慢性腰痛に対する超音波治療

超音波は振動を使い熱とエネルギーを棘筋、靭帯、腱および骨を含む腰の部位に送る治療である。その目標は疼痛を緩和し、回復を早めることである。慢性腰痛は12週間を超えて続く腰の痛みのことである。

レビューの論点:超音波は慢性腰痛治療に対して安全で効果的な治療なのか?

超音波を他の治療と比較したランダム化比較試験(RCT:研究の一種))を探した。これらの研究では、すべての患者が慢性「非特異的」腰痛の成人(18歳以上)であった。慢性”非特異的腰痛”は12週を超えて続く原因のわからない腰痛のことである。

比較治療には運動、電気的治療、脊椎マニピュレーションおよび「プラセボ治療」が含まれた。プラセボ治療は「ダミー治療」とも呼ばれている。それらは超音波機器の電源を切って超音波を行うような実際の治療効果のない治療であった。

これらの研究で超音波治療を受けた患者は、主として6〜18個の超音波治療のセッションを受けた。

超音波が疼痛、生活の質、患者満足、そして仕事を含む日常生活の普段の活動を行う能力を改善するかどうか確かめることを目的とした。

背景:

慢性腰痛は、世界中の患者が普段の活動を行う時によくみられる疼痛と障害の原因である。慢性腰痛のために、しばしば患者は病院に受診することになり、生活習慣が変化し、さらに休職することさえある。

超音波治療は腰痛治療に広く使用されている。患者が超音波治療を受ける場合、医療提供者は手動機器を腰の上の皮膚にこすり付けて使用する。その機器は皮膚を通して振動を起こす。その目的は、皮下の部位へ熱とエネルギーを送り、疼痛を緩和し回復を早めることである。しかし、超音波が安全で効果的な治療かどうかは明らかでない。

研究の特性

2013年10月までに公表された研究(RCT)を検索した。慢性腰痛の治療を受けた総計362例の成人患者からなる7つの小規模研究を確認した。これらの研究のすべての患者は「非特異的腰痛」を有していた。

大部分の患者は、疼痛の重症度と日常生活を行うための能力に関して、軽度から中等度の腰痛が認められた。

すべての研究は「二次的ケア」として行われた。つまり、すべての患者は治療前に医師もしくは他の医療従事者によって評価されてきた。

このレビューにおける研究では、超音波を他の治療と比較した。

大部分の研究は治療された患者に対して短期間の追跡を行っただけであった。つまり、患者はたった数日もしくは数週間しか追跡されなかった。理想的には、慢性腰痛治療の研究は、数か月もしくは数年間患者を追跡すべきである。

営利目的で資金提供された研究は報告されなかった。

主な結果

超音波が腰痛に対する有効な治療であるという納得のいくエビデンスを見出せなかった。超音波が疼痛もしくは生活の質を改善するというような質の高いエビデンスはなかった。

超音波が腰関連機能、すなわち腰を使う能力を改善する可能性があるといういくつかのエビデンスを見出した。しかし、これらの効果はとても小さく、それらは患者の生活に何の変化ももたらさないであろう。

このレビューにおける研究では、傷病期間の超音波治療の安全性もしくは超音波治療に関連する有害事象の情報を得られなかった。

したがって、これらの研究を基に、慢性腰痛における超音波の効果を確認することはできなかった。

エビデンスの質

超音波におけるエビデンスの質には不十分な点が多い。このレビューで、腰関連機能に関する「中等度」の質のエビデンスを確認した。他のアウトカムに関するエビデンスの質は「低い」もしくは「とても低い」ものであった。さらに規模が大きく質の高い試験による追加研究が強く求められている。

著者の結論: 

非特異的慢性LBP患者において、疼痛もしくは生活の質の改善に対する超音波治療の使用を裏づける質の高いエビデンスは確認されなかった。超音波治療が短期間での腰部機能改善にわずかな効果があるというエビデンスがあるが、この有益性は臨床的に重要とは考えにくい。慢性LBPに対する他の治療と超音波治療との比較から得られたエビデンスははっきりしたものではなく、概して質の低いものであった。質の高いランダム化試験はわずかであり、対象とした試験は非常に小規模であるので、今後は大規模で妥当性のある方法で行われた試験が、効果の推定値について確信に大きな影響を与える可能性があり、その評価を変えることになるかもしれない。

アブストラクト全文を閲覧
背景: 

非特異的慢性腰痛(LBP)は、世界中の成人にとって障害の主要な原因の一つになっている。超音波治療は、理学療法士により頻繁に用いられるLBP治療であり、診療時にもっとも幅広く使用される電気物理療法の一つである。

目的: 

このレビューの目的は、慢性非特異的LBPの管理における超音波治療の有効性を確認するものである。

検索戦略: 

コンピュータによる検索は、CENTRAL、MEDLINE、EMBASE、PEDroおよびPsycLITデータベースを使用し、2013年10月まで実施した。適格性のある研究の参考文献および関連のあるシステマティック・レビューを確認し、前方引用検索も実施した。

選択基準: 

非特異的慢性LBPに対する超音波治療におけるランダム化比較試験(RCT)が含まれた。

データ収集と分析: 

2人のレビュー著者は別々に、個々の試験のバイアスのリスクを評価し、データを抽出した。十分な臨床的および統計的均質性が認められた場合、メタアナリシスを実施した。個々の比較に対するエビデンスの質はGRADE法を使用し確認した。

主な結果: 

総計362例の慢性LBP患者からなる7つの小規模RCTを対象とした。研究のうち2件はバイアスのリスクが低く、バイアスのリスク評価のための12の基準のうち6以上を満たしていた。すべての研究は二次的ケアとして施設で行われ、6から18の治療セッションに対してさまざまな強度で、運動療法に超音波治療を追加した方法が最も多く適用された。超音波治療が、短期間においてプラセボ群と比較して腰部特異的機能(標準化平均差(SMD) [95%CI] -0.45 [-0.84 〜-0.05])を改善するという中等度の質のエビデンスが認められた。超音波治療は短期間の疼痛改善についてプラセボ群と同等であるという質の低いエビデンスが認められた(平均差 (MD) [95%CI] -7.12 [-17.99〜3.75]; 0〜100ポイントのスケール)。短期間の疼痛改善(MD [95%CI] -2.16 [-4.66〜0.34]; 0〜50ポイントのスケール)、もしくは機能的障害 (MD [95%CI] -0.41 [-3.14〜2.32]; %)のための超音波治療+運動が、運動単独と同等であるという質の低いエビデンスが得られた。超音波治療群とプラセボ群または超音波治療群と運動単独群を比較した研究では、治療や生活の質に総体的に満足しているという報告はなかった。短期から中期では、超音波よりも脊椎マニピュレーションが痛みと機能的障害を軽減したという質の低いエビデンスが得られた。電気的刺激と超音波治療の間には、いかなるアウトカム指標に対しても明確な有益性がなく、フォノフォレシスが超音波治療と比較してSF-36スコアを改善したというとても質の低いエビデンスが認められた。超音波治療に関連する有害事象について報告を行った研究はなかった。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2016.1.9]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。

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