を回収し、うち6件は進行中の試験であった。標題または抄録、もしくはその両方の評価に基づいて、本文で以下の調査の完全な報告をしている1件を除く全ての研究を除外した。しかし、この研究も選択基準を満たさなかったため、その後除外した。

主な結果: 

選択基準を満たすRCTはなかった。

訳注: 

監  訳: 相原 智之, 2014.3.14

実施組織: 厚生労働省委託事業によりMindsが実施した。

ご注意 : この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、Minds事務局までご連絡ください。Mindsでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、編集作業に伴うタイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。

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