HIVに感染している妊婦に対する微量栄養素の補給

著者の結論: 

すべてのHIV感染者の特定の微量栄養素欠乏症を修正するには十分ではないかもしれないと認識しつつも、過去の世界保健機関(WHO)の勧告に準じて、適切な食事による微量栄養素の摂取を促進し補助するため最善を尽くすべきである。

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背景: 

微量栄養素欠乏症は広く蔓延しており、HIV疾患の影響を悪化させる。微量栄養素の補給は、この負担を軽減させるのに有効かつ安全である。

目的: 

HIVに感染する妊婦および授乳婦ならびにその児における死亡率および罹病率を低下させるために、微量栄養素の補給が有効かつ安全であるかどうかを評価すること。

検索戦略: 

レビューは2005年に発行されてから3回、更新されている。本更新版(2011)の前のレビューでは、Cochrane HIV/AIDS Groupの検索法を利用し、微量栄養素の補給に関するランダム化比較試験(RCT)を同定するために、CENTRAL、EMBASE、PubMedおよびGATEWAYのデータベースを検索した。2011年のレビューでは、2011年7月にPubMed、EMBASEおよびCENTRALのデータベースを検索した。GATEWAYデータベースには2006年以降の学会抄録が含まれないため、エイズに限定した学会データベース、www.aegis.orgを検索すると共に、この研究分野に意欲的に取り組んでいる研究者および機関に問い合わせ、その後追加された未発表試験を同定した。

選択基準: 

HIV陽性の妊婦および授乳婦を対象に、死亡率、罹病率、妊娠アウトカム、免疫学的指標および身体計測指標に対する微量栄養素(ビタミン類、微量元素およびその組み合わせ)補給の有効性を、その他の栄養補助食品、プラセボまたは無治療と比較したランダム化比較試験(RCT)。栄養素補給の有害作用を記録した。

データ収集と分析: 

レビューア2名が独立して試験を選択し、標準化基準を利用してバイアスのリスクについて試験の質を吟味し、標準化書式を用いてデータを抽出した。不一致があった場合は、第三のレビューアが裁定者となった。

主な結果: 

初めのコクラン・レビューの2010年更新に含まれた試験3件にその後追加された試験1件を含め本更新とする。HIVに感染した妊婦および授乳婦を対象に、微量栄養素補給の利益に関して比較的大規模で適切な対照をおいたRCT4件が採択された。各試験は違う種数の微量栄養素補給を評価しており、4試験間を直接比較することも、解析することもできない。 この試験4件は1995年から2006年までに実施されたものであった。これらの試験はいずれもタンザニアの都市ダル・エス・サラーム(Dar es Salaam)にて同じ研究チームが、病院ベースのマタニティー・クリニックという都会の状況で実施したものであった。それぞれの試験で、妊娠12週~27週の妊婦がリクルートされた。サンプル・サイズは400~1,129の範囲であり、中央値は参加者1,000例であった。試験3件はプラセボ対照試験であった。各試験で、様々な介入が評価された。すなわち、ビタミンA、ビタミンA+マルチビタミン、マルチビタミンおよびプラセボ間の比較、セレンとプラセボの比較、亜鉛とプラセボの比較ならびにRDA(1日あたり摂取勧告量)マルチビタミンの複合投与とRDAマルチビタミンの単独投与の比較である。抗レトロウイルス療法(ART)を受けている女性はなかった。 複数の微量栄養素補助食品は、妊婦および児に対し多くの臨床的利益をもたらした。重大な有害作用は報告されなかった。 タンザニア人の妊婦では亜鉛補給による有意な臨床的利益は認められなかった。 妊娠中および妊娠後に投与したセレン補助食品は、母体のHIV疾患の進行を遅らせることも、妊娠アウトカムを改善することもなかったが、児の生存率を改善させ、母体の下痢罹病率を低下させるようである。 単一のRDAマルチビタミンの補給または複数のRDAマルチビタミンの補給を受けた場合、母体および児のアウトカムに差はなかった。 治療のため抗レトロウイルス療法をすでに開始している妊婦に微量栄養素補給を併用した場合の効果についてはエビデンスが不足している。 エビデンスレベルのグレード付けの前に、各試験のアウトカムについてGRADE基準での評価を実施し、各試験のデータおよび考えられるバイアスの評価を含めた。主として、別の状況における別の試験での結果の再現がないため、質の高いエビデンスが得られると評価された試験はなかった。

訳注: 

監  訳: 江藤 宏美,2012.7.24

実施組織: 厚生労働省委託事業によりMindsが実施した。

ご注意 : この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、Minds事務局までご連絡ください。Mindsでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、編集作業に伴うタイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。

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