病気と死亡を低下させるための総合健診

総合健診とは、健康な人を対象に複数の検査を行って、病気を早く発見し発症を予防し安心感を与えることを目的としています。 総合健診は、国々の保健医療を構成する共通の要素です。 多くの人にとって健診は直感的に受け入れられるものですが、個々の病気に対するスクリーニングプログラムによる経験から、 予想よりも利益は少なく、有害性が勝る可能性があることが示されています。 健診による有害性の可能性の一つとして、必ず症状や死亡を起こすとはいえない状態の診断や治療があります。 したがってそれらの診断は余計なものであり不必要な治療を招く危険性があります。 総合健診を受けた成人と受けなかった成人のグループを比較した16件のランダム化試験を同定しました。 14件の試験の結果が利用でき、参加者は182,880名でした。9件の試験は死亡リスクを検証し、 参加者は155,899名で死亡数は11,940名でした。 死亡リスクへの効果はみられず、心血管系の病気や癌による死亡リスクにも効果はみられませんでした。 病気のリスクに対する効果もみられませんでしたが、1件の試験では、高血圧および高コレステロールがみつかった人数が増加し、 別の1件の試験では慢性病の人の数が増加していました。 1件の試験では、コントロール群に比べ6年間で参加者1名につき新しく診断された病気の総数が20%上昇したという所見がみられました。 処方総数を比較した試験はありませんでしたが、4件中2件の試験で高血圧のための薬を使用する人の数が増加していました。 4件中2件の試験で、健診によって健康と感じる気持ちが強くなったという結果がみられましたが、この結果は信頼できるものではありませんでした。 健診による、入院数、能力障害、心配、専門医への紹介数、臨時の受診、欠勤に対する効果を認めませんでしたが、これらのアウトカムの大半の検証は不十分でした。 スクリーニング結果陽性後のフォローアップ検査数、用いられた手術数を報告している試験はありませんでした。 効果が明らかにみられない理由の一つとして、患者が他の理由でプライマリ・ケアの医師を受診した際に、 病気になる危険性が高いと疑われる患者を医師が既に特定して治療していることが挙げられます。 また、病気になる危険性が高い患者は、受診を促されても総合健診を受けないことがあります。 大半の試験は昔のものであるため、結果は今日の現場には合わないと考えられます。 病気の治療も危険因子も変わっているからです。 組み入れられている参加者と死亡の数が多く、追跡調査期間が長く、心血管系の病気や癌による死亡率が低下しなかったことを考えると、総合健診は有益ではない可能性があります。

著者の結論: 

総合健診により、罹病率および死亡率(総死亡率、心血管系死亡率、癌死亡率)は低下しなかったが、新規診断数は増加した。 フォローアップの診断的処置数や短期の精神的影響などの重要な有害性アウトカムは検証されていないか、あるいは報告されていないことが多く、多くの試験に方法論的問題があった。 組み入れられている参加者と死亡の数が多く、追跡調査期間が長期であり、心血管系死亡率および癌死亡率が低下しなかったことを考慮すると、総合健診は有益ではない可能性がある。

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背景: 

総合健診は、いくつかの国で共通する保健医療の構成要素である。 総合健診は、罹病率および疾患死亡率を低下させるため、疾患そのものおよび疾患の危険因子を発見することを目的としている。 総合健診でよく用いられているスクリーニング検査の大半について、その検証は不完全である。 また、スクリーニングにより診断的および治療的介入が増加し、利益をもたらすと同時に有害である可能性もある。 したがって、総合健診について有害性よりも有益性が勝るか評価することが重要である。

目的: 

総合健診の利益および有害性を定量化することを目的とし、血圧や血清コレステロール値などの代替アウトカムよりも罹病率および死亡率などの患者に関連性のあるアウトカムに重点を置いた。

検索戦略: 

2012年7月までのコクラン・ライブラリ、Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)、 Cochrane Effective Practice and Organisation of Care (EPOC) Trials Register、MEDLINE、EMBASE、Healthstar、 CINAHL、ClinicalTrials.gov、WHO International Clinical Trials Registry Platform(ICTRP)を検索した。 2名のレビューアがタイトルおよび抄録を調べ、適格性について論文を評価し参考文献リストを読んだ。 1名のレビューアが引用トラッキング(Web of Knowledge)を用いて試験実施者にその後追加された研究について問い合わせた。

選択基準: 

疾患または危険因子について限定されていない成人を対象に、健診と無健診を比較しているランダム化試験を選択した。 高齢者の試験は選択しなかった。 健診の定義は、2つ以上の器官を対象に2つ以上の疾患または危険因子について一般集団をスクリーニングするものとした。

データ収集と分析: 

2名のレビューアが別々にデータを抽出し試験のバイアスリスクを評価した。 必要であればその後追加されたアウトカムまたは試験の詳細について著者らに連絡を取った。 死亡アウトカムに対してはランダム効果モデルのメタアナリシスで結果を解析し、他のアウトカムに対してはメタアナリシスが可能ではないため定性的統合を行った。

主な結果: 

16件の試験を選択し、うち14件からアウトカムデータを入手した(参加者182,880名)。 9件の試験は総死亡率(参加者155,899名、死亡数11,940名)のデータを提示しており、追跡期間中央値は9年、リスク比は0.99[95%信頼区間(CI)0.95~1.03]であった。 8件の試験は心血管系死亡率(参加者152,435名、死亡数4,567名)のデータを提示しリスク比は1.03(95%CI 0.91~1.17)であった。 8件の試験は癌死亡率(参加者139,290名、死亡数3,663名)のデータを提示し リスク比は1.01(95%CI 0.92~1.12)であった。 サブグループ解析および感度分析によって、これらの結果は変わらなかった。 臨床的イベントおよび他の罹病率指標に対する効果を認めなかったが、1件の試験では、スクリーニングにより高血圧および高コレステロール血症の発現増加を認め、 1件の試験では自己報告の慢性疾患の発現増加を認めた。 1件の試験では、コントロール群に比べ6年間で参加者1名につき新規診断の総数が20%上昇したという所見を得た。 処方総数を比較した試験はなかったが、4件中2件の試験で降圧薬の使用者数の増加を認めた。 4件中2件の試験で、自己報告の健康状態に対する小さな利益を認めたが、盲検化試験ではなかったためこれは報告バイアスによるものと考えられた。 入院、能力障害、心配、臨時の受診、欠勤に対する影響を認めなかったが、これらのアウトカムの大半は検証が不十分であった。 専門医への紹介、スクリーニング結果陽性後のフォローアップ検査数、手術数に対する有用な結果を認めなかった。

訳注: 

監  訳: 林 啓一,2013.2.19

実施組織: 厚生労働省委託事業によりMindsが実施した。

ご注意 : この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、Minds事務局までご連絡ください。Mindsでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、編集作業に伴うタイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。

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