うつ病に対する「第3世代(Third wave)」認知行動療法と他の心理療法

大うつ病は、非常によくある精神疾患で、長引く抑うつ気分と楽しい活動に対する興味の喪失を経験し、体重減少、不眠、倦怠、気力喪失、不適切な罪悪感、集中力低下、自殺念慮などの幅広い症状を伴う。心理療法はうつ病治療の抗うつ剤投与に代わるものとして重要かつ一般的な療法である。これまで、行動療法、認知行動療法(CBT)、「第3世代」CBT、精神力動療法、人間性心理学的療法、統合的心理療法など、多くの異なる心理療法が開発されてきた。

このレビューでは、(CBTのように思考の内容ではなく)思考の過程を標的とし、評価を下される方法ではなく、自己の思考に気づき、受け入れられるように手助けをする心理療法のグループのひとつである、第3世代CBTに注目した。急性うつ病の人に対し、第3世代CBTが他の心理療法よりも効果的かつ受容性であるかを調査するためにレビューを実施した。レビューには合計144例から成る研究2件が含まれた。研究はacceptance and commitment therapy (ACT)(2件)、extended behavioural activation (BA)(1件)から成る異なる2種類の第3世代CBTを解析した。3件の研究すべてが第3世代CBTとCBTを比較した。その結果から、第3世代CBTとCBTのうつ病治療に対する効果は同等であることが示唆された。しかし、レビューに含まれる研究は数が少なく、質も低いことから、非常に質の低いエビデンスしかなかった。したがって、短期あるいは長期に渡って効果と受容性において第3世代CBTの方が他の心理療法よりも良好であると結論付けることはできない。臨床診療の場において第3世代CBTが一般的になりつつあることから、第3世代CBTが他の心理療法よりも急性うつ病患者の治療に役立つかどうか結論付けるには更なる研究を優先的に実施すべきである。

著者の結論: 

非常に低い質のエビデンスにより、急性うつ病治療に対する第3世代CBTとCBTの効果および受容性は同等であることが示唆された。研究は量的、質的、幅的にエビデンスが限定的であり、短期あるいは長期同等性に関する結論を導くことは不可能である。臨床診療の場で第3世代CBTに対する認知度が増していることから、うつ病治療における最も効果的な心理療法に関する情報を臨床医や指針作成者に提示するためには、種々の第3世代CBTと他の心理療法を比較した研究をさらに完了させることが重要である。

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背景: 

いわゆる認知行動療法の「第3の波」は心理療法の新たな世代を表し、精神的問題の治療に対する応用が増えつつある。しかし、うつ病に対する他の心理療法と比較した第3世代認知行動療法(CBT)の効果と受容性はまだはっきりしていない。

目的: 

1.急性うつ病に対するすべての第3世代CBTの効果を調査するため、他のあらゆる心理療法と比較すること。

2.急性うつ病に対する異なる第3世代CBT(ACT、 compassionate mind training、機能分析心理療法、extended behavioural activation、メタ認知療法)の効果を調査するため、他のあらゆる心理療法と比較すること。

3.急性うつ病に対するすべての第3世代CBTの効果を調査するため、他の心理療法(精神力動療、行動療法、人間性心理学的療法、統合的心理療法、認知行動療法)と比較すること。

検索方法: 

Cochrane Depression Anxiety and Neurosis Group Trials Specialised Register(CCDANCTR, 01/01/12)、The Cochrane Library(すべて), EMBASE(1974年〜), MEDLINE(1950年〜) および PsycINFO(1967年〜)から関連するランダム化比較試験を含むものを検索した。また、CINAHL(2010年5月)とPSYNDEX(2010年6月)、追加発表あるいは未発表研究に対する掲載研究と関連レビューの参考文献リストも検索した。第3世代CBTに関連する検索語に限定し2013年5月にCCDANCTR検索を更新した(CCDANCTR 01/02/13)。

選択基準: 

成人急性うつ病に対する第3世代CBTと他の心理療法を比較したランダム化比較試験。

データ収集と分析: 

2名のレビュー著者が独立して研究を同定し、データを抽出し、試験の質を評価した。必要な場合には研究の著者に追加情報を問い合わせた。GRADE法を用いてエビデンスの質を評価した。

主な結果: 

本レビューには144例の参加適格者を含む研究計3件が含まれた。そのうち2件(参加者56例)は初期のacceptance and commitment therapy(ACT)とCBTを比較しており、1件(参加適格者88例)はextended behavioural activationとCBTを比較していた。それ以外の第3世代CBTが同定された研究はなかった。ACT研究2件はパフォーマンス・バイアスと研究者の思い込みにおいて高リスクと評価された。治療後の結果は、脱落率に基づいており、主要アウトカムである有効性(臨床反応のリスク比(RR)1.14、95%信頼区間(CI) 0.79 -1.64;質は非常に低い)と受容性において、第3世代CBTと他の心理療法の間の差を示すエビデンスは何ら認められなかった。2カ月のフォローアップの結果から、臨床反応において第3世代CBTと他の心理療法の間に差は認められなかった(研究2件、 参加者56例、 RR 0.22, 95% CI 0.04 -1.15)。受容性解析において中等度の統計学的異質性が認められた(I2 = 41%)。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2016.1.9]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。

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