ドライマウス症状に対する非薬物治療

レビューの論点

本レビューはコクラン口腔衛生グループのレビューアが実施し、ドライマウス(口腔乾燥)症状緩和のために唾液産生を促進する非薬物治療の効果を評価した。

背景

ドライマウスは男性の10%から26%、女性の10%から33%に発症すると推定されるよくみられる問題で、唾液産生の減少による場合とそうでない場合がある。ドライマウスの主な原因は、よく処方される薬剤の副作用、疾患(免疫系が唾液を産生する腺内組織を破壊するシェーグレン症候群など)、頭頸部癌の放射線治療である。

唾液は口腔内の粘膜に潤いを与え、口腔衛生を維持する。唾液があることで、発話が促され、歯間の食物残渣が洗い流され、害を与える可能性のある食べ物や細菌性の酸が中和され、味覚能力が高まり、通常は口腔内が潤滑される。唾液には食べ物を柔らかくし、咀嚼や嚥下を容易にする作用もある。唾液中の酵素は澱粉と脂肪の消化を開始させ、上皮成長因子などのその他の物質は、組織の成長、分化、創傷治癒を促進する。唾液中の抗菌物質、抗真菌物質および抗ウイルス物質は口腔微生物叢のバランスを取り、口腔感染を予防する一方、唾液中のミネラルによって歯のエナメル質を維持する。

鍼治療などの非薬物治療、軽度の電気刺激、レーザー、歯磨きおよびその他の刺激法を用いてドライマウス症状を改善する。

研究の特性

本レビューが根拠とするエビデンスは2013年4月16日時点のものである。

本レビューには9件の試験が選択された。合計366名の成人がこれらの試験に参加し、各試験の平均参加者数は40名、年齢は12歳から77歳であった。ドライマウスの原因は、4件の試験では口腔癌に対する放射線治療、3件の試験ではシェーグレン症候群、1件の試験では薬剤関連、その他の試験ではさまざまな原因を有していた。

選択された試験は、評価する介入によって3群に分類した。

1.合計153名が参加した5件の小規模な試験では鍼療法を評価した。

2.3件の試験では電気刺激装置を評価した。

3.1件の試験では電動歯ブラシを評価した。

主な結果

ドライマウス症状のある人を対象とした鍼療法の効果を評価した5件の試験は概して質が低かった。ドライマウス症状における差異を示したエビデンスはなかったが、鍼治療後1年間持続した唾液産生のわずかな増加のエビデンスがいくつかみられた。ドライマウスにおける差異を示すのに十分な参加者が組み入れられていなかったか、または本物の鍼と「プラセボ」鍼はいずれもある程度の効果がみられた可能性があった。鍼治療群では有害作用(、軽度で一時的な小さな打撲傷および疲労)がより多く認められた。

電気刺激装置の効果を評価した試験は、その実施および報告状況が不良で、ドライマウスまたは唾液産生産生のいずれにおいてもこれらの装置の効果の判定に十分なエビデンスは得られなかった。

電動歯ブラシと手動歯ブラシを比較した1件の小規模な試験でも、ドライマウスまたは唾液産生について差異がみられなかった。

選択されたいずれの試験でも、有効性の持続期間、生活の質(QOL)、患者満足度、または口腔衛生評価のアウトカムは報告されていない。

エビデンスの質

これらの試験は概ね質が低かった(低いおよび極めて低い)。

著者の結論: 

ドライマウス症状について鍼とプラセボ鍼との差異はみられないという質の低いエビデンスがあり、それが最も重要なアウトカムである。 これは、2件の試験に組み入れた参加者が有効性の可能性を示すには不十分であったこと、またはプラセボ鍼にある程度の利益がみられ、効果が無効になるバイアスが働いたことによる可能性がある。 ドライマウス症状に対する電気刺激装置の効果を判定するにはエビデンスが不十分である。 ドライマウス症状は、唾液産生が増加したときでも問題となることがよく知られているが、鍼療法を評価した試験のうちドライマウス症状を報告したのは2件の試験のみで、懸念すべき報告バイアスがみられた。 放射線治療後のドライマウス患者で鍼治療によって唾液産生がわずかに増加するという質の低いエビデンスがいくつかみられる。

シェーグレン症候群患者のドライマウス症状または唾液産生に対する電気刺激装置の効果を判定するにはエビデンスが不十分である。 報告された鍼治療の有害作用は軽度で持続時間が短かった。また、電気刺激による有害作用は報告されなかった。

アブストラクト全文を閲覧
背景: 

口腔乾燥は、口渇の主観的感覚である。口腔乾燥の主な原因は、一般的に処方される多くの薬剤の有害作用、疾患(シェーグレン症候群など)、頭頚部癌の放射線治療である。 鍼療法または弱い電気刺激などの非薬理学的方法が症状改善に用いられることがある。 

