嚢胞性線維症患者におけるビタミンE補充

レビューの論点

目的は、嚢胞性線維症患者にビタミンE欠乏症による健康上の問題が発生する頻度に対して、ビタミンE補充(投与量は問わず)にどのような効果があるかを検証することであった。

背景

嚢胞性線維症患者の約85%~90%が、膵臓で十分な酵素を作り出せず、食物を消化する際に脂質を吸収できない。 また、これらの患者では脂溶性ビタミンA、D、EおよびKの吸収に問題がある可能性が高い。ビタミンEの値が低すぎると、神経系、血液障害、記憶や思考能力の問題を引き起こす場合がある。

検索日

2014年8月30日時点でのエビデンスを最後に検索した。

研究の特性

本レビューでは141例の参加者を対象とした4試験を同定した。これらのうち2試験では小児(6カ月~14.5歳)を対象としていたが、他の2試験では参加者の年齢は明記されていなかった。 試験に参加した患者は、異なる剤形のビタミンEサプリメント(水溶性または脂溶性)、プラセボ(薬剤を含んでいない物質)またはサプリメントなしを受けた。 これらの試験では、各患者の治療はランダムに選択したとされていたが、1試験では、患者を異なる群に分けたと記載されていたのみであった。

主な結果

3試験では、ビタミンE値が補充後に改善したと示されていたが、バイアスのリスクが考えられるため、結果は慎重に解釈すべきである。 ビタミンE欠乏症に関連する障害を報告している試験はなかった。 試験ではサプリメントの剤形や投与量が異なっていたため、結果を統合し、それを嚢胞性線維症の幅広い集団に適用することが困難であった。しかし、結果によると、ビタミンE補充によって嚢胞性線維症患者のビタミンE値が改善され、ビタミンE欠乏症による問題を避けられるかもしれない。

今後予定される試験では、特に膵酵素やビタミンEサプリメントを用いて治療中の患者を対象として、ビタミンEの状態、肺機能および栄養状態などのより明確なアウトカムを検証すべきである。 それらの試験ではまた、最大限の臨床的有効性を達成するのに必要なビタミンEの最適な用量を検証することもできると思われる。

エビデンスの質

結果に影響を及ぼさないようにするため、試験に参加した患者の誰がサプリメントまたはプラセボを受けたかわからなかった。ただし、サプリメントを摂取したか、何も摂取してないかはわかっていた。 全ての患者がいずれかの群に同じ確率で入るように試験の大半が計画されていたかどうか、入手した情報からはわからなかった。 また、患者がどの群に入るかを患者が予め推測できたかどうかわからなかった。試験に参加した全ての患者について報告された結果があるかどうか、患者が試験から脱落した理由があるかどうか、不明であった。 これらの事実が結果の信頼性に影響を与えるかどうかわからない。

著者の結論: 

ビタミンE補充は嚢胞性線維症患者におけるビタミンE値を改善させたが、試験にはバイアスのリスクがあった。この治療法に関するその他の有益性について結論を導く上で、興味深いその他のアウトカムに関するデータは入手できなかった。

将来、ビタミンEの状態、肺機能および栄養状態などのより明確なアウトカム指標を検証するため、特に腸溶性膵酵素やビタミンEを含むサプリメントで治療中の患者を対象とした大規模な試験が必要である。今後予定される試験ではまた、最大限の臨床的有効性を達成するのに必要なビタミンEの至適用量を検証すると思われる。

アブストラクト全文を閲覧
背景: 

嚢胞性線維症患者では、ビタミンEなどの脂溶性ビタミン欠乏症のリスクが増加する。ビタミンE欠乏症は、溶血性貧血、小脳性運動失調および認知障害などの多くの症状を引き起こす可能性がある。ビタミンE補充は、嚢胞性線維症で広く推奨されており、この欠乏症を改善させることを目的としている。

目的: 

嚢胞性線維症患者におけるビタミンE欠乏症の発症頻度に対するビタミンE補充の効果を評価すること。

検索戦略: 

Cochrane Group’s Cystic Fibrosis Trials Registerを検索し、登録簿の検索中に同定されなかった継続中の臨床試験について、国際試験登録簿も検索した。

登録簿の最終検索日は、2014年2月10日であった。

国際試験登録簿の最終検索日は、2014年8月30日であった。

選択基準: 

投与量や投与期間に関わらずビタミンEサプリメントのあらゆる剤形とプラセボまたはサプリメントなしとを比較したランダム化比較試験(RCT)および準ランダム化比較試験。

データ収集と分析: 

2名の著者が各試験(公表済みの情報)のアウトカムデータを抽出し、選択した各試験のバイアスのリスクを評価した。

主な結果: 

総計141例の参加者を対象とした4試験がレビューに選択され、これらのうち2試験は小児(6カ月~14.5歳)を対象とし、その他の2試験では参加者の年齢が明記されていなかった。すべての試験では、ビタミンEの剤形および用量が異なっており、治療期間もさまざまであった(10日~6カ月間)。2試験では、脂溶性と水溶性の剤形のサプリメントとサプリメントなしとで、同じ試験の異なる群で比較していた。3件目の試験では水溶性の剤形とプラセボ、4件目の試験ではビタミンEの脂溶性の剤形とプラセボを比較していた。

1カ月、3カ月および6カ月時点で、水溶性ビタミンEにより、対照群と比較して血清ビタミンE値が有意に改善され、2試験における1カ月時点での平均差は17.66(95%信頼区間10.59~24.74)、1試験における3カ月時点での平均差は11.61(95%CI 4.77~18.45)、1試験における6カ月時点での平均差は19.74(95%CI 13.48~26.00)であった。1カ月時点で、脂溶性ビタミンEにより、対照群と比較して血清ビタミンE値が有意に改善され、2試験における1カ月時点での平均差は13.59(95%CI 9.52~17.66)であった。3カ月時点での結果は不明確であり、1試験における平均差は6.40(95%CI -1.45~14.25)であった。

いずれの試験においても、本レビューの主要アウトカムであるビタミンE総脂質比やビタミンE欠乏症の罹患率、副次アウトカムである肺機能や生活の質に関する報告はなかった。水溶性ビタミンEとプラセボとを比較した1試験でのみ、副次アウトカムである成長および栄養状態(体重)の報告があったが、効果推定に関する不正確性のために結果は不明である。

選択した試験では、本レビューのエビデンスの質の基となるランダム化や盲検化の詳細が限定的である。これらの試験では、異なるバイオアベイラビリティの剤形を不均一に混合して用いていたことから、嚢胞性線維症の幅広い集団に対してデータを一般化することに制限がある。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2016.1.9]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。

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