切迫流産に対する中薬(中医学の薬草療法)

流産または自然流産は、妊娠20週前に薬や器具を使用せず妊娠を喪失することである。胎児は子宮外で生存できるほど十分に発育していない。切迫流産は妊娠早期にきわめて発生が多い。切迫流産の大多数は、妊娠12週までに発生し、膣からの出血、腹痛および腰痛が数日間から数週間持続することで判明する。現時点では、切迫流産に起因する早期妊娠喪失の予防に対する治療効果は限定的である。中薬(中医学の薬草療法)は中医学の一種で、植物、動物および鉱物が原料である。中薬は切迫流産の代替療法として非常に人気があり、一般的に使用されている。

本レビューでは、中薬と他の薬剤の治療効果を比較した。5100名の参加者を対象とした44件のランダム化試験を組み入れたが、いずれも中国で実施されており、プラセボまたは床上安静を介入のコントロールとしていなかった。20件の試験では基本の処方として一般的な中薬であるShou Tai Pillを用いており、24件の試験では他の処方を用いていた。西洋薬には、サルブタモールや硫酸マグネシウムなどの子宮収縮抑制剤、ヒト絨毛性ゴナドトロピンやプロゲステロンによるホルモン補充、ビタミンEや葉酸などの補助サプリメントなどが含まれていた。5件の試験では550名の妊婦を妊娠28週以降および分娩まで追跡した結果、中薬と西洋薬を併用した場合、西洋薬単独と比較して切迫流産の治療効果が高いことが示された。残りの試験では治療の即効性を検討していた。併用療法は西洋薬単独よりも不可避流産の予防効果が高かったため、妊娠が継続された。多くの試験で、治療中または妊娠継続から出産に至るまでの副作用が報告されていなかった。中医は、各患者の臨床状態に合わせて伝統的な処方に軽微な変更を加えていた。すべての試験において方法の質が低かった。結論として、切迫流産の治療に対する中薬の効果に関するランダム化比較試験のエビデンス、および中薬単独が西洋薬単独よりも切迫流産に有益であることを示すためのエビデンスが不足している。

著者の結論: 

切迫流産の治療に対する中薬単独の有効性を評価するにはエビデンスが不十分である。

中薬と西洋薬の併用は、西洋薬単独と比較して切迫流産の治療に有効であった。しかし、対象試験の質は低かった。切迫流産に対する中薬の有効性をさらに評価するには、より質の高い試験が必要である。

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背景: 

切迫流産の発生率は妊娠全体の10%から15%である。妊娠早期に膣から少量の出血や出血が認められることが多く、このうち約半数が妊娠損失となる。現時点では、切迫流産の有効な予防法はない。中薬(中医学の薬草療法)はアジア諸国で何世紀もの間広く用いられ、近年は西洋医学の代替法として人気が高くなっている。多数の研究で中薬が流産を予防することが示されている。しかし、切迫流産の治療における中薬の有効性に関する系統的な評価は実施されていない。

目的: 

切迫流産の治療に対する中薬の効果に関するレビューを行うこと。

検索戦略: 

Cochrane Pregnancy and Childbirth Group's Trials Register (2012年1月31日)、Chinese Biomedical Database (1978年〜2012年1月31日)、China Journal Net (1915年〜2012年1月31日)、China National Knowledge Infrastructure (1915年〜2012年1月31日)、WanFang Database (1980年〜2012年1月31日)、Chinese Clinical Trial Registry (2012年1月31日)、EMBASE (1980年〜2012年1月31日)、CINAHL (2012年1月31日)、PubMed (1980年〜2012年1月31日)、Wiley InterScience (1966年〜2012年1月31日)、International Clinical Trials Registry Platform (2012年1月31日)および同定した試験の参考文献を検索した。また、研究機関、当該分野の専門家および中薬製造会社にも問い合わせを行った。

選択基準: 

切迫流産の治療において、中薬(単独または他の薬剤と併用)をプラセボ、無治療(床上安静を含む)、または他の薬剤と比較したランダム化比較試験または準ランダム化比較試験。

データ収集と分析: 

2名のレビュー著者がそれぞれすべての対象試験を評価し、バイアスのリスクを評価し、データを抽出した。データの正確性を確認した。

主な結果: 

5100名を対象とした合計44件のランダム化試験を本レビューに組み入れた。

プラセボまたは無治療(床上安静を含む)を対照とした試験を同定できなかった。

中薬単独群と西洋薬単独群の間で有効率(28週以降も妊娠継続)に有意差は認められなかった(平均リスク比(RR) 1.23; 95%信頼区間(CI) 0.96〜1.57;1試験、参加女性60名)。

中薬を西洋薬と併用した場合、西洋薬単独と比較して28週以降の妊娠継続に効果が認められた(平均RR 1.28; 95% CI 1.18〜1.38;5試験、参加女性550名)。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.1.20]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 
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