目的: 

ドライマウスを緩和するための唾液産生を促進する非薬理学的介入の効果を評価すること。

検索方法: 

次に挙げるものを検索した:Cochrane Oral Health Group’s Trials Register(2013年4月16日まで)、Cochrane Central Register of Controlled Trials (CENTRAL) (The Cochrane Library 2013, Issue 3)、 MEDLINE via OVID (1948年~2013年4月16日まで)、 EMBASE via OVID (1980年~2013年4月16日まで)、 AMED via OVID (1985年~2013年4月16日まで)、 CINAHL via EBSCO (1981年~2013年4月16日まで)、CANCERLIT via PubMed (1950年~2013年4月16日まで)。また、The meta Register of Controlled Clinical Trials (www.controlled-trials.com) and ClinicalTrials.gov (www.clinicaltrials.gov)を検索し、進行中および完了した試験を同定した。 選択した研究の参考文献一覧および関連するレビューも検索した。使用言語および公開状況について制限はしなかった。

選択基準: 

ベースライン時にドライマウスの症状がみられた参加者を対象とした、ドライマウス治療に対する非薬理学的介入の並行群間ランダム化比較試験を選択した。

データ収集と分析: 

少なくとも2名のレビュー著者が選択された各試験の適格性を確認し、バイアスのリスクを評価し、パイロットデータ抽出フォームを用いてデータを抽出した。 連続アウトカムの平均差(MD)、95%信頼区間(CI)またはアウトカムの評価に異なるスケールが用いられた場合は、95%CIと標準化平均差(SMD)を算出した。 介入の有害作用に関するデータ抽出を試みた。 データが欠測または不明確であった場合、研究を実施した著者に連絡を取り、詳細情報の入手を試みた。

主な結果: 

ドライマウスに対する非薬理学的介入のレビューには9件の試験(合計366名の参加者がランダム化された)を選択し、3つに分類して比較した。8件の試験は少なくとも1つのドメインでバイアスのリスクが高いと評価され、その他の試験はバイアスのリスクが不明確であった。

5つの小規模試験(放射線治療後にドライマウスが認められた計153名の参加者)では、鍼治療をプラセボと比較した。4件の試験はバイアスのリスクが高いと評価され、1件の試験ではリスクが不明確であった。2件の試験で、メタアナリシスに適した形式でアウトカムデータが報告された。これら2つの試験(参加者70名、エビデンスの質:低い)からプールされた推定値では、ドライマウスの症状で鍼治療群と対照群との差異がみられず(SMD -0.34、95% CI -0.81~0.14、p値0.17、I(2) =39%)、信頼区間はドライマウス症状の減少と増加の可能性のいずれも含んでいた。鍼治療群では有害作用(軽度で一時的な小さな打撲傷および疲労)がより多く認められた。 4~6週の治療終了時に安静時唾液産生量(UWS)のわずかな増加が認められ(3試験、参加者71名、エビデンスの質:低い)(MD 0.02 mL/分、95% CI 0~0.04、 p値0.04、I(2)=57%)、この利益は12カ月の追跡評価時でも持続していた(2試験、参加者54名、エビデンスの質:低い)(UWS、MD 0.06 mL/分、95% CI 0.01~0.11、p値0.03、 I(2)=10%)。 刺激時唾液産生量(SWS、3試験、参加者71名、エビデンスの質:低い)のアウトカムについて、鍼治療群に利益がみられ(MD 0.19 mL/分、95% CI 0.07~0.31、p値0.002、I(2) =1%)、効果は12カ月の追跡評価時にも持続していた(SWS MD 0.28 mL/分、95% CI 0.09~0.47、p値0.004、 I(2)=0%)(2試験、参加者54名、エビデンスの質:低い)。

いずれもバイアスのリスクが高い小規模な2件の試験では、シェーグレン症候群患者(計101名の参加者)を対象として電気刺激装置とプラセボの装置の使用を比較した。 同じくバイアスのリスクが高いさらなる試験では、放射線治療歴のある参加者のさまざまなつぼで鍼様の電気刺激を比較した。 これらの試験ではドライマウスのアウトカムは報告されなかった。 1件の試験では、4週間の治療期間終了時に、UWSまたはSWSのアウトカムにおいて電気刺激およびプラセボに差異はみられなかった(これらのアウトカムに対するデータの質は極めて低い)。 有害作用は報告されなかった。

バイアスのリスクが高い1件の試験では、電動歯磨きと手動歯磨きとの刺激作用を比較したが、UWSまたはSWSのアウトカムに差異はみられなかった。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2016.1.9]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。

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